2014年10月31日金曜日

救済、恩寵、だがそれは死がもたらしたもの

                       


    今日は月曜日。綾ちゃん月曜日の朝はいつもちょっとお疲れ。
   週末にだらけたネジを巻き直すのに時間がかかる。



                 今日は二番目の患者さんであのおばあちゃんが来る。あ~あ、きっとまた
   大変だ。いつもおばあちゃんちは週末に新たなトラブルが降りかかっているから
   やって来ると先ずは涙、涙にくれて消耗し尽くすんだよね。でも泣くっていう
   作業は大切な心の自浄作用だからね。ゆっくりじっくりお話聞いて
   あげなくっちゃ。



                    悲惨な物語を聞かされるであろう心の準備をしつつ最初の患者さんの
    治療が始まる。


                     綾ちゃんが最初の患者さんにお灸している頃、ドアチャイムの音が
    聞こえた。


     おばあちゃんだ。玄関の受付から遠い部屋にいるから音は小さいが
    職業上の慣れで患者さんがどんなふうに入ってくるか手に取るように
    目に浮かぶ。
   


                     ドクターがいつものようにお茶を勧めて歓談が始まったみたい。
    
      んん?でも今日はそれほど涙にくれてる訳ではないのかな?遠くから
     かすかな音を聞き取っているだけだから何とも言えないけれど。



                        お灸が終わった。おばあちゃんに挨拶しよう。
     こんにちは。おばあちゃん。あれれ?今日のおばあちゃんったら
     何だか明るい。



                         そうか、服装が明るいんだ。真っ白いブラウスにピンクの
      カーディガン、真珠のネックレスもしている。穏やかに微笑んで
      静かに輝いている。彼女はゆっくりとこう言った。




                             『おはようございます、ヨシオカさん。私の元に
       神の恩寵が参りました。義理の息子が死にました。
       私たちは救われたのです。(Wir sind erlöst!) 』



                              はあああああ~???



フォーカス


バックピーク


セストラル

全部ハリーポッターに出てくる魔法動物



2014年10月30日木曜日

戦中世代の見るヒットラー

                  


      その日のお昼ご飯はドクターと二人でとった。先程陽気なおじいちゃん、
   シュテイルさん(仮名、でもシュテイルっていうのは「静か」という意味)が
   お帰りになったばかり。



             ドクター『いやあ、あのシュテイルさんは楽しい方だね。美術商だから
       歴史と芸術に造詣が深くって話始めると時間が経つのを忘れちゃうよ。』



                そうそう、綾ちゃんも彼とお話して楽しかったんだよ。今日はなんと
   シーボルト(!!)の生涯、日本から追放されたあとの彼の足跡を
   レクチャーしてもらっちゃった。うちの病院のすぐそばにシーボルトの
   お墓がある(!)なんて初耳!これは是非とも行ってこなくっちゃね。



                ドクター『彼はあの年代の方としては驚異的に健全な心の持ち主だね。
        今日は朝一番にあのおばあちゃんと長い間話をしていたからね。
        なおさらコントラストが浮き立つよ。』



                                  『戦中・戦後世代の人というのは多かれ少なかれ心に傷を
         負っているから老後、吐き出すように心身共に歪みが
         際立ってしまうものなんだ。でも面白いのは二人とも
         ヒットラー肯定派だということだね。』


                     うんうん、綾ちゃんもそう感じていたんだ。ヒットラーという存在を
    教科書や歴史の本などで読んだのではなく、メルケルやコールなどのように
    同時代の人として感じていた世代の中にはこういう人が意外に多い。
    つまりヒットラーの台頭によって雇用問題が解決されて経済が上向きになり
    生活が目に見えて良くなった現実を肌身で感じていた人々だ。

                         生きた歴史の証人。ドイツに何年住んでいても驚くことがまだまだある。





陽気な仲間


2014年10月29日水曜日

治療だけが心の安らぎ




                        そんな日々が続きおばあちゃんは病院を訪れるたびにオンオン泣いて
     近況を語るというパターンが繰り返された。彼女から聞かされる話は
     どれも聞くに耐えない酷い話で、これほど醜悪な環境でいつ終わるとも
     知れない地獄を高齢の身の上で引き受けるのはさぞかし大変なことだろうと
     同情を禁じ得なかった。



                      おばあちゃんがやって来ると先ずお茶を一緒に飲みながら
      綾ちゃん、ドクター、おばあちゃんの三人で近況を尋ねる。
      一通り涙にくれたあと、治療室に場所を変えて綾ちゃんが
      足の反射区マッサージをしてあげる。夜、まるきり眠れない
      おばあちゃんはここでだけはぐっすり眠れるとおっしゃって
      いびきをかきながら熟睡。爆睡。良かった。


                      最近、ヒマだったからね、うちの病院。彼女のために
      たっぷり時間が取れる。

                       指圧が終わってドクターにタッチ交代すると、ドクターはなんと
      彼みずからもう一度指圧マッサージをしてあげる。
      これは料金取らないサービスだよ。他に緊急の用がない限り
      随分長い間身体を揉んであげながら世間話(大抵はおばあちゃんの
      昔話)を二人きりでしていた。


       時間を取ってあげられないときは吸玉療法をしてあげる。


                         最後に鍼を打ってチャイムを手のひらに持たせたら治療おしまい。
      鍼が全身に刺さった状態だけど赤外線ランプもつけてぬくぬくお昼寝。
      起こして欲しいときにチャイムを鳴らしてくれればいい。
      これにお灸が加わるパターンもあるね。




                           治療が終わるとだいたいお昼の12時。マイさん特製野菜スープを
      飲んでから家に帰る。



                             おばあちゃんにとって今やうちの病院での治療タイムだけが
       大きな心の安らぎの時間となっているのは明らかだった。
                     

お、探偵もう一パターン発見





大集合!壮観!


2014年10月28日火曜日

アル中の夫と重度障害者の妻

                  

      あの娘の夫はもう随分以前からアル中なの。会社をリストラ(なんと
    生々しい話!)されてから酒と暴力でストレスが多くてうちに避難してきた
    矢先に起こった脳卒中で、本人も私の元で介護を受けることを望んでいた
    はずなのに。



                     おお、あの娘さん、既婚者だったんだ。いつもおばあちゃん(母親)と
    お姉さんに付き添われていたっけ。



                     アル中や暴力の人というのは発作と改心の繰返しで根本的な改善を
    望むのは難しいというのが通説だけど、連れ戻しにきたということは
    きっと奥さんに根本的な「情」はあるんだろうな。


                    それから「失業」と「アル中」。この二語はセットだし。


     しかし夫がその状態で奥さんの介護は出来まい。


                      『そう、だから結局毎日私とあの娘の姉とで娘の世話をしに
     行くのだけれど、あの義理の息子と喧嘩ばかり。流石に私に対して
     暴力は無い(ということは理性は働いている訳だ)けれど言葉の暴力が
     あまりに酷くて。』




                        おばあちゃん家とお嬢さん夫婦の家はすぐ近所らしい。



                        おばあちゃんの方も本来激しくて自分を曲げない性格なのは
     綾ちゃんも知っている。普通の状態でもこのタイプの姑と
     上手くやっていくのは大変だろうに毎日毎日アル中の義理の息子と
     やんややんや喧嘩してストレス溜めまくり。

                         実は綾ちゃん、おばあちゃんの容体を良く知らない。
     もちろん彼女のカルテはそこにある。それを見ればどこが痛むとか
     色々と書いてある。が、綾ちゃんが彼女に、
       「お身体の具合はどうですか?」と尋ねると
     どこがどう悪いって話よりも「昨日こんなことがあって」という
     ストレスの原因の話ばかりになるのだ。



       この状態で治療を続けて治るのかな?おばあちゃん。





バイエルン地方の男女




花嫁と花婿


スパイダーマン


2014年10月26日日曜日

その重荷が生き甲斐だった




                 『娘の容体は悪くなったの。ここに通っていた頃と比べ物にならないほど。
    わずかに出来ていた発語もままならなくなって身体機能も衰え外出も
    簡単には出来なくなってしまったわ。』
 

                  おばあちゃんは日常のひとつひとつが苦痛の連続のようで口を開けば
    辛い物語、何度も何度も涙する。



                   でも、そんなに大変な娘さんを家に置いてきて大丈夫なの?


                    『娘は 、娘は、ああ、もういないの。あいつが連れて行ってしまったわ。
     あいつは娘を私から遠ざけて私に会わせてくれないの。』


                      「あいつ」というのは彼女の「夫」であるとのことだ。




お医者さん発見




くー!たまらん!欲しーい!


2014年10月25日土曜日

重荷

               


        患者だったのはもともと彼女のお嬢さんの方だ。
    

           綾ちゃんとほぼ同い年の。


                     障害者の御家族の抱える問題というのは計り知れない。
     障害者本人が高齢に達すれば介護人はもっとご高齢になるのは道理で
     社会保障率の高いドイツでもかなり難しい。




                       特にこのケースでは40歳を過ぎたお嬢さんが突然の脳卒中で
     要介護の脳障害者になってらっしゃるので周囲の抱えるストレスも
     突然訪れただった。


                     お嬢さんは医療の現場で出来うる事をやり尽くした後、うちの病院に
     やって来た。卒中の発作からはもう何年も過ぎていた。


                      初回の鍼治療の直後、車椅子から立ち上がって壁づたいに20歩ほど
     自立歩行が出来た奇跡には皆が涙した。これだけ自立すれば
     トイレに一人で行ける!


                       その後は3ヶ月ほど通院なさったけれども言語障害の方は
     これといって目立った回復は望めず

         「やれるだけのことはやった」

     とそれなりに’納得して治療を打ち切った。



      あれから彼女のこと、押しの強いおばあちゃんのことを
     時々思い浮かべてどうしてらっしゃることかと幸福を祈ることは
     あったが、このようにおばあちゃんが一人でご自分の治療に
     来られるとは予測していなかった。


       要介護のお嬢さんはどうしたのかしら??

    

ミュンヒェンマーク


2014年10月24日金曜日

『治さなきゃならないの。』

         


        『ねえ、あなたは私の病気を治さなきゃならないの。
       治さなきゃならないの。ならないの。』



                呪いの呪文のように耳元でささやく。



                 これだけ高額な治療費を請求するのだからとかこんなに遠くから
    私は足を運んでいるのだからとか、つまり一切合切の恨みつらみを
    この一言に込める。


                      『治さなきゃならないの。』



                こちらとしては、請求額は医療「行為」に対して発生するもので、とか、
   回復の約束は法律上出来ない、など型通りの説明をしながらも
   そういった手続き上の「逃げ口上」が何の意味も為さない虚しさを
   ひしひしと感じている。


                 年老いた魔女の吐く呪文には異様な迫力があり、綾ちゃんなんぞは
   簡単に押し潰されてしまう。これは法律などの決まりごとを超えた
   「人と人との」「対決の場面」なのだ。


                だからたとえ我々の治療が彼女にとって何の役に立たなかったとしても、
   極端な話、我々が詐欺を働いたとしても彼女は我々を訴えたりしないし
   そもそもそういう話ではないのだ。



    こんな、自分だけの理屈で生きているおばあちゃんが穏やかに
   日々を過ごしているわけがない。ストレスがストレスを呼び限界に
   達している。

      そんな彼女と最近連日のように付き合っている。 






昨日のブログで出し忘れていました。
コンクールで綺麗なお姉さんが聴衆者票を
集めています。


2014年10月23日木曜日

ARD、エクソシストすればよかった??

                 


       コンクールというのは様々な意味合いでお祭りだ。
    反対に言うと「お祭り」の域に到達出来なかいコンクールは
    自然淘汰される運命にある。


                  栄誉と賞金、何より「お仕事」をもらえる。各社音楽プロデューサーが
    目を光らせ次の「スター」を探してる。

                    さて、本番今年のファイナリスト三人は三つの課題曲の中から二人が
    ドヴォルザークを一人がシェスタコーヴィッチを選んだ。




その時の演奏(ドヴォルザーク 3楽章)
一位をとったIstvan Vardaさん
ちなみに綾ちゃん&審査員席は
テレビ放送では全部カットされてました。

                                         

                     綾ちゃん的には残念。誰も選ばなかったエルガーのコンチェルトを
    一番楽しみにしてたのに、、、。でもドヴォルザークも超名曲!
    シェスタコーヴィッチの曲の方は綾ちゃん、実は知らなかった。
    夫に尋ねたら、これもすごく有名な良い曲だよって。
    でも前予習するヒマがなかった。

                   このくらいの大コンクールになるとネットでライブ中継がある。
    綾ちゃんのお席は審査員席真後ろ!きゃあ、緊張お!お願い、カメラさん、
    美しく撮って!(おいおい!)息子なんて、本番中何度も設置カメラに
    じっくり撮られたって。やったぜ!息子、テレビデビュー!(←ばか)



                   先に結論から言うと、息子は全然映っていなかった。審査員席が
    映し出される瞬間、綾ちゃんのおかっぱ黒髪が(まるでちびまるこの
    漫画のように)黒いかまぼこ型の影が何度も浮かび上がった。
    後部カメラばかりが採用されたんだな。我々のすぐ近くに
    あったカメラは近くというよりプレーヤーの表情を撮るのがメインの
    仕事だったらしい。


            




                    ネットのアーカイブを見た夫は



                      『ダメだよ。本番中にくるりと後ろを振り返ってにっこり笑う位の
      ことしなくっちゃ。』

                 とのたまわった。(するか!エクソシストだ、それじゃ。)




2014年10月22日水曜日

ミュンヘン音楽コンクール(ARD Wettbewerb)

        



          ちょっと以前の話題に戻りますがお出かけネタをもうひとつ。



                   9月初旬、ミュンヘン国際音楽コンクールへ足を運びました!!
    会場はミュンヒェンの中心地、宮殿レジデンツ内のヘラクレスザール。



                  これは若い音楽家の登竜門。とても権威のある音楽コンクールです。



                   書類選考の後、一次、二次、三次まで厳しい予選があって
     三人のファイナリストに絞り込まれます。そしてファイナルでは
     課題曲三曲の中から一曲を選んでバイエルン放送響とコンチェルトを
     競うのです。



                       音楽コンクールというのは「お祭り」なのでそれぞれに趣向を
     凝らしてあるものですが、ARDの「醍醐味」は何と言っても
     観客参加型(投票)の「聴衆者賞」の存在です。
     聴衆の心を最も「掴んだ」プレーヤーは「聴衆賞」という名の
     名誉に預かります。



                        三年サイクルで各種目のルーテイーンです。今年はチェロの年なので
     行ってきました。
     (ピアノ部門は審査員として日本から小山実千恵さんがおいででしたね。)


                         審査員たちも有名なプレーヤー揃い!綾ちゃんたちは審査員たちの
     真後ろの席でした。おお、ダニエル ミュラー=ショットだあ!
     カッコいい!シュタルンベルクのコースで一緒だったんだけど
     レッスンは受けなかった。


                             コンクールの始まり始まりい~!


審査員席。審査員たちは拍手で迎えられます。




ダニエル ミュラー=ショット




2014年10月21日火曜日

天使が変えた「気」の流れ

                  


              天使さんがやって来た。


      天使(エンゲル)を名字に持つ人はドイツ人に多く、彼女もその一人である。
  (名字の中に組み込まれている、という意味。) 


           彼女は確か、2年ほど前に吹き出物の悩みで三ヶ月くらい
    通院してらした学生さんだ。吹き出物が顔を覆っていても彼女の若さと
    美しさは見間違えようもなく、陽気だけどしとやかな立ち居振舞いは
    良家に育った証に見える。




             前回、彼女はかなり早い段階で完治していたが、うちの病院を
    いたく気に入って下さってウエルネス替わりに、平たく言えば
    お昼寝に通っていた。


                そう、ウエルネス!!




           いつの頃からか、このお金持ちの暇潰しっぽい人々がとんと姿を
     見せなくなっていた。保険会社がこうした出費に対して還付金を
     渋りだしたからだ。




              以前は何だか煙たく思えていたこのスノッブ族も懐かしくて
     愛しく思えるじゃないか!いやいや、エンゲルさん、あなたは
     誰に対しても丁寧で気持ちのいい方だものね。あなたのことを
     言ってるんじゃないの。



                    『ドクターお元気かしらって久し振りに電話してみたら、
      電話口で泣かんばかりに喜んで下さったものだからって私ったら、
      もしかして患者さんが少なくなってお困りなのかしらって
      こっそり心配してきたの。あら、ご免なさいね。失礼なこと
      言っちゃって。でもなあんだ、私の取り越し苦労だったわね。
      むしろご迷惑だったわね。こんなときにのこのこ現れて。』



                       鋭~い!大正解い!そうでえす!私共はヒマだったのでーす。
     いいなあ、エンゲルさん、そのおおらかさ。


      が、今日はどうしたことかこの忙しさ。息をつくヒマもなく
     次々に患者が訪れる。
     げげ、明日も、明後日もお?


            勘弁だわ。


                        『ほら、今年も残すところわずかでしょ。お陰様でこの一年、
      風邪ひとつひかずに元気でいられたからここはウエルネスってことで
      「気」の流れをドクターに整えてもらおうって思って。
      それから吉岡さん、あなたの指圧とお灸も楽しみにしてるわあ。』



                           いいなあ。幸せそのもの。


                   天使さん、あなたが良い「気」を運びいれてくれたのかも。

            またまた忙しい日々が戻ってきました。皆様のおかげです。
   (もちろん、侮るなかれGoogle!なのですけど)




お医者さん
よく見ると床屋かも



看護婦さん


2014年10月19日日曜日

宴 ・ Augustinerばんざ~い!

          



       独日協会理事のAさんの計らいで歌枕直美さんコンサートの後の
   打ち上げに混ぜてもらった。コンサート会場がミュンヘンど真ん中、
   マリーエン広場近くだったので近所のアウグステイーナービアハウスへ。


        


                ご存知の方も多いと思うが、このアウグステイーナー(Augustiner)は
         ミュンヘンっ子に最も愛されているビール屋さんです。


                 有無を言わさずここのビールがミュンヘンで一番美味しい!

             



       

               ミュンヘンで一番旨いということは世界一!ウマイ!ということで
     あーる。やったー!!ぱちぱち!


                   日本からのお客さまにここのビールを飲んで頂けるのは在住者として
     誇らしいです。



                     ということでテンション上がりまくりの綾ちゃんはブログ用の
     写真撮りなぞ忘却致しておりました。



                       綾ちゃんは スタッフ(音響、脚本その他を取り仕切ってらっしゃる
     本職は技術者兼内科医という異色)のSさんとついついお話にのめり込んで
     しまいました。日本の政治の行く末その他、もう話題は尽きない。
     主婦だって政治や社会の話をしたい!!貴重なご意見、ものの見方を
     教わり、楽しかったあ~!

                 来年もコンサートに来て下さるとのこと。

                       楽しみにしています!




歌枕さんといっしょに




2014年10月18日土曜日

広がる、伝わる「言葉の魂」





        采女(うねめ)の袖吹きかえす明日香風(あすかかぜ)
             都を遠みいたづらに吹く
                   志貴皇子(しきのみこ)
        (訳 采女の袖を明日香の風が吹きかえしているよ。
           いまはもう京も遠くなりむなしく吹くことだなあ。)

              言葉にすればたったこれだけ。


                                        
               歌枕直美の世界
    ~歌で日本の歴史と未来をつないでいく 
      Naomi Utamakura



         

              コンサートの第一曲目『明日香風』を聴きながらずいぶん懐かしい
    忘れ物を思い出した様な気分になった。ああ、これが文学の基本の
    基本じゃあないか。綾ちゃんは久々に
    「目から鱗」状態だった。


                  コミュニケーションの手段としての「言語」が芸術に昇華する瞬間、
    というのはひとつひとつの言葉(またはそれを組合せることで)にどれだけの
    「エネルギー」を持たせられるか、ということに尽きる。
    (綾ちゃんの私見ですよ。色々難しい文学理論があることは知っていますが
    結局はこれを分析するための試みだと思います。)



     「言葉」に色や形や音や匂いを持たせる。そこには存在しない
    風景や物語を呼び覚ます。そう、一陣の風が吹くだけの情景に
    采女(宮廷女官)の袖の色、しなやかさ、寂しさ、寒さ、飛鳥の宮の
    栄衰の物語が鮮やかに浮かび上がる。
    全ての失われ行く懐かしいものたちへの想いは特に日本文化に
    特有のもの。



     心行くまで堪能いたしました。







     
    

2014年10月17日金曜日

万葉の世界へおもひ寄せて


         
 
            



                                 すっご~い!!


                    YouTubeで歌を聴いてみてビックリ!





               万葉集って万葉がなが難しくって取っ付きにくいって感じていたのだけれど
   こんな風に優しいメロディーにのせて歌うと素朴な言葉が新鮮に、
   むしろ実のある説得力を持って響いて来る。


    詩歌と言うものは本来独自のメロディーを持っているものなので
   わざわざ曲をつける必要はない。繰り返し、繰り返し口ずさむこと、
   目にも耳にも心地よいフレーズを書き留めることでそこに内包された
   息吹を感じることが出来る、、、というのが綾ちゃんの本来の
   信条だったのだが、ここで聴いた音楽はとても現代風で耳に心地よく
   難しい「垣根」のような取っ付きにくさを取り払ってくれる。
   つまりは美しくモダンな旋律が現代と1500年前の時代との
   隔たりを吹き飛ばす役割をしてくれているんだ。
   

    ゆっくりゆっくりリフレインしながら美しい「言の葉」を隅々まで
   堪能出来る。


                コンサート、行きたいな。いくら子供は小さくないとは言え夜の
   お出かけは難しい。パパもいないしね。幸い二男はカルテットの
   コンサート(お役所の内輪の催し物)、長男は合気道で二人とも帰りは
   遅い。お夕飯だけ用意しておけば大丈夫そう。いやっほ〜い。



                             ウキウキ出かけて行きました。



2014年10月16日木曜日

万葉の歌姫との出逢い




                  てなわけで最近残業も無い綾ちゃんは子供の帰宅時間が遅い曜日を
   見計らってぶらぶらしたりすることがある。



                   先週の火曜日にお友だちのあすかさんと久しぶりに「お茶」をする
   な〜んて贅沢に預かっていたところ、街中も街中、ど真ん中のマリーエン
   広場でばったり知人に会った。

            

                ミュンヒェンの中心
                 マリーエン広場



                  ドイツって、ミュンヘンって、本当に「田舎」な都会でいいなあって
   こういう時しみじみ思う。けっこう色んな「ばったり」出会いが待ち受けている。



                    綾ちゃんがばったり会ったのはミュンヘンで独日協会の理事を
   なさってらっしゃるAさん。恩師を介して知己を得てから親しくさせて
   いただいている。うちの病院に治療に来てくださったこともあるし
   おお、我が家で手巻き寿司パーティーやったこともあるっけ。



                     Aさんはお客さまを従えてらっしゃった。何でも明日にコンサートを
   控えてらっしゃる歌手とそのスタッフの方だとか。


                     ええ~?音楽好きの綾ちゃん、早速食指が動く。
   ど、どんな分野でいらっしゃるんですか?


                        それは思いもかけないものだった…


                          「万葉集」を歌うんだって。





この方。ね、お綺麗でしょう?


2014年10月14日火曜日

結局、Googleに戻ってしまった





                    つまり、やっとこさでうちの病院も「予防医学」に道を拡げようと
    しているってこと。今回のことがきっかけならばそれはそれ、災い転じて
    なんとやらって感じかな。



                      幸いなことに綾ちゃん薬膳入門コース(ドクターと連名ね。でないと
    やっぱり綾ちゃんの名前だけでは申込みはこない)にぼちぼち参加者が
    出てきた。おおお~!!綾ちゃん猛勉強しなくっちゃ。



                          第一回は11月です。またまた書きに来ますね。



                         さて、でもこういう草の根運動だけで患者さんが急に
     増える訳でもない。


                 ドクターは暇な時に「営業活動」と称して他所の病院にうちの
    パンフを持って行ったりしていたが次第に音を上げ




                   『やっぱりうちの奥さんのやり方が正しいのかなあ。
       Googleにもう一度お金を払うかあ。』



           とぼやき始めた。



                 実は最近、患者さんは少しずつだけど戻り始めていて、
     すっかりぐーたらに慣れてしまった綾ちゃんとしてはカンベンしてよ、
     の気分なんだけど、まあ仕方ないよね。


                   そうしてまたしても慌ただしい日常に戻って行くのでした。



                         めでたし、めでたし、、、、??





これはロンドンのM&Sという
スーパーマーケットにあったミニケーキ


チョコ
贈答用のお菓子がいっぱい。


ロンドンではきっと手みやげが必須アイテム


道を切り開く

                


         実は綾ちゃん、ここでお勤めを始めて半年が過ぎた頃、ドクターに
   呼ばれて言われたことがあったんだ。薬膳を勉強しなさいって。
   そしてこれで稼げるようになりなさいって。


                   漢方 ・ 中医学の治療の柱は漢方薬 ・ 鍼 ・ そして薬膳。


     うちのドクターは中医学の知識と経験は豊富でもお料理はダメ。
    この分野を任せられる人が必要なんだって。



                     随分以前に言われた事だった(てっきりドクターは忘れていると
    思っていた。ていうか今回の一件で「思い出した」のが正解っぽい)
    けど綾ちゃんは忘れてはいなかった。
    そう、栄養指導や健康食カウンセリングには国家資格は要らない。
    ドクターは資格を持たない綾ちゃんに「道」をつけようとして
    下さっている。ありがたいの一言だ。



      薬膳ならドイツ語で専門書も出ているし中国語なら病院の本棚に
    一杯。おおっしい~!それで一応ドイツ語の本を読んでみたけど、
    中国語→ドイツ語→日本語(綾ちゃんのアタマの中)の変換が
    まだるっこしい。



      んで、日本に帰省したときに専門書を買ってきた。
     やっぱりこっちがすうっと入ってくるね。




                そうして細々とではあるが勉強を続けてきた綾ちゃんなのであった。






これは薬膳とは何の関係もない
ただのロールサンド
、、、が • • •


何と、SUSHIサンドイッチなんですね。
ロンドンの pret a manger の商品
海苔とパンに包まれた中身はサーモン、キュウリ、
わさびマヨ、紅ショウガ(!)



好奇心で買ってみたが驚きのウマさだった!!


2014年10月12日日曜日

薬膳教室への道

               



          お料理教室は無事終わった。




         お遊びの会としては楽しかったし色々不備はあったけどそのことが次回への
 反省を招いて結果として有意義だったように思う。


          お料理得意のドクター夫人がドイツ語の出来ないマイさんに代わって
 それぞれの食材を紹介した。これはビタミンが豊富で疲れたときにいいとか
 こっちは血液をさらさらにする働きがあるとか。



           でもそれって「普通」の健康食知識だなや。わざわざうちの病院でなくても
  ちょっとお料理に詳しい人ならドイツ人、誰でも知っているしね。
  やっぱここは薬膳でしょ、薬膳。


           綾ちゃんがそう言うと、奥様は困った顔して


      『あ〜あ、薬膳って五行(「易経」)の土 • 水 • 金とか
      で食材を全部辛とか甘とかに証に合わせてマッチングするんで
      しょう?あれは私説明出来ないわ。これから勉強しなくっちゃ。』



  とおっしゃった。えええええ〜???



   綾ちゃん、ひっくり返っちゃった。だって漢方の薬草学のプロなのに。


   多分、「キチンとは」出来ないって意味だと思うんだけど奥様は
  薬膳を体系的に勉強したことはないんだって。




       『そうそう、うちの奥さんには無理だよ。
       吉岡さん、あなた、ひとつ、やってみないかね。
       もうずいぶん勉強も進んだことだろう?』



    ドクターが急に私にフッて来た。



         「薬膳教室」への道を。



       


オクトーバーフェスト
今年は行きませんでした。






            

2014年10月11日土曜日

カボチャ ・ 苦瓜 ・ オクラ

                     


                   「お料理教室」はゆる~い雰囲気でほのぼのととりおこなわれた。





                   牛乳や生クリームなど乳製品を使わないマイさん流カボチャの
                ポタージュは以前から好評でレシピを教えて欲しいとリクエスト
                Nr.1だった人気メニューだ。


             





                         その他、最近、ここドイツでは珍しい二つの食材、オクラと
     苦瓜を紹介。特に苦瓜は漢方薬の材料にも名を連ねる立派な
     「お薬」でもある。薬膳における「苦」の代表的食材だ。
     アジアショップで手に入る。トルコショップの方が安いけどね。


            




                          オクラは中華料理ではあまり登場しない。本来、ドクターも
     奥様もこの野菜をご存知なかった。
     こちらではオクラと言えばインド料理でカレー好きのドイツ人なんかは
     インドのお野菜として知っている。トルコでもよく食べるらしく
     (どうやって?)トルコ人は「オオ!オクウラア!」なんて
     大仰に叫んだりする。マイさんも近所のトルコの八百屋さんから
     安くてきれいなオクラを買ってくるもの。
     (日本食料品店だと綺麗にパックに入って10個くらいで驚くほど
     高額のシール付きでで冷蔵庫に並んでいらっしゃる。)


          



             綾ちゃんはオクラってジャパニーズのお野菜だと単純に考えていた。
    いやはや、インターナショナルだったね。




2014年10月10日金曜日

「病院らしい?」お料理教室

        


         今日の献立
                        カボチャのポタージュ 中華風
                         オクラと海老の炒めもの
                         苦瓜と卵炒め
                         ご飯
                          果物(梨、その他)




                 あまりにも行き当たりばったりなドクターたちのために綾ちゃん、
   またしても大活躍。ていうかもはやノルマだな、ここまで来ると。
   お献立表を作成いたしました。



                  やるんだったらちゃんとやりましょう、ちゃんと。
   ここは中華料理屋じゃあないんですから。漢方、中医学、
   つまり薬膳ですってば!少なくとも参加者は食膳の基本的な知識を
   求めていると思います!
                   そう主張して最低限の資料を作ってあげた。献立にレシピと
   食材の薬膳情報などを盛り込んむ。




                   ドクターはマイさんがお料理している脇でその様子を見学させれば
    それで「お料理教室」になる!!と思っていたらしい。
                    そんなのだめですよ、って主張して綾ちゃん、家からエプロンを
    持ってきたり皆で調理出来るように小型まな板や包丁などキッチン用具を
    買ってもらったりした。




                      そうして少しは「病院の」の催し物っぽい体裁が整えられていった。



         







           


                        

2014年10月8日水曜日

新分野開拓?

              



      で、いきなり「お料理教室」なるものを開催することになった。




                          ???????????



                 もう一度書く。「お料理教室」。なんで?なんで?解ったような、
   わからんような。



    だってここは病院。なんか、このフレーズ、これまで何度も繰り返し
   登場してきたな。いかにここが風変わりな場所かわかる。



                   『いやあ、お料理の彼女がね、やってもいいって言ってくれたんだよ。』



    いつもの無責任かつ無頓着な発言にたじろぐ綾ちゃん。
   ちょっと、ちょっと、ドクター、まあ、まずはお話しましょう。
  一体何をやろうとしているんですか?


              だってお料理のマイさん(仮名)はドイツ語がほとんどしゃべれない。
   何をどうやって、どんな目的でやるの? 


   
                だから、お料理教室。それ以下でもそれ以上でもない。
   患者さんたちがよく、中華料理のレシピを教えて下さいって言うから
   それじゃあ(どうせひまだし、、、おっと失言)やろうかって、、、。
   無料だって言うから、、、


                          まっ、お遊びの会ってことか。



大英博物館所蔵の甲冑



これは14世紀に作られたキトールという楽器
ヴァイオリンの原型と言われてるらしいけど
ギターのようにぼろんと鳴らすだけだったらしい。




この彫刻がすごい


2014年10月7日火曜日

更なる努力は続く

               


     たくさんの患者さんが協力して下さった。ありがたい。心強い。


     いやあ、こんな時に人望があるのかどうか判るね。
    中には「あのアシスタントの女性が(も、の間違いでした)素晴らしい!」
    と書き込みして下さった方もいた。いやっほう!




                   最初にネガテイヴな意見を書き込んだ人は
    おそらく自分の言いたいことを言ってすっきりしたのか
    反撃したりする訳でもなく(ね、だから多分、超悪質って訳じゃない)
    全体として目立たなくなった。



                     この件でこれ以上「被害」が広がるってことはないだろう。
    悪評価は残るけれどこれならさまざまな意見の中のひとつで
    フェアな感じがする。



                       でも、これで一件落着とはならない。閑散とした場に
    活気が戻る訳ではないからだ。


                        ぼやぼやしていても事態は好転しない。更なる努力が必要。

         さて、じゃ、これからどうする ?







この線は何かというと • • •



タワーブリッジの跳ね橋の切れ目!
写真がぼやけててゴメンナサイ



2014年10月5日日曜日

ネットに書かれた悪評に対抗する手段はあるのか?



                          書き込みされた中傷内容を削除してもらうのは難しいみたい。
      (ブログのコメント欄とかみたいに自分でコントロールできる
      ものではないからね。)



                           でも放っておくのは病院にとって死活問題となるわけだから
      何とかせねば、と頑張り出した。こういうとき頑張るのが奥様。
      内助の功というやつだ。頼りになるぞ、うん。



                           悪口の出てたサイトのアドレスをシールに印刷して
     病院の(ドクターの)名刺に張り付けた。そして患者さんに配って
     コメントをお願いする。



                             『もしもうちの治療にご満足いただけましたら、
       こちらのサイトに良い評判を書き込みしていただけますか?』



      ってね。正直に、実は最近こんな事があってって打ち明けた。



                   そしたら、よっしゃあ、任せとけって感じで協力を約束して下さる
      患者さんが何人も手を挙げて下さった。頼もし~い!



                    いいじゃん、いいじゃん!どうなることか。楽しみにしていよう。







ロンドン「わさび」のお弁当
エビチリだと思って買ったらチキンだった。
しかも激辛!!綾ちゃんショック!





息子はカツカレー&明太子おにぎり
おにぎりのごはんがイマイチだったって。
でも安くてがっつり食べれて満足、満足。

なんだかイギリスと思えない食事ばかりしてきましたね。


2014年10月3日金曜日

ネットの悪評




                この悪口を書き込みした人が誰かは判らない。が、綾ちゃんは
    うちで実際に治療を受けた患者さんだと思った。直感だけど。つまり、
    同業者の策謀とか中国人社会での揉め事とか無作為の暴力とかみたいな
    匂いは(綾ちゃんには)感じられなかった。




            『彼(ドクターよ)のにこにことした笑顔や親切は全て偽善だ!
     アイツは私腹を肥やすことにだけしか興味を持たないカネの亡者だ!
     騙されちゃあいけない!』



             こんな感じで罵倒は続く。騙されてはいけない  、
    あそこ(うちの病院のことよ)に行ったら酷い治療をされて
    にこにこ顔のドクターに意味もなく次々にたくさん予約を入れられて
    請求書を見たらあり得ないほど踏んだくられておしまい。ってな具合。



                  なあーるほど。綾ちゃんもこれまでの拙い人生経験から、世の中には
    よくぞここまでと感心するほどものごとをネガテイヴにしか見れない人が
    いるということは知っている。これを書いた人が本当にうちの患者さんで
    実際に起こったことをそんな風に受け取ったというのならば
    これは相当なひねくれ者ということになる。もちろん、
    彼(女)の病気は治らなかったに違いない。



                 結局、医者の評価なんてただの結果論に過ぎない。


           治ったか、治らなかったか。
                           シビアな世界だ。



                 


このカラスさんは写真では判らないけど
ものすごーく大きいんです。


ロンドン塔にご家族でお住まいです。



ここ。彼らがいなくなるときロンドンの街は滅びるという
言い伝えがあるんだって



塔内の展示室
サーベルの持ち主がわかりやすくて親しみが持てる。