2016年1月31日日曜日

ヨーヨーマのゲネプロにも行けた!





    ヨーヨーマのバッハチェロスイートコンサートに行けたのはすごい
   ラッキーな出来事で、子供の音楽仲間のパパが偶然団体券を安値で
   うちの分も取ってくださって実現したことだった。でもさらにすごい
   偶然が待ち受けていたんだ。





    コンサートで息子の昔のチェロの先生にお会いした。息子に最初に
   チェロの手ほどきをしてくださった近所の音楽学校の校長先生。
   お会いできるんじゃないかと期待していたんだけど(以前、
   ミシャ マイスキーのコンサートでもお見かけしたし)やっぱりだ。
   休憩時間に声をかけてみた。先生、久々の再会に喜んでくださって
   うちの息子に、




      『明日、ヨーヨーマのゲネプロ見に行く?本当は非公開なんだけれど
      僕は音楽学校の見学として生徒と一緒に行くから僕と一緒なら
      入れるよ。』




    そう、ヨーヨーマは先週火曜日にマスターコース、木曜日はバッハ無伴奏全曲、
   金曜&土曜二日連続でシュトラウスのドン・キホーテを弾く。ものすごい
   スケジュール!もちろんスターたちは本番までのらくらしているわけではなく
   オケと一緒にプローベ(リハーサル。最終リハはゲネプロという。まず本番と
   同じように弾くしCD録音だとか公開放送用の録音は大体ここでやっちゃう。
   お客さんがいないと雑音も少ないし、アクシデントが起こった時にも
   差し替えられるから)したりするわけで、全部暗譜だし周囲の注目度も熱い。
   いやー、スターって本当に大変だね。


                               
やっぱこのポスター、ようわからん。


    実は息子は現在の先生から、なんとかしてゲネプロに入り込めないものかと
   言われていたのだった。とにかくヨーヨーマはチェロを学ぶ者にとって
   重要な存在だからこのチャンスを逃さず絶対見ておくべきだって。
   放送響に誰か知り合いいないの〜?(って、自分が
   放送響のソリストだったくせに自分はコネがないんかいっ!)ヨーヨーマの
   孫とか!?言って入り込めないかなあ?(って孫がおるんかい?)とか、
   そうだ、楽器持って行って、ファイヒェルマン(息子のチェロの以前の持ち主、
   元放送響のソリスト)の弟子だとか付き添いだとか言って入っちゃえ!



    どうしてこう、綾ちゃんの周囲にはいい加減な口からデマカセを言う奴
   ばっかりなんだろう。この先生、普段は真面目でいい方なんだけど時々
   えらく無責任なことを言う。ちなみに明日日曜は息子本人がコンクール
   本番日なんだけどそっちはもう上の空だ。




    で、綾ちゃんとしてはそういう実現不可能なことは馬鹿馬鹿しいと本気にして
   いなかった。いやー、相変わらず引き寄せるねー、綾ちゃん。昔の先生の
   お姿を見つけた時、息子は恥ずかしがって声をかけるのを嫌がったんだけど
   必ず素晴らしいオマケが付いてくる。教訓!知り合いには絶対声をかけること!





         綾ちゃんはお仕事あって行けなかったけれど翌日の
        コンサートまで堪能できた息子でした。クライン先生!
        お別れしてしまった今でも息子を気にかけてくださって
        ありがとうございます!




2004年のカーネギーホールのドン・キホーテ



                           

2016年1月30日土曜日

ヨーヨーマのコンサートに行ってきたー!




       もはやこのブログは音楽ブログですな。ご容赦ください。



               昨日のことです。
    カリスマチェリストヨーヨーマのバッハチェロスイート全曲演奏コンサート。
                   

このポスターが街中に貼ってあったのに何のことか判っていなかった綾ちゃん。
健康推進団体とかチャリティーのポスターだと思っていた。



今回、大ラッキーで知人の音楽教師の方が教育用団体特別鑑賞券を
頼んでくれたので破格のお値段で行けました。8ユーロ!
(正規だと最低でも30ユーロです。)






ガスタイクのフィルハーモニーの広い広ーいホールにたった椅子が一つ。
これで約2時間半、バッハの組曲全6曲をぶっとうしで弾きます。



ものすごい客層だった。バイエルン放送響の首席チェリストとか
音大のプロフェッサーとかごろごろ見かけた。



バッハ大好き母息子の綾ちゃん達も組曲全部わかっているわけではない。
例によって必死で予習する綾ちゃんを尻目に息子はあっさり楽譜持参でやってきた。


これが大正解!


曲がわからないまま聴いていたらつまんない小難しい2時間半で終わっていたかも。



ねっ!僕ってエライでしょ?


綾ちゃんは普段はヨーヨーマってあんまり聴いたりしないから
最初はどこに焦点を当てて聴けばいいのかよくわからなかったんだ。

とにかく綾ちゃんが一番興味あったのは彼のストラディバリ。
綾ちゃんが最も愛する伝説のチェリスト故ジャクリーヌ デユ プレがかつて
弾いていたという。
一目この目で見たかった。一度生で聴いてみたかった。



そうして一つ目の組曲が終わる頃、だんだんわかってきた。



ああ、彼の「物語」を聴いているんだってね。
ストラディバリほどの名器だもの。現在の相棒である彼(ヨーヨーマ)の
頭の中で鳴っている音を忠実に再現するだけでデユ プレの面影など
どこにもない響きだった。うん。それでいい。




酔いしれたー!



バッハってマタイ受難曲とか派手で大掛かりな名曲も素晴らしいけど
スイート(組曲)中のちょっとした地味なフレーズが渋すぎるー!
これをまた、ヨーヨーマ氏がかっこよ〜く弾くんだ!



はまりまくった2時間半、あっという間でした。









2016年1月29日金曜日

年女




     『最悪です。もう恥ずかしくて恥ずかしくて。猿なんて!どうして
     他の愛らしい動物じゃあないんでしょう?ネズミとかうさぎとか。
     蛇やうさぎだってキャラクターにしたり色々チャーミングに飾り様が
     あるのに。猿だなんて!』




   たいていのドイツ人は大人になってから干支という中国のホロスコープを
  知って興味津々、自分の中国的運勢を気にかける。
  面白いくらい最近のドイツ人は皆、自分の干支を知っている。





   ちなみに上の発言をしたのは例のマヌカン嬢である。彼女は現在別の治療法を
  試すためにうちでの治療はお休み中だが綾ちゃんとのコンタクトは続いている。
  パトロンの彼氏の方はペースこそ2週に一度とゆっくりだが定期的に顔を
  合わせているしその度にメッセージを交換しているという関係だ。





   彼女の星座は牡牛座。西洋だと牛で東洋だと猿。




   猿は賢い動物の代表ですよと慰める当の綾ちゃんは辰年生まれでまるきり
  説得力がない。正直、綾ちゃんも自分が申年生まれだったらやっぱりつまんない
  なあと思ったんじゃないだろうか。綾ちゃん、自分の干支をものすごく気に
  入っていて結構龍のグッズとか集めてるもん。



   この手の不平等感って大抵女性なら誰でもどこかに持っているんじゃあない
  だろうか? 乙女座生まれのごっついオッちゃんとか。どうでもいいけど
  綾ちゃんは誕生石が11月でトパーズなんだけど、そのことでものすごく
  損したような気がしている。
  もしもダイヤモンドとかアメジストとかの誕生石だったら絶対、ボーイフレンドが
  できるたびに(できるだけいっぱい!作って)彼氏にねだりまくる夢想とか
  しちゃうなあ。想像するだけでも楽しい。この手の「運命」は仕方がないもんなあ。



   申年の初めに当たってそれまで十二支を知らなかったドイツ人が興味本位で
  自分の干支は?って調べたらモンキーだったってショックを受けてる人って
  意外にいるんだ。





              


               日光東照宮  三猿



  




   
     

2016年1月27日水曜日

またしても閑話休題





       今日は何となくネタを思いつかないのでまたしても
      息子のストップモーションを載せてしまいます。



       随分昔の投稿らしいんですが、子供のお遊びとご笑納ください。


        


2016年1月26日火曜日

そのまま


         ここ数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をしてます。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!



      ところが綾ちゃんは彼にさっぱり会わなくなった。綾ちゃんが
     始発に乗らなくなったからである。ある時、7時の患者がいる時には
     朝4時半に起床していると口が滑ってしまった(しょっちゅう口が滑る)
     綾ちゃんに対してドクターが早朝出勤禁止令を出したんだ。綾ちゃんは
     8時以降の患者さんの対応をすべし。それ以前の時間に来る時はドクターが
     奥様とケアすることになっちゃった。いや、綾ちゃん的にはそういう
     いい加減な時間に出勤すると色々準備が後手後手に回るから返って
     大変な思いをするので早起きした方が楽なんだけどなあ。
     綾ちゃんは実は早朝出勤派で会社勤め時代も残業より早く出勤して
     朝の誰もいないうちにすっきり仕事しちゃうのが好きなタイプだったんだ。



      かれこれ一年近く彼に会ってなかったかなあ?電話番号は随分以前に
     交換したんだけどわざわざかけるほどの仲でもないし、そうこうするうち
     綾ちゃんのスマホが壊れてSDカードごと(!)ダメになっちゃったので
     電話番号もわかんなくなっちゃってたんだ。





      彼に再会したのは昨年の年末のこと。週末の買い物の最中だった。
     道で声をかけられていたけれどなんと髪が生えていて(!)
     別人みたいになっていたからわからなかった。「アヤコ、ボクのこと
     覚えてないの?」って訊かれて声で分かったという情けない逸話なんだ
     けど、その時は奥さんと一緒だった。





      『ね、前に行ってたでしょ。お店を出したいって。本当はここの
      近所を探してたんだけどミュンヘン市内でオープンすることに
      なったんだ。』




      いやー、良かった。めでたい!めでたい!もちろんこれから
     大変なことがたくさん待っていると思うけれど、でもとにかく
     がんばれー! そのまま、突き進めー!





              


    

    またしても本文と何の関係もない動画です。息子(二男)のお絵描き。



2016年1月25日月曜日

SWEAT DREAMS



           ここ数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をしてます。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!


    『ね、オイラのさ、ささやかな趣味を見てくれる?これなんだけど。』



   彼はポケットからスマホを取り出して綾ちゃんに見せた。それは「庭」の
  写真だった。色んな庭。世界中の。日本の禅寺の庭もある。龍安寺の石庭を
  見つけて思わずおお、とうなってしまった。

         

      『ああ、それはイカすなあ。日本のお寺なんだよね。タイにも
      仏教のお寺はたくさんあるけど全然違うよ、日本のはとにかく
      クールだ。
      こっちがインドで、こっちはイギリス、、、。』



   別に自分で旅行したわけじゃなくてネットで画像検索して気に入ったのを
  ダウンロードして集めているらしい。本当にささやかな趣味だ。
  でもいいアイディアだなあ。心癒されるし時間もお金もかからない。
  ポケットからいつでも取り出して眺められるしね。





   彼はタイには何度も訪れている。それで彼の奥さんというのはタイ人女性
  なのである。彼らの夢はせっせとお金を貯めてタイに移住すること。
  タイでおうちを一軒構えるのはさして高額ではないのだそう。無論、豪華な
  王宮のような建物のことではなく一般庶民のための簡素な水辺のあばら家
  なんだそうだけれど。




     『オイラの稼ぎが悪いだろう?だから奥さんも働きづめで身体の
     調子もあんまり良くないんだ。でもおうちの奥さん、頑張って
     友人たちとなんとか独立して自分の店を持てたらいいなって
     言ってるんだ。その時が来たら必ず知らせるからね。』




    必ず応援する、綾ちゃんは約束した。


2016年1月23日土曜日

早朝のおしゃべり



          ここ数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をしてます。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!




    一年のうちに10回もあるだろうか?綾ちゃんが始発電車に乗って通勤する
   のって?その度に綾ちゃんは彼と顔を合わせた。彼は三つ隣の駅で降りる
   だけだから(綾ちゃんはミュンヘン中央駅まで10以上だ)大した時間でも
   ないのだけれど、綾ちゃんたちは必ず一緒に座っておしゃべりした。
   帰りの電車で会ったこともある。一度など電車に間に合うかギリギリで
   アセって駅に向かって走っていた綾ちゃんの後ろから自転車で追いかけてきて
   後部座席に乗せてもらって二人乗りで駅まで乗り付けたりもした。




    彼はドイツ人には間違いなさそうだけれどとにかく痩せていてアタマにも
   髪の毛がないんだから病人のように見える。足は全快したようだ。
   でも陽気で明るくよくおしゃべりする子だった。「子」と書いちゃったし
   そういうイメージなんだけど実際には30歳をずいぶん超えているとのこと。



    さらに既婚者だった。






      『オイラなんてさ、学校時代お勉強できなかったのさ。ドイツじゃあ
      学歴なくっちゃあろくな仕事にありつけやしない。
      毎朝始発で工場通い。重い資材運んでナンボのもんだよ。1日6時から
      14時まで働いて月の給料、1000ユーロもらえないんだぜ。
      これじゃあやっていけないじゃないか。やんなっちゃうよ。』





    げげ、それは酷い!パートで1日5時間半がベースの綾ちゃんより
   稼いでいない??じゃないか?それで家庭を持つのは大変でしょう。





自然食料品店でドイツのチューブわさびを買ってみた。
日本食料品店に売ってるS&Bだのハウスは保存料とか
増粘剤が入っていてぶーです。
これは高い(5ユーロ近い!)けどなかなか良かった。








2016年1月22日金曜日

ブルーカラー




          ここ数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をします。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!





      あれから数年経った今でもあの時の彼の姿と土砂降りに煙る
     空の色や空気の匂いを覚えている。それは何やら綾ちゃんの心象風景と
     なって永く留まっているのである。




      彼を家まで送り届けた日から一ヶ月ほどが過ぎた頃、再会の日が
     巡り来た。早朝05時17分、始発電車の車内でのこと。ものすごく
     時々なんだけど、患者さんのリクエストで綾ちゃん、超早起きを
     することがある。患者さんが7時に来るとなると(そしてこういう方は
     お仕事などの差し迫った都合から早朝を選んでいるので遅刻はあり得ない
     どころか心持ち早めにいらっしゃる)こっちは最低でもその30分前には
     病院を開けて準備万端にしておきたい。ドクターはそこまでしなくても、
     とおっしゃるがこれは仕事人の意地なんだ。遅くても6時半に着くとなると
     郊外組の綾ちゃんは始発に乗る羽目になる。



      綾ちゃんが自分のことを肉体労働者だなあと感じるのはこんな時。
     始発に乗ってミュンヘン方面にお仕事に行こうなんて人は皆、あからさまに
     判る服装に身を包んでいる。ペンキ塗りだったり職工だったり、男の人なら
     汚れていいようなつなぎのズボンだし、女性だと職場で着替えるんだろうけど
     お化粧やアクセサリーに身を固めていたり、スーツやパンプス姿の人なんて
     まずお目にかからない。06時過ぎの電車からはサラリーマンが一気に増える
     けど(そして7時以降は子供でアップアップになる)。





      その始発電車で声をかけられたんだ。彼に。その時わかったんだけれど
     彼は子供ではなかったんだ。ちゃんとした社会人だったんだ。


                 ブルーカラーの。





             

            ETALIA内の石鹸コーナー。綺麗なのがたくさん。




     

2016年1月21日木曜日

雨に消えたジョガー





           ここ数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をします。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!


   骨折だろうか?見事なほどずぶ濡れになって両手で松葉杖を使い
    ながらひょっこり、ひょっこりとゆっくりしか移動
    できない。衛生的にも最悪だ。家に帰ってから包帯を巻き
    なおしたりできるのかしら?

  


     白いTシャツに短パンから細くて長い足がニョッキリ生えている。
    ユーミン世代の綾ちゃんは俯いた彼の姿を見てすぐに懐かしい一曲を
    連想した。



          

アルバム「時のないホテル」の一曲
「雨に消えたジョガー」
以前はあったYouTubeの投稿は削除されていてありませんでした。



すれ違ったランナーに骨髄性白血病で夭折した彼のことを
思い出す哀しい曲です。



綾ちゃんは彼の元に駆け寄って傘をさしかけた。
片手だけでも空いているのなら傘を貸してあげるところだけれど
両手でよいしょよいしょと歩いているのだから
他にどうしようもない。
幸い家は駅の近くで綾ちゃんちより手前にあったので
家まで送って行くことにした。



ゆっくり、ゆっくり我々は歩いて行った。






     
          

2016年1月20日水曜日

雨のステイション




           今日から数日間、友人のオープンしたタイマッサージ店
          宣伝をします。興味のある方、HPの携帯の方の番号に電話をかけて
          Ayakoの紹介と言ってPimさん(女性)をご指名くださーい!





        まず最初に私と「彼」の関係から始めよう。こんな風に始まる
       友情というのは綾ちゃん、初めてのことなんだけれど。




        確か、あれはもう3年以上前になるのだろうか?暑い、とても暑い
       これがドイツの夏だと信じられないほど蒸し暑い夏の日の午後だった。
       蒸し暑い中にどっしりと湿気の匂いのする空気に雨の予感を覚え
       綾ちゃんはカーディガンと折りたたみ傘をバッグに忍ばせて
       仕事に出かけたものだった。




        仕事帰り。郊外電車に乗るまでは35度ほどでムシムシしていた空が
       とうとう壊れた。夕立だ。雷雨はそれまでの憂さを晴らすかの如く
       荒れ狂い耳を覆うような雷鳴に稲妻。外に出るのが空恐ろしいほどの
       強い雨。綾ちゃんの電車が降車駅に到着したのはそんな時だった。
       真夏とはいえドイツの空気は一気に冷え切って一度に20度を
       切ったんじゃないだろうか?蒸し風呂から冷蔵庫だ。雨の冷たさも
       手伝って体感温度は冬並み。綾ちゃんは急いでカーディガンを
       羽織り傘を手にホームに降り立った。出口に近い庇(ひさし)の
       ある側だ。傘を持たない人々は一様に携帯を取り出して家に
       電話をかけている。または諦めて土砂降りの道路へ駆けだしていく。




        その時、綾ちゃんの視界にその「少年」の姿が現れた。とても、
       とても線が細くシャープペンシルの芯を想起させる。背が高い。
       ホームの反対側(屋根がない)の端っこに佇み雨に打たれている。
       シャワーを浴びているようにずぶ濡れでかわいそうな捨て犬を
       連想させた。




        薄手のTシャツにボクサーショーツにリュックサックを背負っている。
       無理もない。つい30分前までは本当にうだるような暑さだったの
       だから。




        けれどそれだけならばホームの反対側の端にいてひさしのある
       安全地帯で上着も傘も持っている綾ちゃんの心が動くということは
       なかった。男の子なんだし家まで走って帰れば良い。でも綾ちゃんは
       彼の姿を認めるなり見ず知らずの彼に向かって駆け出して行った。
       



          なぜなら彼は両手で松葉杖をついていたから。



ETALIAのパスタ!すごい種類!




   水牛モッツァレラ!お豆腐屋さん?


       見てるだけで楽しい。




2016年1月19日火曜日

真っ黒クロスケ一掃




         リアル綾ちゃんをご存知の方は異論ないと思うんだけど
        綾ちゃんは超元気で超ポジティブ女だ。病気だろうが不幸の
        真っ最中だろうが絶望に打ちのめされていようが基本、元気だ。
        おそらく臨終の床でも「お元気?」なんて訊かれちゃったら
        「ハイ、もちろん!」って言ってニコニコすると思う。
        または自分の不幸をネタに一席ぶったりするだろう。
        これは家系らしくて綾ちゃんの実家は全員こんな感じだ。
        ちなみに全員O型である。
        (どうでもいいことだがこういうネアカ人間ほど趣味は暗い。
        代償行為というやつだな。) 




         以前、超ネガティブな患者さんと対峙するのにATフィールドの
        バリアを張る話をしたと思うけれど、よくよく考えると
        綾ちゃんほどの(?)人間でもそんなことをせにゃあならんほど
        大変なところなんだな、病院って。ある意味戦場でもある。




         そしてそのネガティブなストレスが蓄積疲労として背中に
        あれあれって溜まっていくのが感じられることがある。





         だから綾ちゃんは心してリフレッシュの時間を大切にしている。
        毎晩のお風呂はマストだし体操や音楽、月に一度はお金を払って
        サウナやマッサージに行ったりドクターに鍼を打ってもらったり
        してる。それでもじわじわ身体に張り付き染み込む
        「真っ黒クロスケ」みたいなやつがいるんだ。本で読んだ通り。



           


       どう表現したらいいのかね。こういう奴らを毛穴から一掃する感じ。


       ヴァカンスに執着するのは愚かなことだと綾ちゃんも思う。
      だけど、社会や仕事に真面目な人ほど体の細胞がすっかり入れ替わるような
      美しい環境に身をおくことがこんなに大切だったんだと身を以て知った
      綾ちゃんでした。



        

2016年1月18日月曜日

HOW TO 禊(みそぎ)、お祓い、リフレッシュ





       本のタイトルを忘れてしまって大変残念なんだけど、以前ある
      自然療法家の本の中でこのテーマについて一章を割いて言及して
      いるのを読んだことがある。曰く、治療に携わる者はすべからず
      病の負のエネルギーに晒されるので日々、治療に携わる者は
      すべからず病のエネルギーに晒されるので日々これを体外に
      振り払うべき時間を持たねばならない。






       一番手っ取り早い日々のデトックスはお風呂で、できれば自然塩を
      入れた湯船に毎晩ゆっくり浸かること。(わかる!わかるよー!)
      これで大部分は排出できる。一ヶ月に一度は患者としてデトックスの
      治療を受けること。鍼とかアーユルヴェーダとか何でもいい。
      手軽にサウナとかに行くのもいい。一年に一度、できれば二度は
      ヴァカンスに出かけ、治療と全く関係のない自然環境に身をおくこと。
      清涼な山岳地帯や太陽の日差しなど美しいエネルギーに身をおく。



、、、ってこれってドイツ人のヴァカンスそのものじゃん! 





日清カップヌードルわさび味
デトックスどころか体に悪そう。つい買ってしまった。



激辛!むせてしまって完食できませんでした。




       



2016年1月16日土曜日

なぜウアラウプは必要なのか?





      なぜウアラウプ(=ヴァカンス。日本語の休暇とは違う)は必要なのか?




           医療関係や治療家と呼ばれる人すべてについて
          言えることだけれど、我々は古い言葉で言うところの
          「禊(みそぎ)」を必要としているからだ、と思う。



      本当は人と関わる全ての職業について言えることだと思うんだけど。


      現在の職業に就いてから痛切に感じることだ。一人の人間が社会の
     一員として自分なりの役割を果たす時他人と関わらざるをえない。
     その際に引き受ける(主に「負」の)エネルギーを放置しておくことは
     とても危険なことだ。人は誰しも負のエネルギーを放出することで
     他人を損ない、傷つけそして蝕(むしば)みうる。




      綾ちゃんの昔の友人で心理カウンセラーとして精神病院に就職した子が
     いた。綾ちゃんは大学の授業の関係で教育学、教育心理学の友人がたくさん
     いたんだけど、彼女は彼らの中でも最も勉強熱心できっと一番の出世頭に
     なるだろうと言われていた。綾ちゃん本人はあまり親しくなかったんだけど。



      大学を卒業して10年近く経つまでの間に彼女についての幾つかの珍妙な
     噂話を耳にした。奇行と呼んでもいいほどの内容で真偽のほどは確認しようも
     なかったがほどなく今度は彼女自身が心の病気で入院治療を受けているという
     話を聞いた。現在の彼女の動静は全く知りえないし彼女のことをまるで
     知らない綾ちゃんがどうこう判じることでもないが、現在の職に就いている
     綾ちゃん的にはなんとなく腑に落ちる感触もあるのである。
     心傷ついた人々と対峙するのはものすごい精神力が要る。下手すると
     すぐに負のエネルギーに呑まれてしまうんだ。もしかすると、だけれど
     彼女もそんな風に損なわれていったのかもしれない。




      また別の例だけど綾ちゃんは自然療法養成家学校時代に奇妙な現象に
     遭遇したことがある。
     病理学の勉強をしていると必ず勉強の内容と綾ちゃんの身体がシンクロ
     現象を起こしてしまうのだ!心臓疾患だとか胃癌だとか神経痛だの
     足が痛くなったりてんやわんや!
     んで、ある時授業が終わって皆でご飯を食べに行く時に講師の先生に
     訊いてみた、私って異常なんでしょうかって。


      そしたら先生は笑って、「それって正常よ。誰にでもしょっちゅう
     起こること。」と教えてくださった。自分で理解したり暗記したりしようと
     する作業が自分の脳に暗示をかけるんだって。




      この例えはヒトのエネルギー問題とはちょっと外れてしまうけれど
     でもそれだけ人間の脳や身体は敏感に反応してしまうということの
     良い証左なんだ。






         

           今、巷で話題のEATALYに行ってきましたー!


     

2016年1月15日金曜日

休暇考〜やっとアタマがドイツ人に追いついた?




      ドイツに来たばかりの頃、ドイツ人と話していると大抵の人は
     日本と日本人に対して好意を持っているが、あの働きぶりだけは
     感心できないという意見を聞くことが多かった。

                 

近所の夕焼け

      だが綾ちゃん的にはドイツ人のウアラウプ(Urlaub=休暇)至上主義
     こそクレイジー以外の何物でもないという風に見えたものである。
     現実に休暇をめぐる障害やトラブルもドイツの社会で起こっていることも
     確かだしね。




      綾ちゃんは日本人の(しかもその中でも特に働き者の)夫を持って
     しまったので結局20年以上ドイツに住んでいたって結局旅行とか
     別荘とか保養とかという言葉とはほとんど縁のないまま過ごして
     きてしまった。30日もある夫の有給休暇なんてきちんと取った
     ためしがない。綾ちゃんが滅茶苦茶頑張って夫を説き伏せて
     旅行の予約を入れてしまって、はい、行くよーと引っ張って連れて
     行った家族旅行がこれまでで片手に収まるほど。それでも一週間が限度。
     皆のように三週間のウアラウプなんてどうやったら実現するのか
     想像もつかない。




      今現在、夫がそばにいない気安さ(?)も手伝って休暇の時には
     ものすごく違った環境に身をさらしているわけなんだけれど
     滞独20年を過ぎてやっと理解したこのリフレッシュ感をどう表現
     したらいいのだろう。やっとアタマがドイツ人に追いついたって感じ?
     この感じは週末の数日では得られない身体ごと綺麗に入れ替わるような
     感覚だ。




            突然ウアラウプ賛成派に転じました、私です。



                  即席オケにて

      




   

2016年1月14日木曜日

日本人は皆親切、、、




       意外にも!?日本・中国旅行から帰ってきたドクターは
      休みボケしていなかった。おお、てきぱきと仕事なんかしちゃって。
      金曜日に帰って来て週末を挟んだのが良かったんだな。


       ドクターは仕事始めの日、お昼休みを綾ちゃんと一緒に取りたがった。
      旅行の話をしたいらしい。綾ちゃんもいろいろ聞きたいよ。




         『いやー。日本人は皆親切だねー。感激しちゃったよ。』



       お昼ご飯をかっ込みながら少年のように頬を紅潮させて説明し始めた。




         『いやね、東京にスーツケースを忘れてきた話はしたでしょう。
         最後の日に宿に取りに行ったら手荷物預かり代だっていうことで
         手数料が200円だって言うんだ。私はスーツケースは駅の
         コインロッカーに入れようと思っていたのに。ロッカーだったら
         3日で2000円はかかっちゃうよ。』




         『でもね、それだけじゃあないんです。実は京都に持ち歩いて
         いた方のスーツケースを今度は上野駅のロッカーに入れて
         いたんだけれど、出発日に今度はそれを忘れて羽田空港に
         行っちゃったんです。ずいぶん早く着いて得意でチェックイン
         したら荷物を預ける段になって、上野のスーツケースのことを
         思い出しちゃって、、、。係りの人にもう一つ上野にあるって
         言ったら今から取りに行ったら飛行機の出発に間に合いませんよ
         と言われたんだけれど、そういうわけにもいかない!?から
         やっぱり取りに行ったんです。で、スーツケースを取って
         戻ってきたら案の定、飛行機は出立してしまってたんですね。』





         『カウンターの人からは、もうどうしようもないから、今日、夕方に
        チャイナエアラインの北京行きがあるから旅行代理店でそれを
        買ってくださいと言われたんでそちらに足を運ぼうとしていて
        ふと、日本の(本来の)エアラインでもう一度尋ねてみようかという
        気を起こしてエアラインのカウンターに行ってみたんです。
        そしたら、飛行機の搭乗券というのは順番に乗らないと次の
        帰りのミュンヘン行きの飛行機にも乗れないから必ずうちの
        エアラインでお飛びください。幸い次の北京行きに空席がありますから
        そちらの代替のボーディングパスを出しますとおっしゃってくださって
        無料で乗れたんだよ。中国じゃこんな風に親切に説明してくれたり
        しないよ。みんな丁寧だし。感激だったなあ。』




      それはそれは。一体全体どんだけものすごいおバカをやってどんだけ
     ラッキーだったんだ、この人は?



      なんかどれもこれも「親切な日本人」の正しい例文ではなかった気が
     するんだけど、、、。




             まいっか。今年もよろしく、ドクター。



         

2016年1月13日水曜日

休暇が大切だと考える綾ちゃんのアタマはドイツ人化してしまったのか?




       病院の冬休みは3週間。綾ちゃんは昨年の有休を使いきり
      (実は最終日を数え間違えて1日余計に働いてしまった。)
      新年の有休を2日分使ってシュタルンベルクで過ごしました。
      綾ちゃん自身は実質仕事をお休みしたのは都合10日位だったん
      ですけど、今回の休みはドクターが日本に行ったり綾ちゃん夫が
      帰省(って正しい表現?)したり、チェロのコースにどっぷり
      浸かったりでもう、充実したという以上の盛り込み感がありました。




ワイドで撮った湖の思い出


       病院にはドクターが戻ってきて今週から患者さんが待ってましたと
      ばかりに押し寄せています。




       今回、病院でのお仕事大好きの綾ちゃんは自分でキョーガクして
      しまいました。なんと、この2週間ほど病院で働いている時の「感じ」を
      すっかり忘れ去っていたんですね。




       3週間ぶりに着るチャイナ白衣。セミロングの髪をきりりと引っ詰めに
      すると自分でもびっくり!あーら、プラクシスのフラウ ヨシオカの
      出来上がりー!鏡に映る自分の姿が懐かしいー!




       もう初日からいきなり色んな人生のお荷物を背負った患者さんたちと
      お付き合いしているんですけれど、こんなにも心を空っぽにして
      一つ一つのケースと対峙していけるなんて、休暇のリフレッシュって
      こんなにも大切だったんだと滞独20年過ぎた綾ちゃん初めてのように
      知るところです。




            これって綾ちゃん、やっぱりドイツ人化?






レッスン会場だったギムナジウムの教室からの眺め。
湖に面した教室。いいなあ。

2016年1月12日火曜日

さざなみ

                   




     二日目の朝、携帯を取り出す手間が惜しいほどの美しい光景を目にしたんだ。
    朝日の昇る光に向かって大きな白鳥が湖をゆっくりと進んでいく。


           ああ、「白鳥」だ。これがその世界なんだあ。




      サン・サーンスと言えば何をおいても「白鳥」。チェロと言う楽器のことを
    全然知らない人だってこの曲は知っている。サン・サーンスさんご本人は
    ピアノの名手として名高かったそうだけれど綾ちゃんはいつも思うんだ。
    彼はチェロという楽器を知り尽くしてその性能を最も高める最高の曲を
    たくさん書いた人なんだって。ピアノ協奏曲とかヴァイオリンの曲とか
    もちろんたくさん書いているけれどやっぱり「動物の謝肉祭」中でも
    「白鳥」はひときわ精彩を放っているし、他にもチェロ協奏曲とか
    アレグロ アパッシオナートとか彼のチェロの名曲は特別な感じがする。






綾ちゃんはこの美しい風景の只中ベンチに腰を下ろして
YouTubeでいろんな演奏家の手によるいろんなサンサーンスの演奏を
聴き比べていたんだ。



そしたらね、





弦楽器(特にチェロ)のビブラートと湖の穏やかなさざなみが綺麗に
シンクロしてうわー、って高みに上っていく飛翔感を突然味わった。


         いや、本当は味あわなきゃいけないのは僕の方です。




       すっかり舞い上がってしまった綾ちゃんのホリデーでした。






      

2016年1月11日月曜日

白鳥



       今回、綾ちゃんはお泊りせず毎日会場に通いました。
      昨年は色々出費が嵩んだので節約モード。駅から徒歩で
      すぐというのも良かったし。ご飯は予約制で一緒に食べれて
      言うことないんだけど、息子の部屋には相棒がいるので母親が
      居座るわけにもいかずちょっとした休憩時間はお散歩する羽目に。
      でもそこは綾ちゃん晴れ女パワーで毎日良いお天気。
      敷地内はWifiも完備で音楽を聴きながら贅沢三昧。




トウッチングのお城跡を改造しています。



         アルプスまで見渡せる。シャッターを切る息子






陽が暮れかかると薄闇でああロマンチック




ワイドで撮ってみた。


息子は現在もサンサーンスと格闘している。んで、自然、綾ちゃんも
サンサーンスにどっぷり浸かったままでいるんだけれど、、、


皆さん、サンサーンスっていうと何を思い浮かべます?




これですよね。


白鳥といえば、湖!いや、チャイコフスキーに飛びたいわけじゃあ
ないんだけど、、、これがシュタルンベルク湖に美しい白鳥がいて
水面を優雅に泳いでいるわけなんだ。


うわー、これこれ!この雰囲気〜!とインスピレーションを得て
一人で興奮する綾ちゃんでありました。

続きは明日。



2016年1月9日土曜日

冬休みの写真〜湖の郷愁





シュタルンベルク湖の音楽コースから帰ってきて日常の日々が戻ってきましたー!

少しずつ写真をアップします。




会場はこれまでのホテルからEvangelische Akademieに変わりました。
ここも美しい施設ですお庭が湖に直接面している。




晴れても曇っても朝も午後も全て美しい。



ゴージャスなテラス。



ユリアさんのコンサート


息子の部屋。ミヒャエル君13歳と相部屋。
湖が眺めわたせる清潔な部屋。


この施設はドイツ人の間ではかなり有名らしく、綾ちゃんの知人でも
知ってる人が多かった。会議とかコンサートとかよく行われるらしい。

一般のお客さんでも一泊80ユーロくらいで泊まれるからびっくりです。





2016年1月8日金曜日

昨日、京、奈良、飛鳥、明後日??




     ドクターのいない年末。今こそ溜まり溜まった書類仕事(何と9月分から
    手をつけていなかった!?)を片付けんとしていた矢先、電話のベルが鳴った。
    表示を見るとドクターの携帯だ。おお、日本から携帯でかけてきてる。
    こいつは急ぎの用件だな。綾ちゃんはドクターの万一に備えてチャットも
    (中国人は皆 we chat )メールも全部スタンバイした状態で待機中だった。
    何だ何だ今度は?




     羽田到着後すでに一度クレジットカードトラブルで電話してきたドクター、
    今度は何だ?







       『フラウ ヨシオカ!無事京都に到着しました。でもスーツケースを
       東京の宿に忘れてきちゃったんです。』



     はー、今度は何事かと思ったがほとんど人知を超えたポカだなこりゃあ。
    綾ちゃんは東京の宿に電話をかけて三日後に取りに行くのでそれまで
    預かってもらえないかと電話をかける。




     東京観光のセッティングもドクターらしくやれ国会図書館や北里大学の
    医学図書館(神奈川!)に行きたいとか中医学者〇〇さんに会いたいだとか
    無茶が多すぎる。国会図書館くらいなら皇居見学ついでに行けるから
    あとは次回にしましょうと軽くいなして京都。奈良。これは中国語ガイドの
    方に落ち人したところガイドなのにどこまでも親身になってくださって
    とても気持ちの良い観光ができた。
    





          
              京都に出てきた綾ちゃん夫と豆腐懐石
             ドクターは真ん中。右はガイドの方。



          


        日本をとっても堪能してくださったドクターでした。





2016年1月4日月曜日

実はドクター イン ジャパン?





        現在うちの病院は冬休み中です。ドクターはいつものように
       中国へ里帰り、と思いきやなーんと日本にいらっしゃったんですね。
       もちろんこれは綾ちゃんが提案したこと。ドクター、せっかくなら
       日本に少しお寄りになってから中国へ行かれたらいいのに。そう
       綾ちゃんが言った翌日、ドクターは本当にチケットを取っちゃった!




        自然な流れで綾ちゃんが宿泊その他全てのアレンジを行う羽目に
       相成った。




        何と言ってもドクターはドイツ語と中国語しかできない。どうしよう?
       綾ちゃんは(本来なら経理等書類仕事をすべき時間を全部使って)
       中国語ガイドの手配と交通チケット、および完全マニュアルの作成に
       2ヶ月以上を費やした。東京と京都&奈良全部で1週間!



        ああ、でも心配だー、心配だー!どう考えても心配だ。
       どんだけドクターがおっちょこちょいか熟知している綾ちゃん、
       心配性の綾ちゃん。何度も計画を見直す。




        そうこうするうち出発の日がやってきた。綾ちゃんからあれこれ
       情報を詰め込まれていざ出発!




         

今回、綾ちゃんが手配した東京は浅草の
台東旅館。外国人に人気のチョー格安宿。
一泊なんと3000円!
普通の日本の家屋っぽいところが実にいい。






        
       



2016年1月3日日曜日

湖のほとりから


           今年もお正月恒例シュタルンベルク湖畔のコースにやって来ました。ユリア フィッシャーさんの集中コースで息子のチェロの先生が講師をなさっています。


            もうすぐユリアさんのオープニングコンサートが開幕します。この一週間、音楽にどっぷりつかる美しく贅沢な時を過ごせるのです。




               今年は暖冬で雪が無く霧立ち上って幻想的なメルヘンの世界に迷い込んだような気分。お天気が良いとドイツ最高峰のツークシュピッツエまできれいに見渡せるはずですが、向こう岸が霧に隠れて見えないのでまるで海辺にいるみたいです。郷愁をそそられます。




                    美しい景色に囲まれると厳粛で敬虔な気持ちにさせられるものですね。この幸せな気持ちを誰かに分けてあげたくもなります。



                    皆さま、良い一年になりますように。



                       

2016年1月2日土曜日

音楽は敵を超える




            明けましておめでとうございます。



   新年にはいつも心改まる思い、出発の気持ちがみなぎるものです。
  この新しい一年を、一瞬一瞬を素晴らしい、生きていてよかった、と思える時間に
  したいものです。



   一年の初めに贈る言葉として今年は去る12月8日、世界的な指揮者兼
  ピアニストであるバレンボエム氏が来日に際してのインタビューで語った内容を
  採ろうと思います。彼のように芸術に音楽にだけ集中していても、いや
  集中しているからこそ語れることがある。心の中にある美しい想いを
  そばにいる人と暖かく育める、
  そんな時間を過ごせたらと願って止まない2016年初頭の綾ちゃんです。




       大晦日にマリエン広場に花火を見に行こうとしたら雨が止まないので中止。
  まったりと家で過ごしていたところ、テロ警報にて駅は閉鎖騒ぎだったと元旦に
  知りました。お出かけしていたら帰れなくててんやわんやに巻き込まれている
    ところでした。
  そう、こんな風にお気楽タイヘイに生きている私の、その地球の裏側で血を
  流しながら無残にも命を落とす名もなき儚い存在がある。そんな緊張感を
  思い起こさせてくれる1月1日でした。 





 「ドイツほど、自分たちの過去と真剣に向き合ってきた国はない。そうでなければ私は、ユダヤ人としてこの街に住むことなど考えなかった。
 多くの国がいま、過去との向き合い方に関して問題を抱えていますね。イタリアフランススペインも、そして日本も。多くの原因は、『愛国』と『国粋』を混同していること。自分たちがやっていることに誇りを持つということと、自分たちが他より優れていると思いこむことは大きく異なる。本物の自信と誇りは、他者との比較からは決して育ちません」
 「同じように、グローバリズムとユニバーサリズムとの間にも、本質的な違いがあります。ユニバーサリズムは互いの違いを認めるということ。グローバリズムはみんな一緒を求めるということ。どちらを私が支持するかはもう言うまでもないですよね。私はスパゲティもおすしも刺し身も天ぷらもインド料理もフランス料理も、すべて好きです。人生を豊かにするのはグローバリズムではなく、ユニバーサリズムなのです」
 「大切なのは、自虐からではなく、誇りを礎に再起すること。ドイツはあまりに過去が凄惨(せいさん)すぎるものだから、愛国的なにおいがするものを即座に『危険』と排除する傾向が今もある。楽器ひとつとっても、オーボエやトランペットで、ドイツらしさを感じさせるものが減りつつある。ナチスは『最も偉大なドイツ人だけが真の芸術を理解できる』と主張したが、これがファシズムの権化であるとすれば、ドイツらしい重厚さを排除し、機能的な響きばかりを歓迎するのも、これもまた逆の意味でファシズムとなりかねません。時代は流転する。そのつど過去を受け止め、克服してゆく。この継続なくして、先に進むことはできません」
 「大切なのは、国という集団としても個人としても、誰もが過去と向き合う必要があるということです。いま、世界でたくさんの紛争、対立が起こっています。それは、ある種の過去への憧憬(しょうけい)から生まれているものです。今のロシアはいつも過去を振り返っているし、アメリカも世界を統べる権威ある国として威容を誇っていた時代を懐かしんでいる。しかし、今はどちらもすでに、唯一無二の覇権国家などではない。繰り返しますが。過去を新しい状況のなかで受け入れ、克服しないことにはどの国にも未来はないのです」
 「ドイツでも、過去に対する取り組みをちゃんと感じられるようになったのはせいぜい80年代のことでした。こういうことには時間がかかります。例えば、私があなたに何か良くないことをしたとしましょう。私はあなたに謝らなければなりません。それは道徳的な行為であり、また、対立を終わらせるための戦略的な行為ともいえます。ごめんなさい、私が悪かったです、と。私は悪くない、と言い張れば言い張るほど、対立は根深いものになってしまう。人対人なら、手をとりあおうという姿勢を共有することができます。しかし、国対国となると、なぜそれができなくなるのか。そこを私はまだ理解できないのです」
 「今したことに対して謝ることより、100年前に犯した過ちを謝るということが、なぜこんなに難しいのか。思うに、現代の私たちに欠けているのは勇気です。そうした時に音楽は、政治的な理由での対立を人間同士のものに戻すことができます。紛争や対立から、一瞬離れることができるのです。ドイツフランスの相克の歴史はご存じかと思いますが、ドビュッシーやボードレール、ベートーベンやバッハを通じ、彼らは人間として出会うことができるのです」
 思想家のエドワード・サイード(1935~2003)とともに、イスラエルパレスチナの若者を集めたオーケストラ「ウェスト・イースタン・ディバン・オーケストラ」を創設して15年。思想や民族の対立を超え、心を通わせる幸福な感情を若い時期に体験することが、無為な争いの芽を摘む。そんな信念をゲーテの「西東詩集」にちなんだ名称に託した。卒業生の多くがベルリン・フィルやシュターツカペレ、バイエルン放送交響楽団などの名門へと翼を広げた。
 「ディバンは平和の象徴のようにしばしば語られますが、それは違う。正義や安全は、音楽にはもたらすことができないものです。ディバンの目的は政治的な合意ではなく、たとえばベートーベンの交響曲について、同じ考えを持つようなことを求めるわけです」
 「『敵』である人の隣で、同じ曲を1日練習したとしましょう。終わるころには『敵』という感情はなくなっています。政治には不可能なことが、音楽では可能になるのです。私はまず、相手の言葉をリスペクトすることを求めます。自分の考えと違い、納得できなかったとしても、相手の正当性を否定せず、まずは受け入れなさい、と」
            ダニエル バレンボエム氏のインタビューより



バレンボエムの録音は数多くの名演がありますが今日はベートーベンの
「悲愴」を。彼は綾ちゃんが熱愛するチェリスト
ジャクリーヌ デユ プレの夫でもあった人です。
綾ちゃんにとって彼は自分の亡き夫(?例えがオカシイ?)のごとく
愛すべき人物です。



今年も素晴らしい年でありますように。