2019年7月28日日曜日

サンダル



       小さな小さな女の子と大きな大きな病院に行った。


     この娘は重篤な病気の疑いがかかっていて今日はその再検査日。


     明らかに怖くて神経質そうなおばあさんのお医者さんが立ちはだかる。
     ニコリともせずさっ、こっちへ、、、ハイ、診察台に乗って!!


     綾ちゃんはできるだけ優しい言葉で通訳してあげるんだけど
     硬い雰囲気、張り詰めた緊張感は隠しようもない。大丈夫かなあ。
     泣き出しちゃったりしないかなあ。


     女の子は自分の肩の高さほどの診察台によいしょっとよじ登ろうとする。
     支えてあげようとした綾ちゃんたちの手を借りる直前にあっと気がついて
     脱ぎ捨てたサンダルをヒョイっと方向を変え綺麗に並べ直した。



       『ね、あなたたち、何国人なの?私たちにはアジアの人って
        区別つかないんだけど。』




        『Wir sind aus Japan! 私たちは日本人ですよ。』



       『すごいわ、すごいわ!こんなに小さな女の子がこんなにきちんと
       靴を揃えることを忘れないなんて!あなた方ってなんて素晴らしいの!』



      ひとりの小さな女の子のおかげで周りの私たちまで褒められちゃった。
      むっつり顔だったおばあちゃん女医さんはこの瞬間からニコニコ別人に。



      幸いなことにお嬢さんの病気は良性と判明、もうなんの心配もないって。




      海外に住む私たちは一人一人がザ!日本代表選手だもんね。
      何気ない所作にお里が知れる。彼女のお母様が普段きちんとした
      教育をしていらっしゃる様子が目に浮かぶようだ。

      Kちゃん、綾ちゃんたちみんなのお株をあげてくれてありがとう!



        

ところで今年も二男の高校(ギムナジウム)学期末サマーコンサートに
行ってきました!今年はニュー体育館の落成式を兼ねて。太鼓隊でスタート。


音楽に合わせて体操部の女の子たちがアクロバット!





これ、オリジナル曲!すっごいウケた。



今年はペスタロッチギムナジウム(偶然にも長男の出身校、音楽学校)と合同で
カルミナ・ブラーナに挑戦!まあ、学校オケだからとてもじゃないけど
上手とは言い難いけれどみんなで頑張った!




2019年7月22日月曜日

皆が集まる場所・裏切らない男


         今日はミュンヘンのビックイベントJAPANFEST!
       (日本では参議院選挙。皆さん、選挙行きましたか?)


   綾ちゃん今年は張り切って浴衣を新調。ちょっぴり楽しみにしていた。

             、、、なのにいいいいいいい!!!


           雨、雨、雨、朝起きたら雨ええええ・!!

    今日は午前中お仕事があるから雨が止むかどうか待ってから着物選べない!
   泣く泣く普段着で家を出ました。ああだけど会場に向かう頃にはニコニコお天気!
   綾ちゃんの前を歩くたくさんの和服の人々が羨ましーい。

                 

待ってました!日本人コーラス!「花」「黒田節」「島原の子守唄」
お歌大好き綾ちゃん、今年もうるうる。


楽しみにしていた日本人学校児童の「南中ソーラン」雨で中止でした。
ちょっと残念に思いながらポクポク歩き回っていたら

『吉岡サーン!!』

んん?あー!あれー!Kさあーん!

思わず30歳代独身男性とハグしてしまった。
あー!お久しぶりです!
Kさんはお仕事で今はミュンヘンを離れてらっしゃる。


『吉岡せんせーい!』

あー!Nさーん!Tさーん!Sちゃーん!Kちゃーん!
次々にハグ。



綾ちゃんはお仕事で知り合った大切な方々とここで再会。
嬉しい!嬉しい!

そして今年も楽しみなのは太鼓!和太鼓!黒龍太鼓!



綾ちゃん、実はTYCONIST TAKUYAさんの自称追っかけおばさんです。
TAKUYAさんは安定の実力と己を「魅せる」技の天才。

これまでなんども彼の演奏を聴いてきた。本番を観てきた。
今日の曲だって知っている。
だけど彼は「決して裏切らないオトコ」。ファンの期待を必ず超えてくれる。


ああ、それなのに、、、大太鼓のクライマックスを大粒の雨が引き裂いた!!

涙の演奏中止。ものすごい人だかりだったのに皆の残念なうめき声。
綾ちゃんの「あ〜!」の声も入っています。


真夏の夕立は恵みの雨。だけど今日はちょっと恨めしい。


2019年7月15日月曜日

レクイエム談議でぼーっとする



   『吉岡さん、今日も明るくお元気でいらっしゃるご様子ですけど
   その後いかがですの?もしかしてお母様亡くされた哀しみとまだ折り合い
   つけられないでいらっしゃるのではないの?』



         いきなり剛速球が飛んできて一瞬クラクラした。

            昨日の夕食会でのことである。




    綾ちゃんはご縁あって最近懇意になった奥様(ピアノ教師)のご招待で
   彼女のお嬢様とビアホールで語らっていた。音楽家のお嬢様はしかし、
   ここ数ヶ月大変手強い病気に罹り現在闘病中でいらっしゃる。
   お嬢様が外出困難なので市内では落ち合わず郊外にある彼女のご自宅近くの
   お店で治療(自然療法)の可能性や展望について伺っている最中だったのだ。


    まあ、綾ちゃんとしても心を偽ったり見栄を張ってもしようがないから
   正直に答えた。

   『お嬢様のご心配だけでいっぱいいっぱいでしょうに、私のことまで
   気にかけていただいてありがとうございます。あの、涙がですね、
   (ビアジョッキの縁に指をかけて)ここら辺でタプタプしてるんですけど
   不思議なもので溢れ出さないんです。母は急逝だったので皆が涙に
   くれたんですけどなぜか私は泣かなかったんです。思い切り泣けば
   スッキリするかもしれないんですが今はその時ではないらしく、とりあえず
   じっと待ってる感じなんです。』 
   

   すると奥様

   『わかるわー。あのね、私も母が死んだ時ものすごく時間がかかったのよ。』



   彼女の体験談をたくさん伺った。義理のご両親。実のご両親と可愛がっていた
   飼い犬の死の話。
   綾ちゃんはこんな話、誰ともしていなかったので一つ一つのエピソードが
   スコンスコンと腑に落ちていく。


   『今、私の叔父がね、もう90近くて余命いくばくもない病気なんだけど
   自分のお葬式の段取りをあれこれ差配し始めていて、ベト7をね、それも
   娘のオケの録音のやつ、これを必ず流してくれっていうのよ。』 


             ああ、ベト7(しち)!
     3人の頭にかの名曲(綾ちゃんはお嬢さんのCDわかんないから勝手に想像)
     がかかる。ぼうー、、、。



         綾ちゃんのアタマを横切ったのはクライバーの名演

        

     『でもね、私はお葬式なら絶対レクイエムよ。もちろんモーツアルト!』


      もうね、その場に居合わせた我々3人に言葉はいらない。
     3人でただぼーっとあの美しい音楽を頭に思い描いてはああーってため息。



            綾ちゃんのオススメはベームです。


       そういえば綾ちゃんも夫からレクイエムの遺言!されてたっけ。


     『実は私も夫に遺言されてました。フォーレのレクイエムかけてくれって』


        またしても沈黙。もうテレパシーだけの会話してるみたい。




          Pie Jesu(18:07)が涙なしには聴けないです。



       綾ちゃん?綾ちゃんはレクイエムなら何が好きなんだっけ?


    『あの、私は夫と一緒に初めて聴いた音楽がブラームスのドイツレクイエム
    で、しかもそれが大変な名演だったので忘れられない思い出の曲なんです。』


     そうだ、結婚前でクラシック音楽をほとんど聴かなかった頃のことで
    それでも大感激したんだった。



         あれは誰の演奏だったんだろう。もう思い出せない。


  レクイエムなんてどれも美しいに決まっている。死者の安息を願うミサなんだもの。


     昨日は3人ともこの話だけですっかりお腹いっぱいになってしまい
     夢見るように家路に着いた。互いの好みの音楽を語り合っただけなのに
     これほどの充足感があるとは。


        この世の中に音楽というものがあることにただ感謝したい。




     

2019年7月8日月曜日

裏ラベルの菊美人に酔いしれる福岡、ごちになりやした!


          もう少し福岡での出来事を書きますね。
          6月初旬は母の四十九日で再び福岡でした。


姉の見繕った仏壇。ピンク。



 ラッキーなことに暑くもなく雨も降らなかった。
綾ちゃんは一人残された父、
一人で途方に暮れる綾ちゃんパパのそばを離れられずに
いたのでほとんど家にずっといて遊び歩くということは
なかった。


          が、

グルメは堪能いたしました。これは主に綾ちゃん姉のおかげ。


     まず、リヨンの名店、ポール ボキュース
     福岡店に連れて行ってもらった。
     姉夫婦の結婚記念日のお祝いに父と
     (父を元気づけようと)綾ちゃんもご招待!
                     博多駅くうてんからのゴージャスな夜景を堪能しながら贅沢いたしました。



                                       
             いやあ、持つべきものは金持ちの姉。

      それから香港飲茶のフュージョン シノワ星期菜
    

 
    高級飲茶。中華だけどニッポン万歳!って叫びたくなる繊細なお料理でした。


ええーっと、精進落としのお店もグルメ姉が名店を選んでくれた。
お店の名前、ど忘れ!思い出したら加筆します!


 4月に綾ちゃんパパ、ママと最後に3人で行った大濠公園。もうほとんど歩けない
状態だったのでタクシーで行った。
そんな思い出を包み込むようにのどかで
美しく平和な公園です。
福岡城址の菖蒲

福岡城からの眺め 


そしてそして、これからが本題。
綾ちゃんは義理の兄(姉のご主人)のお勧めで福岡の地酒だけを
出すという日本酒バーに行ってきた。(←やっぱ遊んでる)

そこで出会ったのがジャーン!
これ、印刷ミスじゃなくってわざと裏返しに書かれたラベルの菊美人
書き手の署名が左脇にあるでしょう?


まさかの北原白秋直筆
                  無濾過、無加水、火入れ無しの特別純米酒。爽やかなのにどっしりと
    しっかり味のあるお酒でした。綾ちゃん、シアワセー!! 


          日本に帰ると誰もが綾ちゃんを歓待してくれます。
         これほど海外との距離がなくなったように見える昨今ですら
         人と人との思いやりは目減りすることがない。

            綾ちゃん姉夫婦よ!ごちになりやした!