2012年10月30日火曜日

ループスのおばあちゃんのこと 1⃣

 


 私が病院に勤め始めた頃、初めて来院してき
て今もずっと通い続けているおばあちゃんがいる。
ループスエリュトマトーデス(全身性紅斑性狼瘡)を
煩っている75歳のお年寄りだ。
 


 職場で最初、面食らったことのひとつは、
次々とものすごい難病の患者さんが訪れることだ。
西洋医学なら科が分かれているからそれなりに似たような病気の
方が来るのだろう。でもここは自然療法のプラクシス。
お年寄りも赤ちゃんも外科も内科も婦人科もなんでもござれだ。
しかも教科書の隅っこにしか載ってないような病気の人たちが来る。



 おばあちゃんに始めてあったのは、確か私が勤め始めた初日。
先生から「この方はループスだから」と言われたとき頭の中で
とっさに医学事典をめくった。膠原病、自己免疫不全、ええっと、
確か教科書には原因も不明なら治療法もステロイド
以外は対処療法のみって書いてなかったっけ?ええっ?わたし、
そんな大変な方の治療に関わるの?




 習い初めたばかりの指圧マッサージを施す。私のマッサージなんて
上手な訳ないのにあとで先生の前でものすごくほめてくれた。
そのときから彼女は週に2回づつ通ってくれて今では仲良しの
茶飲み友達のような間柄だ。お互いの人生も語り尽くした。




 でも病気は治らない。薬漬けのおばあちゃんの投薬量を
なんとかすこしずつ減らしつつあるのだけれど、大量のステロイドと
その副作用からくる降圧剤とインスリンと痛み止めのモルヒネ。
ほかにもいっぱい飲んでいる。この7ヶ月の治療でなんとか
モルヒネだけは外すことが出来たようだ。鍼を打った日はモルヒネが
いらないんだって。なんとか次の鍼の日まで関節の痛み
持ちこたえられるようになったって。




 けれど安堵する間もなく次の症状がおばあちゃんに襲いかかる。
がんばれ、おばあちゃん。


 ループスのおばあちゃんの話は長くなるので少しずつ暇を見つけながら
書いていきます。



2012年10月28日日曜日

吉岡綾子物語⓵  



  私は福岡県福岡市生まれ。



自営業を営む父母の二女として生まれました。
ぼんやりやさんで読書好き、中学生の頃、ドイツ好きの
文通相手に影響を受けてゲーテを読み始め、
大学ではドイツ文学を専攻しました。


 大学院生の頃、突然青天の霹靂のごとく、大学の交換留学生に
選ばれ(申し込んでもいなかったのに!)ミュンヒェン大学に
やってきました。
2年後に帰国したのですが就職で再びドイツへ来る事になりました。
あれは東京で地下鉄サリン事件があった年で新年が明けるとすぐに
今度は神戸の震災が起こり、『わたしが日本を離れたとたんこんな事に
なっちゃって、いったい日本はどうなっちゃうの。』と胸を痛めた事を
良く覚えています。それ以来20年近くがたってしまいました。
あれから結婚(夫は日本人です。)、子供が出来て、その子供たちが
思いもかけず体の弱い子たちで、一念発起で医学と自然療法の勉強を
ドイツ語で開始して、、、はあ、色々ありました。



 諸般の事情から、あれだけ必死で勉強したのに資格を取るチャンスを
ふいにしてしまい形としては何も残らなかった私の医療キャリアに
突然降って湧いた就職話。
二男がお世話になった中国人医師の病院(鍼と漢方)で先生の
アシスタントとしてお勤めをすることになりました。
3月末の採用だったので8ヶ月めという事になります。



 今はまだわからないことだらけですが日々の体験は涙あり笑いあり
感動やらあきれかえる事件満載です。

2012年10月27日土曜日

日本人なら中国大っ嫌い?

 

    土曜日でスーパーマーケットにデポジットの瓶を出しに行った。




 レジのおじちゃん(東洋人の顔?)が「あんたどっから来たの?」
と聞くから、「日本からです。」と答えた。




おじちゃん「お〜、日本人か。日本人なら中国大っ嫌いだよね。俺も大っ嫌い。」


私    「あの〜。失礼ですが、あなたはどちらからいらっしゃったんですか?」

おじちゃん「俺はベトナムだよ。俺たちはいつも中国には酷い目に遭わされてるんだ。
     一緒に中国なんかぶっ潰しちゃおうぜ!」



私    「ほほほほほ。」



 とほほだ。最近こんな事がしょっちゅう。




 私は中国人の職場で中国文化に囲まれて日々を過ごしている。ここ欧州でも日本と中国の関係が良くない事は周知の事実。先般の尖閣諸島問題に際しては日中問題解説委員のごとく患者さん一人一人に事件を説明していたものだ。




 けれど私はささやかでも異文化交流の端緒となればと願っている。


ブログを立ち上げる事にしたのは100%中国人のうちのドクターと
彼をとりまくこの環境で繰り広げられるドラマが毎日語りきれないほど
たくさんあるから。



 うちのプラクシスに来る患者さんたちの姿を中心に語っていきます。


なお、日本人の患者さんも数名いらっしゃいますが個人が特定されると
いけないので基本、彼らのことは書きません。
ドイツ人の方たちのことも名前を出すときは全て仮名とさせていただきます。