2020年6月25日木曜日

「一月」は誰の嘘?


      「一月」という名の珍しい名前の子供だった。ドイツ人だ。
     ドイツ語なら本当は「やっちゃん」だろうけど我々は勝手に
     「いっちゃん」と彼を呼んでいた。一(いち)月だからいっちゃん。

    お正月生まれで記念につけたのだという。ちなみに弟は「九月」くんだ。



    綾ちゃん長男の大親友でギムナジウム、つまり小学5年から
    高校3年まで同じクラス。常に息子とその家族である我々のそばにいた
    男の子だった。綾ちゃんはもちろんいっちゃんママパパとも仲良しだ。

    ドイツ人にしては控えめで人懐こく甘えん坊だった。優しい男の子だった。
    日本の大学に行きたいという長男と話し合って一緒にミュンヘン大学に
    進学するよう説得したのも彼だった。
     

    ミュンヘン大学はマンモス校だから理科系の我が息子と哲学に進学した彼とは
    自然と連絡も途絶えがちになる。
    のちに哲学科から日本学に籍を移したと聞いた時も不審を抱かなかった。
    日本の漫画が好きでうちの子と親友で高校時代から日本語の勉強を開始
    していた。我が家のタコ焼き機を長男に懇願されていっちゃんにプレゼント
    したのはいつのことだったろう?


            なぜ彼は逝ってしまったのだろう?


            いつ誘惑に負けてしまったのだろう?



    彼は「その」誘惑に溺れ始めた時、大親友のうちの息子を道ずれにしようとは
    しなかった。誰にも秘密を明かさなかったのだ。



    それはおそらく、小さな、小さな劣等感であったのかもしれない。
    埋め合わせるために、気晴らしになるならと軽い気持ちで足を踏み入れた?


    ドイツの大学は入学するは易く道のりは厳しい。ドロップアウトする方が
    普通といって過言ではない環境で少しずつ自分に負けていく。少しずつ
    ダメになっていく自分の未来をトレースする。
    気がつけば身も心も破滅へと向かいつつ誰にも告白できない自分の自尊心を
    呪う。自尊心に傷つく。

    この人生が続く限り、中毒患者として酩酊の中でだけ夢見ることを許され
    合間の地獄に現実を呪い自分が「そこ」へ堕ちてしまった脱落者なのだと
    自認し、いや自認できずに自傷行為を繰り返す。


       躁と鬱の高低バランスに心も身体ももはやついていけない。

    オレはダメなやつなのだとダメになっちまったと、たとえここから
    這い出たとしても「知れた人生」「汚名の人生」が見え隠れする。
    もともと賢い子だからこそ彼の想い描いていた「平凡な人生」との乖離に
    心かきむしられ自傷を繰り返す。


    
       そしてその日、彼は軽い酩酊の中で母親の胸の中に飛び込む。


               「お母さん!大好きだよ。」


    はらはらとなすすべもなく立ちすくむ母親に、大丈夫、僕は頑張るからねと
    愛している、ありがとうを繰り返した翌日の明け方に彼は自宅の庭で
    発見された。




                   21歳だ。


                   21歳だ。 
    



     
      この人生にはどんな意味があってそこから我々は何を学び取れというのか。

           綺麗事なら聞きたくない。誰か教えてくれ。

       「一月」の話は誰かの嘘なのだとお願いだから言ってくれ。









       







    



2020年6月20日土曜日

ぐるふりすいーつ



ここんとこ、綾ちゃんの周囲にはぐるふりびとが時々いる。
グルテンフリー=小麦粉抜きで生きてる人々だ。


体質改善のために2年とか期限を決めてトライしている方もいれば
アレルギーなどでやむなくその生活に入った人もいる。

     綾ちゃん自身はといえばグルテンフリーダイエットが流行なのは
     知っていたけれどその実体にはさして興味を持たなかった。

     グルテンそのものを排除するより精製食品(いわゆる白いもの=白砂糖、
食塩、小麦粉etc)回避に神経が回っていたからね。



それぞれが納得して始めた道かもしれないけれど
食生活に縛りを持って生きるのは結構しんどいだろうなと思う。


(ただの成り行きで)完全ヴィーガン生活を10年近く試み
現在もほぼミールフリーの生活をしている綾ちゃんにはなんとなく想像がつく。

綾ちゃんのお子様方も幼少期には凄まじいアトピーで
母親としての綾ちゃんもその昔、子供の食事には苦労したもんだ。

で、最近仲良しになったぐるふりさんにスイーツを持って行ったら
喜んでもらえたのでそれから調子に乗ってちょこちょこ作るようになった。


アップルパイ。パイ生地はベトナム春巻きの皮。

















これは以前にも紹介。豆腐抹茶ケーキ。
いずれも砂糖は最小限で黒糖のみ使用。でも結構、甘みは強く感じるよ。

綾ちゃんは出来合いのレシピには頼らず
オリジナルメニューを考案するのが好きなタイプ。よって失敗も多い。

出来るだけ計量も避けたい。
その日の天候、湿度や気分で材料と会話しながら
様子を見つつ配合を決めるのが好き。
神様とお話ししてるみたいなんだよ。



そしてオランジェットの完成!手作りはオレンジの香りが特別!
チョコはリンツのブラックチョコ、ほぼ無糖のやつなのになぜか甘い。
ぐるふりの友人にもご近所さんたちからも大好評でした!



最近の料理熱はやはりコロナの生んだ産物で
以前はスイーツを作る時間も余裕もなかった。
ぐるふりさんに「自分はコロナがあったからこそ今の時代を
生き抜くヒントを授かったんだよ」って言われてちょっぴり目が覚めたかも。

また、時々すいーつ持ってくね。


2020年6月12日金曜日

寒〜い日に寒〜い絵葉書

      

寒いぜ。


「羊の寒さ(Schafskälte)」だ。

6月聖体祭の時期に急に寒くなることをそういう。
この時期前に羊の毛を刈ると寒さで羊が凍えて死んでしまう。
「羊の寒さ」が過ぎるまでは種植えを待とう、
羊の毛を刈るのを待とう、というドイツの古くからの歳時語だ。


日本は梅雨の真夏日らしいが
こちらドイツの綾ちゃんちは今日は9度!9度だぜ!


骨身にこたえる。

実は綾ちゃん、昨日、仕事中に2歳の男の子と遊んで(←どんな仕事や!)
腰をぎっくりやらかしてしまった。
根性で平静を保って帰宅。安静の後、床に入ったが
今朝目が覚めたら起き上がれない!!


今朝のオンライン授業までにあらゆる手立てをして
またもや根性で授業、、、とほほ。
とにかく寒さがしみる。



     寒さに震える綾ちゃんのもとに千葉のみどりさんからお葉書が届いた。
        なんと南極大陸から2月に投函したお葉書とのこと!

       綾ちゃんとみどりさんとは親娘ほども年の離れた仲良し。
     去年、偶然ANAの機内で隣の席に座って気が合ってのお付き合い。


     
     このドイツより寒い国があるなんて信じられない!ぶるぶるぶる。


         ああ、でもこの氷の世界のブルーとホワイト、圧巻!






暑くなればなったで暑さも苦手なワガママ綾ちゃん。

         
        綾ちゃん、とにかくお大事に。





      

   モーツアルトのグランパルティータ、アダージオ。ペットで吹くのは初めてみた。
     これすごーい!大好きなこの曲、ペットでも美しくて全然違和感ない。





2020年6月6日土曜日

ROKUYONで今夜も眠れない 




           目が覚めたら今日はROKUYONだった。

        虎ノ門ニュースをつけたら石平さんが泣いていた。



     今朝5時前に生徒さんからLINEが入って、なぜだか昨晩眠れなくて
     あとで仕事に支障をきたすから今日の授業は無しにしてくれと
     メッセージが入っていた。彼は夜のお仕事の人だから(←誤解アリ!
     超優秀な音楽家)せっかく再開したばかりの仕事の質を落とせない。


     
     綾ちゃんもそういえば一昨日はなんだか寝付けなくてぐちゃぐちゃ
     考え事してたら夜が明けちゃってそのあと一日仕事がしんどかった。
               運動不足のせいかな。

            「先生、それって満月のせいですよ!」




     え、そうなの?ROKUYONに想いを馳せてここんところの世相を
   憂えていたせいかと思いきや意外なウロコが目から落ちた。コンタクトレンズ?


     
      「ね、だったら先生、満月の今日こそお花摘みしましょう!   
      花々にエネルギーが満ち溢れていますよ。」



               どんな展開やねん。


     そういえば満月だ。綾ちゃんの寝室は屋根裏ぽく壁が斜めに傾いていて
    天窓から眩しいほどの夜空が綺麗に浮かぶ。(←無精でカーテン付けてない)



     綾ちゃんちのホルンダーは白く白く満開で幸せの芳香が煌めき立ち上る。
     バッチのフラワーレメディーの一種類でもあるホルンダー。
     花の精は満月の夜にこそエネルギーの最超を迎える。今こそ魔女になろう! 





このお花摘みました。胸がすうっとする綺麗な香り。

今年はいつものシロップだけじゃなく
魔女のフラワーテイーにも挑戦しよう。媚薬となるか?



  


満月の夜に御誂え向き?な一曲かも。

2020年6月1日月曜日

にらめっこ①




オンライン授業始めて早や2ヶ月以上が過ぎた。



なんの丹精もしていない鉄仙(クレマチス)とホルンダー。
毎年庭で勝手に見事に咲いてくれる。



オンライン授業に関しては以前から開講すべきか迷いがあり
訪問の現状が上手くいっているという事情もあり手をつけずにいた。


今回の武漢コロナ騒動で止むを得ず準備もなく走り始めたオンライン。
実際に始めてみて感じたこと、書き留めてみようかな。


1 カラダに良くない

何をいまさら!だけど、これ最近誰も言わない。
もう仕方ないから目に悪いだの波長がどうだの言っても
しゃーない状態なんだろうな。毎日モニターとのにらめっこ。


綾ちゃん的に一番マズイのは画面に顔を入れようとつい意識してしまって
姿勢がカタマってしまうことだな。


これまでのリアル授業よりはるかに筋肉の疲労度が大きい。
しかもこれまでと違って立て続けに授業できる分
無理な姿勢続けちゃって全部終わった時の疲労度半端ない。
「動かない」ことがいかに身体を消耗させるか、、、。

どんな職業にも職業の求める姿勢や筋肉や神経に特有の緊張があるから
自分で工夫して改善せねばならんな。


綾ちゃんは今回のオンラインがあくまで一時的なものと思っていたせいで
きちんと環境を吟味せずにいたけれどどう考えても現状は継続する。
椅子や机から考え直さねばこのままではカラダを壊しそうだ。



2 集中力がハンパない


良くも悪くもある。

もともと綾ちゃんのリアルの生徒さんで、今回オンライン授業に
名乗りをあげた生徒さんは「名乗りをあげた」時点で既に熱心な方々だ。

進む、進む。

個人レッスンだから綾ちゃんの生徒さんに「落ちこぼれ」は存在しない。
通常の語学コースよりも進度が遅い分、パーフェクトゲーム。

綾ちゃんも調べ物が即座にできるので効率が良い。
一人一人に個別の復習メニューを即座に作ってその日のうちにお届けできる。

おそらく現在オンラインの生徒さんは(綾ちゃんの見立てだが)
皆さん、むしろ現状に満足なさってリアルに復帰する意志が無いようにすら
見受けられる。いいのかな、これで本当に。


3 リアルでしか伝わらないもの


外出制限が終わって待ってましたとリアルの授業も再開した。
ほんのわずかの生徒さんだけれど。

オンラインでは無理がある方々だ。事情はそれぞれ。
彼らこそ(「事情」があるからこそ)砂漠の雨のように
学習内容を吸い込んでくれるしナマでしか伝わらない
手触りを享受してくれている。

綾ちゃんはやはりリアルの方が向いてるんだろうな。


オンラインについてはもう少し思いつくまま
ここまでの現状を述べていくことにしよう。




ずっとおうち生活の綾ちゃんはお料理熱ハンパない。
先日テールシチューに挑戦!大成功!
自分ではお肉食べないんだけど喜んで食べてくれる
家族がいるってやっぱりいいな。