主人公が死ぬ物語は大体お話の最初から読者に死ぬと見抜かれている。
こういうのは個人的にはお腹いっぱいなんだけど「死」というテーマが
読者の心を揺さぶる定石中の定石だからこのパターンが止むことはない。
「四月の嘘」も可愛い女の子が悟っていたり頑張る自分探しの男の子とか
出てきて胸にキュンとくるセリフもいっぱいある。涙する読者も多いだろう。
だけど背景に描かれる音楽の世界は、音楽を愛する綾ちゃんの目に
嘘ぽすぎてどうもいけない。
こんなことマジメに書き出す綾ちゃんの方が大人気ないのかな。
スポ根や音楽ネタに天才キャラはつきもので、のだめも千秋も現実には
存在し得ないいかにも漫画キャラ。ではかをりと公正のような天才キャラと
どこがどう違うのか。「四月の嘘」に出てくる二人の天才はバックに
抱える十字架と彼らを彩る音楽の世界が嘘ぽいからだと綾ちゃんは思っている。
公正はピアノの神童でかつて「ヒューマンメトロノーム」と呼ばれた。
もうここから絶対に嘘だと思ってしまう。これは音楽モノにありがちな
大誤解。メトロノームのようにしか音楽ができない奴はたとえ
年少さんでも大会で優勝しないしそもそもそんな音楽は評価されない。
子供なのに大きな大会で優勝するような音楽家は聴衆を巻き込むような
音楽性と魅力をすでに備えている。それがなければ優勝なんかしない。
作者は子供の音楽のコンクールというものに行ったことがない人だ。
綾ちゃんは音楽に(音楽だけじゃないけど、何かに)一生懸命な人を
いつも応援していて、だからこういう、すっ飛ばしちゃいけないデイテールを
安直な価値観で語ろうとする場面に出くわしてしまうと、つい、反論したく
なってしまう。
大ヒット作だから綾ちゃんの違和感の方が少数派なんだろうけどね。
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