暖冬といふ夜の静寂(しじま)を深くして
沈丁花(じんちょうげ)の香りと知るまでの闇
第73回太宰府梅まつり短歌大会第1席
村山安義
91歳の綾ちゃんパパは今年のお正月
たった一人で太宰府まで足を運んで
歌を詠んできた。腕に覚えのある人
だから自信もあったのだろう。
堂々の一席を獲得して帰ってきた。
香り高い沈丁花の歌だった。
「芍薬(しゃくやく)の花の、今年も庭に
咲いたったい。それがまた今年もそりゃあ見事たい。」
「この花の咲いたらもう、去年のあの日のことば
思い出してねえ。あげん綺麗に咲いて。」
美しい花の季節に逝くことができて、それはそれで幸せな人生と言える。
綾ちゃんママの最期の日のことは、彼女を識る人たちの心の中で
伝説になって思い継がれるだろう。
綾ちゃんもきっと何度でも語るだろう、
母は見事な芍薬の花見をした後でぽっくりと彼岸(あちら)へ
旅立ってしまったのだと。
あれから一年、ちょうど一年経った。
今年は一周忌に顔すら見せられんでごめんなさい。
おかあしゃま、花ば、花のかほりばたてまつる。
この歌が大好きだった母へ
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