帰ってきた。
長い長い夏休みは綾ちゃんにとって大きな転換となる冒険で
どうしてあの様な興奮に包まれていたのか。
綾ちゃんの一番落ち着ける場所、おうちに帰ってタメ息をひとつつくと
全てが夢のようで綾ちゃんは結局浦島綾ちゃんだったのだと気がついた。
そしておうちに帰って再会した。私の恋人。
綾ちゃんの大切なベヒシュタイン
福岡の実家には、かつて昔綾ちゃんが幼い頃弾いていたヤマハの
アップライトがある。この夏毎日弾いていた。
鍵盤が重くて一音出ないキーがある。
以前は帰省のたびに調律をお願いしていたけれど(子供が弾くからね)
綾ちゃん一人ならその必要もない。
鍵盤は重くてずっしりと。暑くて湿気に満ちた空気を震わせる。
不思議なもので違和感だらけの重いキーも毎日弾いていると指が慣れて
「その音」が普通に思えてくる。これってちょっとした浮気かな?
けれどうちに帰って再会するたびに決まってやっぱり惚れ直す。
なんという軽いキー!天国に届くような倍音。綾ちゃんが思うよりも
もっと幅広く「想い」を伝えてくれる表現力の豊かさ!
なーんてね、ピアニストぶってエラそうだけど
綾ちゃんのピアノなんて本当は聴けたもんじゃない
ド下手もド下手。でもいいんだ。この喜びは何事にも代えがたい。
ただいま、おうち。
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