2019年10月31日木曜日

あれから時は流れて、、そしてヴァルハラ


              あれから時は流れて、、、


     くみちゃんは福岡では有名な進学校を経て東京の有名大学ヘ進学した。
              もちろんドイツ語専攻で。


   綾ちゃんはくみちゃんとは異なる私立の女子高に進学して地元の大学ヘ行った。
    つまり綾ちゃんとくみちゃんの人生航路がクロスすることはなかった。
    綾ちゃんはと言うとくみちゃんほど華やかな志を持つことはなかったが、
    くみちゃんと出逢わなければ興味を持つことは無かったかもしれない
               一冊の本を手に取った。
         中学生としてはとても早熟だったかもしれない。


          

              
             そう、この手塚富雄先生の名訳
      (手塚先生はなんと綾ちゃんとお誕生日が同じ日です!すごい偶然!)

            この一冊が綾ちゃんの進路を決めた。
       ドイツ語をぺらぺら喋っているカッコイイ自分は想像出来なかったが
   ドイツ語の文学書に埋もれてオタクと化している自分なら容易に想像出来た。




      くみちゃんが東京に行ったあと、どんな人生を歩んだのか
               綾ちゃんは全く知らない。
  風の便りに、幸せな結婚をして東京に暮らしているらしいとは聞いた事がある。



      ドイツにもドイツ語にも全く興味の無かった綾ちゃんが
     もう20年以上もドイツに暮らし、くみちゃんが東京にいるなんて、
        どうしてこんなことになっちゃったんだろう?


           

                ヴァルハラ神殿
         ユリウスとクラウスが謎の刺客から逃れ身を隠した。
       

2019年10月26日土曜日

ケプラー記念碑と「皇帝」



ベートーベンピアノ協奏曲第5番
       「皇帝」は   
    綾ちゃんにとって特別な一曲。


   だってなんたってあの「オル窓」の
       クライマックス


    演奏する場を奪われたイザークが
     レーゲンスブルク管弦楽団と
    野外コンサートを行った演目。
       

  その演奏を行ったのがこのケプラー記念碑。
   レーゲンスブルク中央駅の真ん前でした!


        秋の日差しの中、
     あの情景が蘇りそうな美しさ!
  イザークのピアノの音色がこぼれてきそう。





ヴィルヘルム バックハウスは「オル窓」の物語にも実名で登場する。
のちにウイーンでシェーンベルクの弟子となるイザークの
心の師。少しばかり古式ゆかしい演奏ですが
現代のピアニストたちが出すことのない色々な「音」が聴こえてくる。






イザークの妹、フリデリーケが兄のために祈りを捧げていた教会




クラウスが故国を想いながらうたた寝をしていたドナウの河岸





2019年10月20日日曜日

オル窓の舞台、レーゲンスブルク

     ドイツに来たら必ず訪れて欲しい街は数多い。中でもここは特別。



     少女漫画の古典名作、オルフェウスの窓の舞台、レーゲンスブルクだ。

               


         恋に憧れるお年頃のくみちゃんがハマりまくっていた。
      (私が読んだのはドイツに来て何年も経ってから。2000年過ぎてた!
          なぜこの超名作をあの頃読まなかったのだろう!)


           時は日露戦争前夜のドイツ、レーゲンスブルク。
      ここの寄宿制音楽学校(トウルン ウント タクシス公居がモデル)にある
          悲恋伝説の「オルフェウスの窓」で3人の男女が出逢う。

            
伝説の窓


      遺産相続の犠牲となり男性の振りをする運命に悩む美女、ユリウス。
       彼女を狂おしく想いながら貧困に喘ぐ天才ピアニスト、イザーク。
      ユリウスへの愛を心に秘めロシア革命に突き進む潜伏貴族クラウス。

         3人の青春を育むレーゲンスブルク(第一部)、
         第二部の舞台はウイーンへ。イザークのピアニスト生涯、
         第三部セント ペテルブルクのロシア革命、
        そして嵐過ぎ去りし後のレーゲンスブルク再び(第四部)。

            全ての運命が悲劇の終末を迎える。(ネタバレ?すまん!)

            中でも第一部レーゲンスブルク編は圧巻!


    ユリウスが女性であったと識った時にイザークが感じる運命の調べ。
    
    ケプラー記念碑でイザークがレーゲンスブルク楽団と演奏した「皇帝」。

    血の繋がらぬ妹フリーデリケの兄への秘恋と献身ゆえの死。

    ユリウスの母とかつての恋人ヴィルクリヒの再会そして悲劇の選択。
    
    殺人にまで至る狂気の遺産相続の果てにユリウスの出した決意。
    
   
    どのエピソードを採っても震えが来るほど感動的!そして誰もが「愛」を
    胸に秘めている。その「愛」ゆえに道を誤ったり不思議な力を漲らせたり、、
 しかし至るところに散りばめられるあらゆる種類の恋愛がどれ一つとして実らない。

    ギリシア悲劇すら彷彿とさせる悲恋というものをどこまでも掘り下げた作品。


    しかし絶望の果てにユリウスは己の「愛」だけを頼りにロシアへ旅立つ。




             あああーん!やはり少女漫画決定版!!

                 不朽の名作ですう!!





2019年10月17日木曜日

くみちゃんの壮大なる夢


             その娘の名前はくみちゃん。

         綾ちゃんの人生に決定的な影響を与えた友人の名だ。

        私達は異なる中学に通う中学2年生でひょんなことから
          共通の友人を介して「文通」をしていた。
         メールもネットも無い時代のお話だ。昭和だね。


           普通に地味に中学生活を送っていた綾ちゃんにとって
        くみちゃんのココロと告白はあまりにもオトナでカッコ良すぎた!
     (実物の彼女は当時の綾ちゃんよりもっと大人しくて無口な娘だったらしい)
     
       『私は将来、世界中を渡り歩くキャリアウーマンになるの!
  普通の奥さんにだけはならない!外交官とか国際弁護士とか同時通訳になりたい!』


                 『当面の目標は高校に入学したらアメリカに
      高校生留学すること!』
   
     『でも本当に憧れているのはドイツ!
        ドイツには必ず行くの!
      私、大学はドイツ語専攻のある大学に
            行きたい!』


    綾ちゃんはといえば、なんとなく地元の学校を出て(英文科とか?)
    普通に結婚して幸せな家庭を持ちたいとかささやかな夢見るヒトだった。


   幸せな家庭を持つことに価値が無いとは当時も今も1ミリも考えていない、が、
 くみちゃんの燃える若さと比較すると綾ちゃんのココロザシはあまりにも
          自分の力量に見切りをつけたものだった。


      彼女がドイツ!ドイツ!と騒ぎ立てるのには一つ重大な書物があった。


              その本の舞台であったのが、、、



この美しく由緒ある街

なかなか行き先を明かしませんね。ここどこでしょう?



2019年10月14日月曜日

ジーンズがぶかぶかで



         一年半ぶりくらいにジーンズというものに足を入れたら
     ぶかぶかで笑った。スニーカーはぶかぶかじゃなかった。当たり前か。

               
 中指丸々分ぶかぶか



赤のパーカーに袖を通したのは実に2年ぶりのことで
ポッケに手を入れたら英国庭園のビアガーデンの
デポジットコインが出てきて今度は何だか涙が出た。



         情緒不安定かも。

                     




  昨日はつまんないことで気持ちが塞いでしまい
  「アガンなくて」四苦八苦したっけ。



      綾ちゃんたらジーンズ履かなかったって山登りも遠足も
             してなかったってことじゃん!
      体格が変化していたことにも気づいてなかったんだ。


           立ち直りの早い綾ちゃんは本日6時に目覚めて

                  よっしゃー!

      と家を飛び出した。お子様方はすやすやお休み。プチ家出!
            一人だから「家出」がぴったり。


   夫がいたら「夜逃げ(いや朝逃げ)」だし、男トモダチなら「駆け落ち」になるし
   女トモダチだとただの「遠足」になる(そうか???)から
   やっぱり「家出」という響きが心地よい。


          さて、綾ちゃんはどこへでかけたのでしょう?


         綾ちゃんね、ミュンヘンから2時間もかければ行ける街。
        綾ちゃんにとって超重大な意味を持っている街を訪れたのです!


2019年10月13日日曜日

曇天に頬杖をついて


              ああ、空がとっても低い!
    

     
あの建物の屋上に駆け上がって大きな大きなハシゴを空に架けよう!


そしたらどんより淀んで汚れた雲の裏側を垣間見ることが出来る。

 うす暗いベールに覆われた空の向こうに
んな愛おしい夢が隠されているのか覗き見出来る。




            オクトーバーフェストが終わったあとの
      10月と11月のこの空の色!誰も寄せ付けない空気の切れ味!




       或いは今という季節がこの国で最も美しい季節なのかもしれない。



      曇り空が美しいのは次に来たるべき季節への憧れを隠しているからだ。





     そこには人恋しい暖炉の暖かさに人を導く雲の息吹がある(北風と太陽!)。





        夕方になればこんな風に夢の中身を垣間見させてくれる。
               パステルカラーが艶っぽい。




                    真夏の果実 by URU


        曇天を眺めながらため息をついているかもしれないあなたへ。
                 この曲を贈ります。



2019年10月7日月曜日

正解の無い答え⑤〜晩夏のピアノ

 
         『僕らの世界には正解ってものがないんです。』



      遠くを見ながらその人が綾ちゃんに言った。最近知り合った
     新進気鋭のヴァイオリニストさんとおしゃべりしていた時の言葉だ。



              軽いデジャヴュに襲われる。
         あれ、この言葉つい最近聞いたような。しかも何度も。



         そうだ、ロルフィングだ。セッションの時に聞いた言葉だ。




       夏が過ぎ去っていつの間にやら綾ちゃんの情緒も外側の身体も
     何だか妥協点を見出したのか上手くやっていた。絶好調といってもいい。


        「夏」が全ての鍵だと識っていた。日本の夏。暑い熱い夏。
     この夏、色んな事があった。(なぜいつも前もって理解っているのだろう?
     この予感はどこから来るのだろう?)たくさん泣いたし感動したり癒されたり
               ちょっぴりイタイ思いもした。


                  ピアノも弾いた。



     実は綾ちゃん、病院勤務時代に指を痛めて鍵盤を押さえただけで
     激痛が走る状態だった。壊れてしまった指はもう元に戻らない。
    もう二度とピアノを弾くことは無いと勝手に諦めていた指を治してくれたのも


                ロルフィングだった。


               
        この曲練習してました!シューマンの「最初の悲しみ」
        ちなみに綾ちゃん、超初心者です!譜読みもアヤシイ。


       母の死に端を発する混乱とピアノの練習が出来るようになった
          タイミングが重なったのはもはや啓示だと感じた。
            どちらもロルフィングが起こした奇跡だ。
             だから心を込めてピアノの練習をして
         母の仏壇に聴かせようと決心した。自己満足で構わない。


     そうすれば夏の終わりに自分だけの解答を出せるような気がしていた。
    そうして得られた自分の姿がどんな形であれば正解だというのか
                結局自分でも理解らない。
      
    仏間と昔綾ちゃんが自室にしていたヤマハのある座敷は一続きになっていて
              そこで一心にピアノを弾いた。
                  そしてその後、、、
    とにかくもう亡霊は追ってこないし母との想い出も小さくたたんでポケットに
    しまえるようになっていた。


     ロルフィングが綾ちゃんの母との死別の悲しみを癒やした訳ではない
          傷を癒やしたのも立ち直ったのも自分だけの力だ
             そこを勘違いしたりしてはいない。


           ただ、その大きな契機にあったのはこの療法で
           今となっては綾ちゃんは出逢うべくして出逢った、
              運命だったとさえ思っている。

   そうやって心の芯にぶち当たる療法は本物で身体に働きかけ心も成長させる。



     このあと次のロルフィングのセッションで何が起こるのか?
     おそらく来年の春までには続きのレポートをするつもり。乞うご期待、です。




施術者の木村義朗氏のHPはこちら
音楽家のパフォーマンスアップがご専門の方ですが
もちろんそれ以外の方もウエルカムだそうです。

2019年10月4日金曜日

決壊④〜統合へのステップ



『お父様が入院しました。』


福岡から綾ちゃん姉のLINEが入った瞬間にそれは始まった。



   綾ちゃんはドイツ語の授業終わりで荷物をまとめて
      退出しようとしていた矢先だった。


         目の前が真っ暗になった様に感じたがそれはほんの
       1秒ほどだったらしく世界は一瞬前と何ら変化していなかった。
         ただし綾ちゃんの体調は激変していた。震えが止まらない。
          歯が噛み合わないから言葉を発する事が出来ない。
      真夏日なのに寒くて仕方がない。外に出たら涙が止まらなくて困った。
        どこか休憩できるところはないかと辺りを探すも虚しく、
        とりあえず地下鉄のベンチで心を落ち着けるべく努力した。


綾ちゃんパパは90歳で(綾ちゃんはかなり遅くに生まれた娘だ)現在身体障害者手帳を
持つ身の上。綾ちゃんパパもこの年末緊急搬送されてあの時も慌てて飛行機に
飛び乗ったっけ。ここ半年間、度重なるアクシデントで月一ペースで福岡に帰っていた。
     今更入院したくらいでショックを受けるような情報でもない。


           自分で分かっていた。ショックの理由が。

  母を亡くした。4月のことだ。綾ちゃんは母親の死去のショックを思い切り
 引きずっていた。世の中にはもっともっと辛い想いを耐え忍んで明かるく日々を
 過ごす人々で溢れかえっている。こんなおばさんになってしまった綾ちゃんが
 一人暗く落ち込むなんてあり得ない!ドイツに帰れば綾ちゃんを待ち構える
 たくさんの仕事に忙殺されていつしか悲しみも薄れるだろうとタカをくくっていたのに
母親との思い出が綾ちゃんのインナーチャイルドになって亡霊のように迫ってくる。
どうしたらこの問題と決着をつけられるのか途方に暮れていた矢先だったのに、、、
       この上父まで失くすことになるの、、、?


         自分で分かっていた。この動揺の具体的な契機が。
     自然療法に携わったことのある人ならば識っていると思う。
     治療がもっとも深部に響いた時に起こる精神の揺さぶり。
     綾ちゃんはこれを身を以て体験したのは初めてだったけれど
     疑う余地なくすぐに理解した。


               ロルフィングだ。
    心と身体のアンバランスが落ち着く場所を探してとうとう決壊したんだ。


           つい先日、見事に整えてもらった表層筋。
          その中で塒(とぐろ)を巻いていた深い悲しみ。
         死の悲しみというより母と過ごした全ての時間の寂哀。
    ロルフィングのセッションなど受けなくても遅かれ早かれやってきたであろう
         心の決壊が実に極め付けのタイミングでやってきた。


     こんなに早いタイミングで心にまでやってきたのか、ロルフィング!


重ねて言うが誤解しないでほしい。おそらく綾ちゃんはロルフィング療法と相性というか
感度が良すぎたのだと思う。ほとんどの人は綾ちゃんのようなことにはならないはずだ。3度目のセッションの後あまりの体調の良さと裏腹にこうなる予感がしていたし、こうならなければ綾ちゃんの心と身体のバランスは統合のチャンスを見出せなかったはずだ。



      そして全身の震えを伴うショック症状はは5日間にも渡って続いた。





施術者の木村義朗(よしお)氏のH Pはこちら