福岡から綾ちゃん姉のLINEが入った瞬間にそれは始まった。
綾ちゃんはドイツ語の授業終わりで荷物をまとめて
退出しようとしていた矢先だった。
目の前が真っ暗になった様に感じたがそれはほんの
1秒ほどだったらしく世界は一瞬前と何ら変化していなかった。
ただし綾ちゃんの体調は激変していた。震えが止まらない。
歯が噛み合わないから言葉を発する事が出来ない。
真夏日なのに寒くて仕方がない。外に出たら涙が止まらなくて困った。
どこか休憩できるところはないかと辺りを探すも虚しく、
とりあえず地下鉄のベンチで心を落ち着けるべく努力した。
綾ちゃんパパは90歳で(綾ちゃんはかなり遅くに生まれた娘だ)現在身体障害者手帳を
持つ身の上。綾ちゃんパパもこの年末緊急搬送されてあの時も慌てて飛行機に
飛び乗ったっけ。ここ半年間、度重なるアクシデントで月一ペースで福岡に帰っていた。
今更入院したくらいでショックを受けるような情報でもない。
自分で分かっていた。ショックの理由が。
母を亡くした。4月のことだ。綾ちゃんは母親の死去のショックを思い切り
引きずっていた。世の中にはもっともっと辛い想いを耐え忍んで明かるく日々を
過ごす人々で溢れかえっている。こんなおばさんになってしまった綾ちゃんが
一人暗く落ち込むなんてあり得ない!ドイツに帰れば綾ちゃんを待ち構える
たくさんの仕事に忙殺されていつしか悲しみも薄れるだろうとタカをくくっていたのに
母親との思い出が綾ちゃんのインナーチャイルドになって亡霊のように迫ってくる。
どうしたらこの問題と決着をつけられるのか途方に暮れていた矢先だったのに、、、
この上父まで失くすことになるの、、、?
自分で分かっていた。この動揺の具体的な契機が。
自然療法に携わったことのある人ならば識っていると思う。
治療がもっとも深部に響いた時に起こる精神の揺さぶり。
綾ちゃんはこれを身を以て体験したのは初めてだったけれど
疑う余地なくすぐに理解した。
ロルフィングだ。
心と身体のアンバランスが落ち着く場所を探してとうとう決壊したんだ。
つい先日、見事に整えてもらった表層筋。
その中で塒(とぐろ)を巻いていた深い悲しみ。
死の悲しみというより母と過ごした全ての時間の寂哀。
ロルフィングのセッションなど受けなくても遅かれ早かれやってきたであろう
心の決壊が実に極め付けのタイミングでやってきた。
こんなに早いタイミングで心にまでやってきたのか、ロルフィング!
重ねて言うが誤解しないでほしい。おそらく綾ちゃんはロルフィング療法と相性というか
感度が良すぎたのだと思う。ほとんどの人は綾ちゃんのようなことにはならないはずだ。3度目のセッションの後あまりの体調の良さと裏腹にこうなる予感がしていたし、こうならなければ綾ちゃんの心と身体のバランスは統合のチャンスを見出せなかったはずだ。
そして全身の震えを伴うショック症状はは5日間にも渡って続いた。
施術者の木村義朗(よしお)氏のH Pはこちら
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