2014年1月30日木曜日

眠りたいの。  その2







       『だからあ、もう、絶対、絶対、やめてやる!
       もう二度とここには来ませんって言いに来ただけなんだからあ!
       ああ、ああ、あああ〜!!』





 凄まじい雄叫び。これだけのことを一気にまくしたてた後、その女性は
恥も外聞も無くわあわあ泣き始めた。




 昨日初診で訪れたラインさん(仮名)。ハタから見るとぎょっとする光景だけど
さすがに綾子さん、もうこのくらいのことではたじろがない。




 昨日、彼女は不眠治療のために来院。大手銀行にお勤めのキャリアウーマン。
ものすごく明るくてとにかくよくしゃべった。というより沈黙を恐れるかのごとく
しゃべり通しだった。ものすごいハイテンションで。
だがカルテを見ると彼女は問診の際、ドクターに「鬱」の悩みを語っている。




       そう、「躁」と「鬱」とは表裏一体だ。
       彼女は自らその証左となっている。





 昨日の彼女は延々と仕事の大変さ、ストレスから不眠症になったこと、
どれほど彼女がうちの治療に期待しているかを語っていた。





      『全て裏切られたわ。昨晩はいつもよりもっと目が冴えて
      胸はどきどき頭はがんがん。アシスタントの彼女の(ひやっ!!)
      指圧を受けた部分はトラックで何度も轢かれるみたいに
      繰り返し痛むし不安はつのるばかり。鍼が悪いのかお灸のせいか
      漢方薬もひどい味だし指圧も最悪。』




 もちろん、綾ちゃんは(当然ドクターも)知ってる、判ってる。今、彼女が
どういう状態にいるのか。彼女のケースではおそらく避けては通れない道筋なんだ。
もちろん彼女は治る。お墨付きだ。




     さあて、でもどんな風に彼女と接していくかな?




      

本文と関係ないですけど
今、この本読んでます。
前作の「さよならドビュッシー」も力作でしたね。













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