2013年4月30日火曜日
南の島から来た彼女 ⑫
『査定」から2週間後の日曜日、リードさんの「講習会」の日がやってきた。
私は日曜出勤だ。(家族はぶうぶう言っていた。そりゃそうだ。)講習会のタイトルは「利益を上げるための病院経営のノウハウ」。
私たちはドイツのスタンダード、理想的なドイツの病院のあり方というものを習った。
とにかくマニュアルだ。プロフェッショナルであるためにチームカラーをまず決める。
うちのロゴは白と青で陰陽のマークなので青で全てを統一すべきだという事になった。
それにあわせてステーショナリーは全て青で統一すべきで患者さん用のボールペンも
うちのネームの入ったものを特注しなければいけない。ファイルも(白だったのだが)
白は汚れが目立つのでこれも青に統一すべき。カードも内装も全て病院らしいもので
モノトーンに改装しなければならない。チープな印象を与えてはならない。時計は先生の
奥様が大型店で買ってきたものをそれぞれの治療室に置いているのだがこれもきちんと
色やデザインのシックなもので買いそろえるべき。これらは彼女の会社の関連会社が全て請け負ってくれる。ちょっとちょっと、聞けば聞くほどめっちゃお金がかかる事だらけ。
そんなことしてピカピカの実務的な病院作り上げてどうするの?
(つづく)
これが陰陽のマーク。うちのロゴは白と青
2013年4月28日日曜日
南の島から来た彼女 ⑪
リードさんは医療アドヴァイザーとしてプロっぽく様々な視点から
うちの病院をチェックしていった。
患者さんにお願いする治療後のサイン。ボールペンは何を使っているか。
私の髪型、お化粧、服装。お掃除の状況。電話の応対。治療のあれこれ。
病院の内装。彼女は私を改めて上から下までじっくり眺めて
『うん、OK。髪はさっぱり結い上げて化粧は薄化粧。チャイナ白衣は清潔っと。
あと • • • あえていうならマスカラでもつけると理想的かも。』
余計なお世話だ〜!何で私が職場で仕事するのにマスカラがいるんだ〜!!っと心で
毒づく私。まあいいや。全体としてはOKだったわけだから。
だけど研修のお代は約90万円では済まないようだ。彼女はうちの受付が小さくて良くないと
言い出した。確かにうちの受付は小さめで質素なもの。スタッフも一人しか座る事が出来ないからみんなで仕事の優先順位ごとに順番に座っている。そこで彼女が奨めた
受付セットは巨大で真っ白。これってまるでドイツの歯医者さんみたい。
これが病院としては「ベスト」だからって。
ちょっと、ちょっと、これって危険なんじゃない?でもドクターはすっかりその気になっている。ものすごい金額だし、第一この受付セットってものすごく大きくて受付ロビー
の全てを占めちゃって患者さんのスペースがすごく狭まっちゃうよ。
このシチュエーションってある意味ピンチじゃないの?
(つづく)
これが典型的な病院の受付?私はうちの病院にこんなのやだあ。
2013年4月27日土曜日
南の島から来た彼女 ⑩
そして今日は「査定(?)」の日。
リードさんが白衣を着て現れた。彼女はうちのドクターの同僚の女医として
(嘘つき!)治療の場に同席し病院の午前中の流れをチェックし様々な角度から
評点をつける。
そして今日トップバッターの患者さんはホーノルさんだった。まずは私の指圧から。
本当はリードさんは指圧そのものは私からの施術を何度も受けていてもう、知りすぎるほど知っている。彼女はホーノルさんに自分は女医だと自己紹介して、まあ、偉そうに生活指導だとか食事指導だとかヒーリングミュージックのCDを買えだとかいけしゃあしゃあとこちらが頼んでもいないアドヴァイスをする。しかも漢方とは何の関係もない事だらけだ。クリップボードを抱えて色々と書き込んでいるけれどそれらは私たちスタッフの
評点となるものだ。
もちろんホーノルさんは微塵の疑いも持っていない。気のいい彼女はリードさんとも
気さくに健康相談の会話をする。
『うわわわ〜!違うんですう〜!あの人は医者でも何でも無いんですう〜!』
叫びだしそうになる自分をぐっとこらえてなんとか30分の施術を終える事が出来た。
(つづく)
コスタリカラス・ボラス・グランデスまたはオーバーツ
謎の石球。
2013年4月26日金曜日
南の島から来た彼女 ⑨
案の定だ。
ううん。みんな商売熱心だよねえ。こんな風にお互いに商売し合う人もうちの病院で
よく見る風景だけど今回は額が大きい。リードさんがさりげなくほのめかす「成功に
導くプラクシス(病院)経営」のスタンダードにうちが「ついていっていない」という説
にうちのドクターははまってしまった。なんで?って私は不思議で仕方が無い。ドクターは自分のやり方に自信が無いのかな?
リードさんは『もしドクターがお望みなら指導して差し上げますけど。』って大上段に
構えてドクターはあっさりと受け入れた。
そして講習会の代金は日本円で約90万円以上。やっぱり向こうが得するように
出来てるじゃない。
私は極力他人様の事には口出ししない主義だが今回は何度も悩んだ。どうしても
私には思えてしまうのだ。あんな「ただのドイツ人の女」(人種差別発言!ごめんなさい!)にどうしてうちの病院の事をつべこべ言われなきゃならないんだろうって。
うちの病院は何から何まで「変わって」いる。全然病院らしくない。内装もスタッフも
システムも治療も。ここに一歩足を踏み入れるとドイツじゃない別の空間になる。
中国の雰囲気をふんだんに取り入れて凝った内装にしたりしてる漢方の診療所なら
ドイツにはたくさんあるけどうちはそういう「外側」だけじゃなくって、むしろ
ドイツらしくしようとしてもどこからどう見ても隠しきれない中国のオリジナリティーに
溢れている。ここに「居着く」患者さんはそういうところに惹かれて来る人たちだ。
従って「ご縁の無い人」だってもちろんいる。大雑把だったりして大陸的なやり方に
ついていけないって感じて去っていく患者さんだっている。でもそれでいいんだ。
私たち日本人は自分たちのオリジンとアイデンティティーに基本的に自信がある(人が多いと思う)。でも中国人たちはちがうのかな。共産圏だもんね。ドイツ人に「ドイツではこうでなきゃいけない」なんて説教されるととたんにそっちへなびいていっちゃう。
今回はそんな危険に満ち満ちていた。
(つづく)
2013年4月24日水曜日
南の島から来た彼女 ⑧
こちらVIP患者のリードさんも都合3ヶ月ほど良く通ってきた。よく食べよくおしゃべりして良く遊んでいった。(なんか良い子の生活態度のお話みたいだな。)
彼女の職業は医療アドヴァイザー。えっ、何?それ?なんか、お医者さんにアドヴァイスをあげるのがお仕事の会社なんだって。まあ、そんな「触れ込み」で来られちゃあドクターも緊張するよね。歯科が専門らしいんだけど、どの分野でもOKらしい。毎日お医者さん相手に研修をしていて病院から病院へと飛び回っているって。
それって何だかアヤシいんじゃないって思っていたら案の定だった。私は最初から彼女を批判的な目で見ていたからああやっぱりって感じだったけど。
もちろん彼女の会社はどんなにお高い治療費でも全額出してくれるよね。あからさまに
カモ狙いで来てるんだもん。3ヶ月ほどうちに通ってすっかりアレルギーが良くなったと言う彼女の請求書の額は全部でだいたい日本円で60万円ほどになった。そしてその頃
強力に自分の商売を始めだした。
さて、一体いくら元を取ろうというのだろう?
(つづく)
名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実ひとつ。
ミシャ マイスキーのコンサート
チェロの王様(見た目からいうと神様だな)ミシャ マイスキーの
コンサートに行ってきました。夫と二男と私の三人で。
会場はミュンヒェン プリンツ レゲンテン劇場。
毎年彼のコンサートは魅力たっぷりのプログラムなのですが今回も最高!
マックス ブルッフ コル ニドライ
チャイコフスキー ロココヴァリエーション
ブラームス ドッペル コンチェルト
実はチェロをやってる二男がつい最近「コル ニドライ」の譜面を先生からもらってきて(私はこの曲を知らなかったので)CDで聴いてなんて素敵な曲だろうって大感激して
いたところだったので(といっても今は別の曲をやっていてまだ始めないみたいなんですけど)もう、運命を感じちゃってチケット買っちゃいました。火曜日にコンサートとは
働くお母さんにとっては辛いんですけど、でもこのクラスの人になっちゃうと疲れも
全部癒してくれるすごい演奏でしたから翌日も頑張って仕事に行けました。
三曲とも本当に本当に素晴らしい名演でした。完璧な演奏とはこういうのを言うんだ。
音楽には全然詳しくない私なのでホントに感じたままですがこれ以上無い「自然な」美しい音で、特に微妙で繊細な表現を要求されるピアニッシモの聴かせ方がすごかった。びりびり感じちゃったです。
ちなみにチェロに関心の無い長男は置いてきぼりにしました。ごはん置いて行くからねって言ったんだけど(そして事前に説明して了承を得ていたんだけど)本人は忘れていたらしくなぜ家族が誰も帰って来ないのか不思議に思っていたらしい。マイペースなやつだから淡々とごはんを食べ普通に生活して一人で寝たということだ。
2013年4月22日月曜日
南の島から来た彼女 ⑦
私は彼女の事を好きになれなかった。
正確に言うと「彼女のような種族」だ。リードさんはとても親切な人だし
いつも誰に対しても丁寧だし、ましてや私の事をことのほか気に入ってくれて
ドクターの前で繰り返し繰り返し褒めまくった。あの頃午後の担当の同僚が
もう一人いて彼女の事を気に入ってなかったという事情もあるのだが、私の株が
当時一気に上昇した要因の一つに彼女のべた褒めがあった事は間違いない。
でも心の奥底に潜む本能的な嫌悪感は事実だった。
その感情はある意味私の傲慢さから来ている。彼女はうちの患者さんの何割かを占める
いわゆるVIP族でプライベート保険に(彼女の場合は会社が)加入し高価な治療を思う存分
受けられるセレブな人たちだった。プライベート保険というのは加入する場合通常、
加入者の収入が手取りで最低4000ユーロ(日本円だといくらだろう?今、円安だから
50万以上になっちゃう?)だとか聞いた事あるけど色々なオプションがあって
月額500ユーロとか庶民には手の出ないお話だ。
この「元を取る」ためにせっせと通って来るウエルネスな患者さんが必ずいる。
私がこれまでブログに書き記してきた患者さんの多くは自払いの人々だ。
汗水たらして稼いだお金を治療につぎ込んでいる必死の人たちだ。
例えば私は(正確には息子)もともとここの患者だった。私もここの治療費が高いのに
悲鳴を上げ一旦治療を打ち切ったことがある。ラッキーな事にそのあと子供に補助保険と言う公的保険とセットにするタイプのものをかける事が出来たため6ヶ月の猶予期間を置いて治療を再開する事が出来た。うちは本当にラッキーで、子供の補助保険料はとても
安く(月700円くらい)彼の主治医が「健康に問題なし(?)」と見立てていたため
(西洋医療的にはね)上手くいった。本来プライベート保険は補助保険も含め病気になった後では保険に加入出来ない。だから我が家のケースは全く例外的でほとんどの患者さんは治療にものすごく真剣なのだ。
だからこの「ウエルネス族」はなんだかとっても見ていてイライラしてしまって
しようがないのだ。いまだにこのギャップを完全には乗り越えていない私だ。
(つづく)
ええっと、円安だっけ円高だっけ?すぐわかんなくなっちゃう。
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