2013年4月22日月曜日
南の島から来た彼女 ⑦
私は彼女の事を好きになれなかった。
正確に言うと「彼女のような種族」だ。リードさんはとても親切な人だし
いつも誰に対しても丁寧だし、ましてや私の事をことのほか気に入ってくれて
ドクターの前で繰り返し繰り返し褒めまくった。あの頃午後の担当の同僚が
もう一人いて彼女の事を気に入ってなかったという事情もあるのだが、私の株が
当時一気に上昇した要因の一つに彼女のべた褒めがあった事は間違いない。
でも心の奥底に潜む本能的な嫌悪感は事実だった。
その感情はある意味私の傲慢さから来ている。彼女はうちの患者さんの何割かを占める
いわゆるVIP族でプライベート保険に(彼女の場合は会社が)加入し高価な治療を思う存分
受けられるセレブな人たちだった。プライベート保険というのは加入する場合通常、
加入者の収入が手取りで最低4000ユーロ(日本円だといくらだろう?今、円安だから
50万以上になっちゃう?)だとか聞いた事あるけど色々なオプションがあって
月額500ユーロとか庶民には手の出ないお話だ。
この「元を取る」ためにせっせと通って来るウエルネスな患者さんが必ずいる。
私がこれまでブログに書き記してきた患者さんの多くは自払いの人々だ。
汗水たらして稼いだお金を治療につぎ込んでいる必死の人たちだ。
例えば私は(正確には息子)もともとここの患者だった。私もここの治療費が高いのに
悲鳴を上げ一旦治療を打ち切ったことがある。ラッキーな事にそのあと子供に補助保険と言う公的保険とセットにするタイプのものをかける事が出来たため6ヶ月の猶予期間を置いて治療を再開する事が出来た。うちは本当にラッキーで、子供の補助保険料はとても
安く(月700円くらい)彼の主治医が「健康に問題なし(?)」と見立てていたため
(西洋医療的にはね)上手くいった。本来プライベート保険は補助保険も含め病気になった後では保険に加入出来ない。だから我が家のケースは全く例外的でほとんどの患者さんは治療にものすごく真剣なのだ。
だからこの「ウエルネス族」はなんだかとっても見ていてイライラしてしまって
しようがないのだ。いまだにこのギャップを完全には乗り越えていない私だ。
(つづく)
ええっと、円安だっけ円高だっけ?すぐわかんなくなっちゃう。
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