怪我が治ってからもハルさんは治療を受けに週二回うちにいらした。
正式には患者さんではない。(請求書も発生していないしね。)
本人の希望というより先生が強く勧めたからだ。
先生ははっきりハルさんの体調の不調を見てとっていた。当時の私には
何がなんだかわかっていなかったけれど。
ハルさんは私が日本人と知って捕鯨問題について話題を振って来た。
私たちの意見は真っ向から対立するものだったけれど、なかなか楽しい議論
となった。そもそも私に真っ向から捕鯨問題などを論じようとする人など初めてだった。
ドイツ人はよく議論が好きだとか色々いわれるけれどTPOはわきまえるから
アブなさそうな話題を振る人は滅多にいない。二十年ドイツに住んでいてこの問題について水を向けられたことなど本当に一度もなかったのだ。
またある時はドイツの母国語教育について話をした。
私の子供はドイツ生まれドイツ育ちだから母親としてドイツの
教科書や学校教育のあり方は注意深く見て来た。が、ひどいものだと
正直思う。(日本でもきっと似たようなことがたくさんあると思うのだけど)
どこにどう照準を合わせているのかさっぱり分からないようなシステムだし
何より私が一番不満なのは「言葉」としてのドイツ語の「美しさ」に触れさようとする
意思が感じられないことだ。
ハルさんは私の気持ちをそのまま理解してくれたと思う。
(続く)
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