この逸話を子供が小学生の頃、たまたまミュンヘンに越して来たばかりで
子供を連れてポッツイー通りの外人局へ来たとき話した んだ。お母さんね、
昔、この辺りに住んでたんだよ、それでねって。
軽い気持ちだったんだけど、子供達には記憶に残る最も恐ろしいホラー話
だったってさ。それももう10年位前か。いや、時間の経つのは早いね。
屠殺というのはもちろん気持ちの良いものである訳もなく、近隣住民や
動物愛護団体の反対にあいつつ、しかし、食肉文化の需要がある限り
どこかに必要とされる施設な訳で、数を統合しつつも現在も尚、そこに
存在しているらしい。
不思議なことに、昼間、あの「声」が聴こえることはない。
今回、久しぶりにあの辺りを歩いてみて、いやあ、この辺りもそれでも
お洒落になったなあって思う。屠殺場では定期的に映画会が行われているし
壁はスプレー絵画のメッカみたいになってるし。綾ちゃんの住んでた
アパートも、以前より更に綺麗になったみたい。
管理会社が頑張ってるんだな。
もう一度ここに住みたいとは思わないけどあの頃を思うと胸キュンに
なる。思い出っていいな。不愉快な過去なんてない。
大失敗した過去も時のフィルターで「未熟だったワタクシ」の微笑に
飲み込まれてしまう。
ほほ、綾ちゃん、なあんと、この週末、「あの」場所に
行ってきたんですね。
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