2016年11月30日水曜日

ブダペスト オペラ座にも行きました。



宮殿からの眺め。



ブダペストオペラ座にも行きました。ハンガリーオーストリア帝国時代の遺物。
なんとここは日本語のガイドツアーあり。


玉座からの眺め



豪華な階段。でもね全体にこじんまりしているなと
思っていたらハプスブルク家からの要請でウイーンのオペラ座より
豪華絢爛にしてはいけないというお達しだったんだって。


入り口ロビーになぜか巨大な熊ちゃんが。



ツアーにはミニコンサートが付いていてモーツアルトのアリアその他を
唄ってくれました。すっごい迫力。ホンモノは違うなあ。


ここいらではレモネードを頼むとレモンどっちゃりでおいしーい!



2016年11月27日日曜日

ブダペスト観光




ブダペスト観光の目玉はここー!とネットのお勧めに従い
国会議事堂へ。バスの予約と一緒に議事堂見学ツアー(ドイツ語)の
ネット予約も入れておいて正解。待ち時間なしに入れました。



本会議室。綾ちゃん、そういえば日本の国会見学もしたことないな。
ドイツは外側だけだったしな。豪華絢爛。見所満載でした。




綾ちゃんたちはペスト側に宿泊していましたが鎖橋を渡って(寒かったー!
ハロウインの頃だとお天気良くても川風が冷たいです!)ブダ側に。
こちらに宮殿があり夜景を見るだけでもうっとりしていたので
ぜひケーブルカーに乗ってみたい!切符売り場に並びました。


長蛇の列。おやや?


なんだ?これ?




ズーム。おお、等身大ダッコちゃん風船。かわゆい。



展望台からの眺め




昼間の眺めも素敵です。


2016年11月24日木曜日

ドナウの顔、様々




 一昨日のこの写真。後方。

ブダペスト名物くさり橋のイルミネーションがケバくて引いていたら、、



翌日あらま、なんか素敵な色に変わっている。もしや日替わり?
昨日知り合ったあのお医者様は昨日の色しか見られなかったから
ぜひ見せてあげようとパチリそしてメール。




3日目。今度は神々しいぞ。周囲と溶け合い映えている感はこれが一番かな?
一体何色あるんでしょうね?訪れるたびに楽しみがあるってことですね。





さてこれは昼間のドナウ岸辺。遊歩道の靴の銅像。




第二次世界大戦中にユダヤ人がここに並べられて銃で撃たれて
川に散っていった。当時靴は貴重品なので靴を脱いでから撃たれていった。
その痛みの祈念碑だということです。





と、遠くを見ると、、なんだあれは??
これ観光バス船で地上を走って途中で川にザブンできる遊覧船らしいです。
見てるだけで愉快になる。



2016年11月23日水曜日

行き当たりばったり旅行



思いつきにもほどがある。思い立って着替えを詰め込んで
交通と宿泊先のみ押さえてレッツゴー!こんな旅行初めて。

幸いネットが使えるので予習しながら旅先に向かえる。ネット時代
さまさまだね。バス旅行は安いし便利。Booking comで予約したホテルは





じゃじゃーん!豪華Radisson bluホテル。3泊4日ツインで240ユーロの
ラストミニッツ価格!ドイツではありえないお値段。


ロビーのバーでヴィオラの生演奏やってた。


お部屋もとっても居心地良かった。
もちろんもっと節約して安いお部屋もいろいろあったけど
心配性の綾ちゃん夫に写真送るからね。気を遣って良いホテルにした。




バスの中にミュンヘン大学で研修中のお医者様(日本人)が乗ってらした。
その方はとんぼ返りで一泊しかしないんだって。
一緒にご飯を食べることになって、じゃあせっかくだから
素敵なところに行きましょうってホテルのコンシェルジェ
オススメのお店を予約した、、、ら、、





やったー!!!これね、船じゃないの。レストランSpoonです。
溢れるような夜景に包まれた室内で夢のような特別な空間.
一生思い出に残るお食事ができるお店でした。





ブダペスト名物 フォアグラのテリーヌ
バームクーヘン状のパンと一緒に召し上がれ。



息子がメインに頼んだきのこのパスタ



綾ちゃん、来世は海老になりそうなほど食べてるね。


お値段はおそらくこちらとしてはかなり高め。
ドイツのこのレベルとしては安めだと思う。




食事が済んでからもう一度レストランを写真に収めた。
4日間でいろいろご飯食べたけどここが何もかもベストオブベストでした。





2016年11月21日月曜日

翌日の出奔




仕事納めの翌朝。


ぶはー!いつものように5時40分には目が覚める。
今日から働かなくていいなんて不思議な気分だ。
正式には有給休暇なんだけれど普通のお休みとはもちろん違う感覚。


綾ちゃんはこの4年半の間、週日は平均睡眠時間5時間以下で
週末に長寝して調整する日々だったんだけど
週末必ずしもヒマだとは限らないので無理して働いて
ここのところちょっと調子が悪かった。
まずは体調を整えなくっちゃ。



なあんてのんびりしていたらその日の夕方、思わぬアクシデントに
見舞われた。ちょっとした事情で(面倒くさいので理由はすっ飛ばすけれど)
数日家を空けねばならぬ羽目に陥ってしまったのだ。


どうしよう。たまたま今日は金曜日で翌日から息子の学校は1週間秋休み。
せっかくだし退職記念旅行に出ちゃおうか?



ええ?ええ?えええー?と驚く息子に突然荷造りを命じ綾ちゃんは
どこに行こうとパソコンとにらめっこ。そう、この間プラハに行った時、
後で患者さんにその話をしたら


『プラハもいいけどブダペストはもっといいよ。
僕の一番のお気に入りの街だなあ。』

とおっしゃっていたのを思い出した。



行っちゃおうか?


そして翌日9時間かけてバスの旅。着いたらいきなり
超豪華な夜景が綾ちゃん達を迎えてくれました。
うわーい!ブダペストばんざーい!!


2016年11月19日土曜日

総決算の一日




早めに病院をお昼休みにしてしまって



ランチメニューではなくコースメニューをご馳走していただいた。
こんな贅沢初めて!お酒もシャンパンで乾杯した後、大吟醸。超美味でした。


実はこの日、ここで偶然にもRitsukoさんと運命の出会いを
いたしました。Ritsukoさんのブログに綾ちゃん猫の絵が美人ぽく
描かれていて嬉しい。


シャンパンで乾杯した後、ドクターは突然「ううっ」と漫画のように(!)
号泣し始めて綾ちゃんは(人目を気にしながら)まあまあまあと
背中をさすり慰める羽目になった。



『ヨ、ヨシオカさん。あなたがいなくなった後、私と家内と二人で
どうしたらいいのかもうわからない。』



いや、その表現はオカシクないか?ただ単に人手が足りないってイミでしょう、
と心の中でツッコミを入れてしまった綾ちゃんだが、



『次の方もすぐに決まりますよ。大丈夫、大丈夫。』


月並みだけどそう言って落ち着かせた。
働きたい人はたくさんいるからね。もちろん病院は少し特殊なカラーだから
相性はあるだろうけれど、綾ちゃんより良いアシスタントがすぐにやってきますよ。




メインはお寿司その他から一品チョイス。綾ちゃんは大好物のエビを
いただきました。エスニック味と和風柚子仕立て。超絶美味!でした。




ドクターといろんな話題で盛り上がって、これまで病院を訪れた
患者さんの噂話をたくさんした。中でも衝撃的だったのは
この夏、プロフェッサーがお亡くなりになっていたという事実だった。
そういえば最近連絡がないなと思っていたところだったんだ。
便りのないのは良い便り、とはいかない。
ドクターもつい最近聞いたばかりなんだって。


プロフェッサーは病院で働き始めたばかりだった綾ちゃんをとても
可愛がってくれた。綾ちゃんにとって多分一番大切な象徴的存在だった方なんだ。



やはり今日という一日は最期を締めくくる総決算の日だったな。



『いつでも戻っておいで。待ってるからね。』



暖かいお言葉をいただいてお別れした。
駅のホームまでお見送りしていただいた。



2016年11月18日金曜日

心が揺れた最終日




     そして最終日がやってきた。今日の病院は静か。おそらくドクターが
    意識してあまり患者さんを入れなかったんだ。



     朝、いつものように病院に一番乗りでやってきた綾ちゃん。
    台所を覗くと大きな花束が用意してあって、おお、きっと綾ちゃんが
    後で頂くのかなあと恐縮。お花のそばに領収書まで丁寧に添えてあって
    その値段にまたびっくり。あーあ、相変わらずだなあ。もう一生、このまま
    なんだろうなと思いながら朝の支度。今日はキーホルダーから鍵を外して
    おく。


             
    
         ドクターが遅れて出勤してきてまずは一緒に記念写真



      患者さんが順番にやってくる。やっぱりいつものように仕事を
     行いながら、意外にも淡々とした自分に驚いている。



         今日はいつもより随分早く終わりそうだ。
      お世話になりました、とドクターに鍵を返しに行くと



      『ヨシオカさん、やっぱり今日、ちょっと食事にでもいきませんか?』




      ドクターから再度のお誘いだ。実は先週から何度も誘いを受けていた。
     皆でお別れ会をしようって。でも綾ちゃんは静かに去って行きたくて
     ずっと断り続けていたんだ。まあ、暇になってしまったし最後だし
     昼食だけ、やっぱり甘えちゃおうかな。



               綾ちゃんの心が揺れた。



2016年11月16日水曜日

マールさんとの別れ




           彼女とだけはきちんとお別れしなくっちゃ。



    患者さんの中で一番の仲良し。彼女も綾ちゃんに会うのを楽しみに、
   もしかしたら今は生きがいの一つになっているかもしれない、そんな風に
   うちの病院に来るまで何とか時間をやり過ごすという風に生きてらっしゃる。
   もちろんメインはドクターの治療なんだけど病院に来れば必ず綾ちゃんと
   30分くらいは話し込む。前回から今回に至るまでの時間、何をしていたか
   どんなことがあったか、何を考えていたか、全部話してくださる。
   大抵は辛い辛い身体の不調のことなんだけど誰にも愚痴ることのできない
   想いを伝える相手がいるというのはどんなにか大きな慰めだろう。
   よくわかるよ。特に彼女の場合はご主人様も重病人。一人だけ不幸顔を
   しているわけにいかない。


    綾ちゃんも彼女のことが一番気がかりだ。彼女の両足はいつも氷のように
   冷たい。もう何をしても無駄なのだと彼女は言うけれど、真夏でも
   生きている人ではないような冷たさだ。綾ちゃんは彼女の名前が予約リストに
   あると必ず彼女用に幾つかのスペシャルサービスを用意して待つ。
   スリッパを温めておくとかね。どんなに忙しい日でも絶対やった。
   もちろんただのサービス。お金はとらない。誰か受け継いでくれるかな。


                       

       これはスリッパの中に穀物の種が入っていてオーブンで温めて履く




    マールさんに別れを切り出す。綾ちゃんが勝手にやっていたサービス、
   全部カルテに書いておくし口頭でも伝えておく。でも忙しいとみんな
   それどころじゃなくなるからマールさん、ご自分でおっしゃってくださいね。
   スリッパが欲しいとかランプで温めてくれとか背中が痛いとか。
   それから綾ちゃんの電話番号とメルアド。辛い事とかいつでも聞きます。
   おしゃべりしたくなったらいつでもかけてくださいね。これからは
   お友だちになりましょうね。


             彼女は言葉少なに頷いた。



    とっても引っ込み思案の彼女だもの。きっと連絡してはこないだろう。


             その日は静かにお別れした。


   
       

2016年11月14日月曜日

おばさんマドンナ





         『おい、ベイベー!そりゃあないぜ!なんでオイラに
         打ち明けてくれなかったんだい。』




        いいなあ、このノリ。何十年前のロックンロールだかって
       調子で綾ちゃんとの別離を惜しんでくれる。



        こんにちわ、お元気ですか?ええ、ありがとう。あなたは?
       このお決まりの挨拶言葉でとうとうドクターが告白(?)した。



        『いや、私は今、悲しみに打ちひしがれているところなんです。
        なぜってヨシオカさんがここを去っていくというのだから、、』




        いやだから、この「お元気ですか?」云々は医者が患者に訊く
       常套句であって医者が患者に愚痴ってどうする???



        いよいよあと残すところ2、3日という最後の週になって
       ある日、突然ドクターは患者に綾ちゃんの退職問題をうっかり?
       漏らしてしまった。んで、その日の患者さんたちは皆で別離を
       惜しんでくれて病院はほぼ宴会状態。
       いやまあ、今日の患者さんたちは偶然にも綾ちゃんと同年代の
       男性諸氏で綾ちゃんとはかなり「ノリ」の良い付き合いをしていた
       人たちなんだ。かなり突っ込んだ話もしていた。綾ちゃんも彼らとは
       きちんとお別れしなくっちゃとは思っていたんだけれど、ね。




        中年男性たちにとって綾ちゃんは体の良い「(おばさん)マドンナ」
       だったんだなあって改めて実感した。おばさんなだけに遠慮せず
       何でも話せたしね。結構「濃い」プライベートも知っちゃってるしね。



        『よし、じゃあ、来週からは俺のプライベートな恋人だぜ、
        ベイベー。絶対「お茶」しよう。メル友になろう。』



             メルアド交換して明るくお別れできた。



             でもとりあえず、まずは身体治そうね。  






     春告鳥はやっぱり削除されちゃったので「いのちの理由」をアップします。
        
       削除されないことを祈りつつ、、無類のさだまさしファンの綾ちゃんが
       贈るちょっとコアな一曲「春告鳥」。
       椿の花弁がほろりと池の水面に落ちる情景にストップモーションを
       かけた歌詞が美しすぎて綾ちゃん的には永遠の一曲です。







2016年11月12日土曜日

きっともう会えない





       ベルヒ先生がいらっしゃらなければ綾ちゃんとドクターの出会いは
      なかった。それを言うなら息子が深刻な病気になったこと
      合唱団に合格したこと、最初のトレーナーの先生と気が合わなくて
      ベルヒ先生に交代してもらったこと、そんな全ての物語が綾ちゃんを
      この病院へと導いたわけだから不思議なものだ。
      その場その場では心配したり怒ったりとドラマがあったわけだけれど
      全てが糸に紡がれているというような感慨がある。



       そして最後の最後にまたしても彼に会えた。
      ベルヒ先生は、以前いらした時の病気はすっかり良くなって今回は
      慢性気管支炎に悩んでおられた。時間を気にしつつ、綾ちゃんの
      話を聞いて彼もまた感無量。思いついて無理やり時間をとって
      ここに来たことにはそんな意味があったんだね、どうかお元気で、
      お幸せに。息子さん、大きくなっただろう、よろしくね。と
      互いの子供の写真を携帯で見せ合ったりした。



        本当に不思議だ。綾ちゃんがこの病院で出会ってきた人々に、
      そのほとんどの人におそらく綾ちゃんはもう二度と会うことはない。
      お年寄りの方が多くてお亡くなりになられた方もおいでだろう。




        ベルヒ先生にもきっともう会えない。不思議な気がする。






          オリジナルは削除されちゃうかもしれないから
         今日はURUさんで。今井美樹もちょっと憧れちゃうなあ。
         しっとり系の女性。




2016年11月11日金曜日

引き寄せられたベルヒ先生




        綾ちゃんは少し迷ったのち、患者さんには基本的に
       綾ちゃんの退職について語らないことにした。ただし何人かの
       ものすごく綾ちゃんと親しくしてくださった方にはきちんと
       お別れをしよう。それ以外は普通に働いて普通に接して心の中で
       さよならを言おう。
       程なく綾ちゃんの後任も決まるだろう。そうすれば自然な流れで
       この病院の色やリズムも元に戻る。心配することはない、大丈夫。



        ドクターは相変わらず勘良く(辞表を提出した後、ほとんど彼は
       綾ちゃんの退職問題に触れなかった)綾ちゃんに習って誰にも
       このことを告げなかった。



        そしていよいよもうあと何日という時にベルヒ先生からの
       予約が入った。電話を受けたのは綾ちゃんではなかったが彼は
       今ハンブルクにお住まいだとか。親戚の集まりで近くに来る用事が
       あるので半日だけミュンヘンに寄れるという。



              そうだ、ベルヒ先生!
         そう、綾ちゃんが今、一番会いたい人は彼だったんだ。
     だって最初にドクターを綾ちゃんに紹介してくれた人はベルヒ先生だもの。



          彼の予約は綾ちゃんの最終勤務日の前日だった。
          なんという偶然。これこそ引き寄せに他ならない。







最初にアップした画像が削除されていたのでトレーラーに変えました。

        懐かしの一曲のお時間。みゆきさんは今も昔も綾ちゃんの憧れの人。
        60歳過ぎてどうしてこんなに綺麗で魅力的でいられるんだろう。
        みゆきさんは名曲がありすぎてどれを紹介したらいいか
        わからないけれど、光に包まれることもない名もなき
        人々の努力を歌い上げたこの名曲を今日は紹介します。

        先日、ボブ デイランがノーベル文学賞を受けて「歌詞」が
        文学として評価されたことに賛否両論だった(綾ちゃんも正直
        これはちょっと腑に落ちないんだけど)みゆきさんの歌詞は
        本物の「詩」だと思うことがある。「ヘッドライト テールライト」も
        本当にすごい。
        綾ちゃん夫など、「歌詞のイミわからん」などと言っておったので
        ヘッドライトが英雄でテールライトが縁の下の力持ち、正面から
        見ると気がつかないテールライトがないと車は安全に走れない
        (プロXなだけに)、と説明するとようやく納得していた。






2016年11月10日木曜日

わかってくれると思ったんだ



     
      そのあとの日々は穏やかでとてつもなく優しい時間になった。



     Sは(ミュンヘンの住人ではないので)しょっちゅう電話をくれた。
    出張先から会議や会食の合間にかけてくれたりして恐れ入ったが(全くもって
    友情の厚さに改めて感謝だ)綾ちゃんも出来る限り連絡を入れ逐一報告した。



     辞表提出の後、いつもよりさらに人間関係が良好になったことに
    Sはほとほと感心してくれて



      『アヤコはさ、全くもって最良のやり方で説明したんだよ。
      たまげた。脱帽さ。普通、この種類の退職劇は泥仕合いになって
      当たり前なんだ。まあ、最後の最後まで気を抜かずに行こう。』



     綾ちゃんがSから入れ知恵されていた辞意表明後の時間の過ごし方は
    もっともっと「過激」なものだった。
    でも綾ちゃんはここで皆と家族みたいに過ごしてきたんだ。雇用主と
    労働者が互いの取り分を奪い合いながら戦っていたわけじゃない。
    法律家の目から見ると一見無駄に思えるかもしれない「ひと手間」が
    結局余計な労力やストレスを軽減することだってある。そう綾ちゃんは
    Sを説得したんだ。
    綾ちゃんとドクターは二人三脚で仕事のことはものすごくよく分かり合って
    いるからね。わかってくれると思ったんだ。






          ミュンヘンの初雪に昔懐かし雪ソング
     チューリップも財津和夫もイマドキの人は知らないだろうな。  
     綾ちゃんが小さかった頃、福岡発のスターは海援隊にチューリップ。
     武田鉄矢に財津和夫だった。この曲綾ちゃん大好きです。

       絶え間なく降り注ぐこの雪のように君を愛せばよかった
       窓に降り注ぐこの雪のように二人の愛は流れた







                 

2016年11月9日水曜日

運命のその日




綾ちゃんは眠れなかった。


そういえば退職という文字が電撃的に頭をよぎったのも明け方だった。
いろんなことをつらつら考えていたら眠れなくって、それまで考えていなかった
「退職」の文字が不意にやってきたら今度は
「今辞める」「すぐ辞める」で頭がいっぱいになってしまったのだ。
綾ちゃんはこういう「お告げ」的直感を大事にする人なので
そのあとは一直線だった。


綾ちゃんはいつもより随分早く出勤して丁寧にすべての準備を整えた。
時間に余裕を持っておかないと日常の些事に押されてチャンスを見失ってしまう。


ドクターは予定の時刻より10分ほど遅れてやってきた。
その前の週、プロが参加するような絵画のマスターコースに参加して
気分が高揚しているらしく随分機嫌がよかった。作品、写真に収めてあるから
後で見せてあげるねって嬉しそうで綾ちゃんに最初の患者さんの施術の
指示をして自室に入っていった。



綾ちゃんはドクターの指示にハイっと了解の意を唱えたもののそれには
従わずドクターと一緒に治療室を出て行った。(こうなることを想定して
患者さんにはサービスで別の施術の準備をあらかじめしてあった。)


ドクターはびっくり顔だ。どんな些細なことであれ綾ちゃんがドクターの
指示に従わなかったのは初めてのことなんだ。しかもハイっと言っていたのに。




『患者さんには今、別の処置をしています。すぐ済みますから
ちょっとお話があります。』




勘の良い彼のことだ。ただならぬことだともう気付いてる。緊張した面持ちの
彼ににこやかに微笑みかけてできるだけ静かに切り出した。


『私、決心しました。ここを出て行きます。これまで本当に
お世話になりました。たくさんのことを学びました。ありがとうございます。』


この部屋に今、綾ちゃんとドクターの二人しかいない。


『いいですか、これから私はなぜ私がここを去っていかなければいけないのか
本音を、本当の気持ちを一度だけ言います。』



綾ちゃんは用意していたセリフをささやいた。



『いや、それは、、、。そんなことが、、、それとこれとは関係ないんじゃ、、。
いや、君が辞めることはないし辞めるにしたって今すぐってわけじゃないだろう。』



ドクターもしどろもどろだ。




うきゃきゃ。ちなみにここ、ホテルマリオットです。



『じゃ、患者さんの施術に戻りますね。』



『いや、いいよ。僕が行く。僕がやろう。やりたいんだ。』



頭の中が大混乱になっているのがわかる。本来は綾ちゃんの仕事である
お灸や吸玉、その他の作業をどうしても自分でやると言って聞かなかった。
それらの作業が終わった後、今度は自室に戻ってドンドン部屋の模様替え(!)を
し始めた。そう。これも彼の癖で頭がショックで混乱している時に
とりあえず体を動かそうとするのだろう。
そういえばハルさんがお亡くなりになった日にも同じことをしていたっけ。



綾ちゃんは改めて胸が締め付けられるような思いがした。






2016年11月8日火曜日

使えない?本人宛書留郵便




事務的なことなんだけど、万が一今このブログを読んでいる読者の方で
現在ドイツの職場で退職をお考えになっている方がいらっしゃれば
あるいは参考になるかもしれない、、、ことを蛇足的に書いておきます。



綾ちゃんは辞表をドクターにはいっと手渡すつもりでいた。

少なくとも綾ちゃんが以前勤めていた会社では皆そうしていたし
後から証明が必要な場合を考えて、その場で雇用主の署名を取って
それごとコピーして保管しておく、というやり方がベストなのだと思っていた。


が、このやり方に親友Sから指導が入り、綾ちゃんは辞表をわざわざ
郵便局に持って行って通常郵便料金プラス6、80ユーロ支払い
受け取り自著付き書留郵便(Einschreiben Eigenhändig Rückschein アインシュライベン 
アイゲンヘンデイッヒ リュックシャイン)扱いにして郵送した。

もちろん解雇予告期限日までに必ず到着するように日付を計算して、だ。


これはドイツで重要書類を法的に確実に相手に手渡す時のもっとも正式な
やり方で、日本でいう内容証明郵便に当たるのだと思う。
これを受け取った相手は宛名に記載されている当人が必ず受け取り証明に
自著しなければならない。



あーあ。まあ、そうだよね。でもさ、綾ちゃんは知っているんだ。


うちのドクターは「書留郵便」が大っ嫌いだ。
書留料金を払ってまで医者に手紙を送りつける輩に善意の人間がいるわけがない。
クレームに100パーセント間違いないからだ。


でもここは友人の勧めに従っておいた。




陽気なジャック オー ランタンって珍しくない?



綾ちゃんは郵便が来るであろうその日、絶対に事前に口頭で辞意表明
しておかなければいけない、でないとドクターに失礼だと思って焦っていた。
そしてその旨伝えて郵便を待った。



が、やってきた郵便配達のにいちゃんは事もあろうに差出人である
綾ちゃんを捕まえて、綾ちゃんに受け取りのサインをさせようとしたのだ!!



ナイン!そこにEIGENHÄNDIGと書いてあるからには宛名の当人しか
サインしてはいけないでしょう?と問うもにいちゃんは、サインなんて
誰がしたって一緒だ、アンタがしてくれりゃあ早いじゃないか、早くしてくれ!と
ほとんど喧嘩状態!


もちろん綾ちゃんは受け取りサインを断固拒否して(サインしたらお笑い草だ)
治療中のドクターを引っ張り出してサインさせた。



一応なんとかなった。



、、、と思っていたがその後待てど暮らせど受取り証は綾ちゃんの元に
帰ってこなかった。投函先の郵便局に問い合わせるもコールセンターに
丸投げ。ネットで問い合わせるとネット上に登録してあるものを部分的に
閲覧することはできたので、現実的なトラブルが起こっていない現状では
これ以上手間をかけないことに決めた。



、、、がこれは明らかなドイツ郵便局の怠慢とレベルの甚だしい低下を
物語っている。綾ちゃんはこれまで公私様々な局面で
この種の書留郵便を目にしてきたが、こんなお粗末な仕事は初めてである。



使えない。ドイツ ポスト。
三流に落ちたな。


名誉復権してくれ。頼む。こっちは困るぞ、いざという時。









2016年11月7日月曜日

辞表





綾ちゃんが突然、「仕事、辞めよう」と思い立った日、その日は偶然にも
ネット検索すると法的にも最短の日数で辞められる直前の日付であった。
1日でも遅いと次のタームまで最終勤務日がずれ込む。


『雇用関係というのは、たとえそれまでどれほど良好な状態にあっても
辞表を提出した途端、すべてが豹変する(しがちな)もの。
だからすべての準備をしておくべき。』



と友人のありがたいお言葉に従い想定されるあらゆるトラブルの準備。


『いいかい、僕は労務のプロではないし残念ながら労務関係の腕利きの
弁護士も知らない。できれば事前に一人アタリをつけておいたほうがいいな。』



とはいえ綾ちゃんに特別心当たりがあるわけでもない。まあ、綾ちゃん夫が
昔、仕事でお世話になっていた方を識っているといえばいえるか。
非常事態にはそこへ駆け込む用意。


Sは(自分の仕事もあるだろうに)電話口で事細かに綾ちゃんの辞表の
ドイツ語を添削してくれたり善後策を講じてくれた。
綾ちゃんは昔、仕事でいつもそうしていたように幾つかのビジネス用の
例文を型取って作文。こんなもんでいいだろうと甘く考えていた綾ちゃんにSは
これはこういう意味、ここは法的にはこう解釈されるからこういう表現に変えるべきと
細かく訂正を入れてくる。ええ、そこまではきっと誰も考えたりしないと思うけどなあ、
と感心したもんだ。いやー、お勉強になるなあ。




うひょうひょ




Sの気持ちは痛いほどよくわかる。「いざ」という時には戦わなければいけない。
そしてその時には100%勝たねばならない。法律家は100が150にも
200にもなるように知恵を授けてくれる。ありがたい。ありがたい。
どこまでもありがたい。



だけどね。



辞表を提出する前日、綾ちゃんはSに言った。


『ありがとう。ものすごく感謝してる。アンタの教えてくれたこと、全部
アタマに入ったと思う。多分失敗しないよ。だから最後の瞬間をどう「演出」
するかは私に任せてくれる?』



『ね。私はこれがドイツ人と日本人の違いなのか、男脳と女脳の違いなのか
はたまた法律家と文学家の違いなのかわからない。アンタに言わせれば
私のやり方は甘っちょろすぎるのかもしれない。
でもね、私には私の幕引きの仕方があると思う。あともう少し、朝まで考えて
これまでの病院での生活にふさわしいピリオドを打ってくるよ。
ここだけ私に任せて。』



そう、ここは綾ちゃんの人生の大切な一場面なんだ。誰に譲るわけにもいかない。


そうして綾ちゃんはその日の朝を迎えた。





2016年11月6日日曜日

勘のいい男




旅行から帰ってきましたー!


旅行の写真などはまた今度ゆっくり。とりあえずは病院でのお別れの
日々の思い出を綴りますね。




綾ちゃんが病院を辞めようと思い立ったのは、実は
かなり最近のことなんだ。ここでは詳しく理由を書かないけれど。
でもみんな驚くだろうなあ、受け入れてもらえるかなあ?



綾ちゃんは昔、会社勤務時代に事務系だったからドイツの労務規定について
一応の一般常識は持っている。だけど綾ちゃんの現在勤めているここは
まるで中国。ドクターたちがちゃんと解ってくれるかどうか自信がない。



んで、綾ちゃんの10年来の友人である法律家のS(ドイツ人)に相談してみる
ことにした。彼は綾ちゃんの親友の一人なんだけれど裁判官だった経歴を
持っていて現在はある大手企業の法律顧問をしている。



結局、このSに何から何までお世話になってしまうことになるのだけれど
度肝を抜かれたのは、この友人が、綾ちゃんがこのテの相談を持ちかけた途端
突如として張り切りだしていわゆる「戦闘モード」に切り替わっって仕舞った
ことだった。いや、普段皆で遊ぶ時には至って温和なヒトなんだけど。



旅行時ハロウインだったからあちこちにかぼちゃがあった。





ヤツはめちゃくちゃ勘のいい男で、綾ちゃんが仕事を辞めようと
決心してネットで解雇条件について調べ始めた時にものすごい
タイミングでWhatsappしてきて


『よう、最近、なんか変わったことあった?』



ときた。



かなわんよ、アンタには。





2016年11月3日木曜日

「綾ちゃん玉手箱」 読者の皆様へ




「綾ちゃん玉手箱」読者の皆様へ



いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今日はひとつ大切なお知らせをしなければなりません。


このブログのコンセプトとしていたドイツにおける漢方(中医学)で
働く日本人の私というテーマにピリオドを打つ日がやってきました。


来る11月15日をもちまして綾ちゃんは病院を退職することとなりました。
今年分の有給休暇消化のため最終勤務日を先週無事に終わらせたところです。
退職は綾ちゃん本人の意志によるものです。



最終日にドクターから素晴らしい花束をいただいた。



ブログをどうしようか随分悩みましたがとりあえず続けていこうと
思います。ただ、当面、綾ちゃんの日常と自然療法全般について、
病院での思い出の中から書き残したエピソードなど日々思うこと等綴る
エッセイになるので以前よりはペースを落としつつ、のんびりやっていこうかと
考えています。




ご理解いただければ幸いです。
これからも「綾ちゃん玉手箱」よろしくお願いいたします。