そのあとの日々は穏やかでとてつもなく優しい時間になった。
Sは(ミュンヘンの住人ではないので)しょっちゅう電話をくれた。
出張先から会議や会食の合間にかけてくれたりして恐れ入ったが(全くもって
友情の厚さに改めて感謝だ)綾ちゃんも出来る限り連絡を入れ逐一報告した。
辞表提出の後、いつもよりさらに人間関係が良好になったことに
Sはほとほと感心してくれて
『アヤコはさ、全くもって最良のやり方で説明したんだよ。
たまげた。脱帽さ。普通、この種類の退職劇は泥仕合いになって
当たり前なんだ。まあ、最後の最後まで気を抜かずに行こう。』
綾ちゃんがSから入れ知恵されていた辞意表明後の時間の過ごし方は
もっともっと「過激」なものだった。
でも綾ちゃんはここで皆と家族みたいに過ごしてきたんだ。雇用主と
労働者が互いの取り分を奪い合いながら戦っていたわけじゃない。
法律家の目から見ると一見無駄に思えるかもしれない「ひと手間」が
結局余計な労力やストレスを軽減することだってある。そう綾ちゃんは
Sを説得したんだ。
綾ちゃんとドクターは二人三脚で仕事のことはものすごくよく分かり合って
いるからね。わかってくれると思ったんだ。
ミュンヘンの初雪に昔懐かし雪ソング
チューリップも財津和夫もイマドキの人は知らないだろうな。
綾ちゃんが小さかった頃、福岡発のスターは海援隊にチューリップ。
武田鉄矢に財津和夫だった。この曲綾ちゃん大好きです。
絶え間なく降り注ぐこの雪のように君を愛せばよかった
窓に降り注ぐこの雪のように二人の愛は流れた
0 件のコメント:
コメントを投稿