2013年12月17日火曜日

新しい同僚 その十六







          わめき声はしばらくして止んだ。おそらく十分にお金をもらったんだと思う。リリーさんは出て行った。








            ドクターは患者さんの鍼をまず打ってから綾ちゃんの部屋にやって来て、少しだけ足の指圧をしてくれた。鍼を打ち終わると、今度はさっきの患者さんの指圧に行く。そうこうするうちにまた次の患者さんがやって来るという繰り返しだった。










            綾ちゃんはドクターに施術を受ける間、終始無言で事情を尋ねることは控えていた。、、、と、言うとなんだかしんみりした魂の交流っぽく聞こえるが、いやあ、気まずいの何のって、これまでにここで体験した「気まずい」で賞第二位だな。第一位については下らなくて笑える話なので近いうちに別に書きます。いや、だってさ、『ねえ、ねえ、ねえ、ドクター、今のどんちゃんがんちゃん、一体何事なの?』なあ~んて訊ける訳ないじゃん。第一、ドクター本人がなんか知らんがハラワタの煮え繰り返る想いをしているに決まってるんだろうからね。










          そうこうするうちに患者さんが次々やって来る。ドクターもそろそろ限界に違いない。40分経ったのを確かめて、綾ちゃんは自分の身体に刺さった鍼を自力で抜き始めた。


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