新しい同僚 その七

                 結局、綾ちゃんはその後、ルーシーに会うことはなかった。

            仕事は度々したらしい。綾ちゃん不在の時間帯に立て込むことがあると

　　時間の許す限りやって来たそうだ。

　最初に彼女がふらりと病院を訪れた日の翌朝、ドクターが綾ちゃんに、

ドクター　　　　『吉岡さん、ルーシーちゃんの仕事ぶり、どう思う？』

　って訊かれたから

綾ちゃん　　　　『ええ、確かに昨日は助かりました。患者さんのAさんによると

　　　　　　　　〜などの点が不十分だったそうです。でもまあ、全体として

　　　　　　　　悪くないとはいえ、根本的な問題があるので私はどうかと

　　　　　　　　思っています。まず、ドイツ語も英語も出来ない事。

　　　　　　　　コミュニケーションの問題だけでなく、患者さんの信用を

　　　　　　　　著しく損なう事になりかねません。そもそも言葉が何にも

　　　　　　　　出来ないのにどうやって滞在しているんでしょう。労働許可、

　　　　　　　　持ってないんじゃないんでしょうか？』　




と、明らかに不満げに辛口評価をしてみた。すると、




ドクター　　　　『そうなんだよね。中医学の学校を（中国で）出たようなことを
　　　　　　　　言ってたからラッキーと思っていくつか基本的な事柄について
　　　　　　　　彼女に質問してみたんだ。そしたらかなりあやふやな答えが
　　　　　　　　返ってきたからアヤシいと思っているんだよね。
　　　　　　　　よくいる（？）「流し」の出稼ぎみたいだな。
　　　　　　　　３ヶ月の観光ビザでやって来て荒稼ぎしていくチンピラだと思うよ。
　　　　　　　　やっぱり気をつけた方がいいな。違法就労だからね。　』






だったらそんなにホイホイ雇うなあ〜！！バイトだろうが何だろうが履歴書出して
書面で契約してって、あったり前でしょうがあ！




　だから彼女はもう来ないとその時は思ったんだけど、ドクターの奥様が、
ルーシー「流し」の「手軽さ」が気に入った（！）らしく、そのあとも何かあると
電話してヘルプをお願いしていたようだった。





　んで、彼女は２、３週間そんな風にうちに出入りしたあとで中国に帰っていった。





　　　　　　　　　『また１、２年経ったら来ますねえ、その時はよろしくう！』





と言ってたらしい。本当に「流し」だったんだ。






　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　吸玉（すいだま？と読むのかな？）
　　　　　　　　　　　　　　　うちもよく使ってます。