その頃綾ちゃんは自然療法家養成学校に通っていて家事と育児の合間は
勉強、勉強。慣れない医学用語と格闘する毎日だった。自然療法と言っても
学習内容は全て西洋医学。専門の分野は別口で勉強しなければならない。
こちらはこちらで(こっちは「本職」となるべきものだから大変ななりにも
面白い)少しずつ勉強を進めていた。綾ちゃんの本来の目的は
クラシック ホメオパシーの勉強だったのだ。
ご近所にお住まいの彼女とは少しずつ仲良くなっていった。ビデオや
本を貸しあいこしたり互いの愚痴を打ち明けあったり、一緒におやつを
食べたり。普通のお付き合いだけれど気がつけば二人の間には暖かい
シンパシーのようなものが通いあっていた。彼女の談では、こんな風に
誰かと「仲良く」なるのは本当に滅多にないことなのだそうだ。
あるとき(知り合ってから5年以上経っていたと思う)彼女がふと綾ちゃんに
尋ねた。もしかして綾ちゃんが彼女の頭痛を治せないかって。
是非やってみて欲しいって。
いやいやいやいやいやいやいや。
いやいやいやいやいやいやいや。
それは無茶。
綾ちゃんが実力不足のひよっこだというのも大きな理由だけど、
もうひとつ、重大な問題があるんだ。
ホメオパシーはね、診察の過程で患者さんの深ーい心の奥を
覗かねばならんのだ。だからね、
一旦親しくなってしまった人間関係では、憚りがあるんだ。
セキセインコ見えますか?
どこかから逃げ出して迷子になった子だと思う。
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