クリングさんはプロフェッサー同様、自分にもそしてきっと他人にも
厳しく生きて来た人だった。プロフェッサーと同じ病気だと聞いていたが
彼よりもはるかに重症だった。そしてそれ以外にもたくさんの既往症をお持ち
だった。
例えば乳がんの手術を受けて片方の乳房しかないこと。
私は片方しか乳房をもたない患者さんをこれまで何人も見ているから
さして驚かないけれど、そりゃあ、ラルフ君にはショックだったよね。
例えば全身の皮膚に老人性疣贅(ようじんせいゆうぜい=良性のいぼ)が
かさぶた状に広がっている。
私は基本的にゴム手袋をしない人なのだけれどこの時は迷った。少しでも
迷ったらドクターに相談するのが常だが、この時は自己判断で自分は素手で
ラルフ君にだけ(彼の気持ちのために)させた。でも彼はもう、引きまくりで
患者さんに触れるのもこわごわだった。そんなんで上手くいくはずもない。
もうひとつ、重大な危惧がある。例の「瞑眩(好転反応)」だ。
お年寄りに出やすい。
集中治療の際には特に危ない。
そんなこんなを忘れていた訳では決してなかった。
(つづく)
ご存知タイガーバーム。これもうちの病院で大活躍。ドイツでも売ってますけど高い!
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