2014年2月28日金曜日

ドイツ、男と女の物語 ③






                 3度目にその家族の元を訪ねた時だった。




   いつもあちこち綾ちゃんを連れ出してくれるんだけれど、その日は仲間
  (多くは同僚)とのガーデンパーティーに連れていってくれた。
  ママ達以外に知る人もない綾ちゃんはおとなしくチンとしてた訳なんだけど、
  その日遅れて参入してきた「パパ」はいい気分でビールやシュナップスを
  がぶがぶあおり相席していた厚化粧の女性に言い寄り始めた。
  この女性がまた、絵に書いたような「商売女」風の厚化粧で、
  たっぷたっぷの体躯、お化けメイク的に滑稽な厚化粧(こちらには「本当」に
  時々その手の馬鹿げたこてこてメイクの女の人がいます)言い寄られて
  まんざらでもなさそうなとろりとした五重(!) まぶた、、、いや、
  三流映画というよりマンガだな、こりゃっという場面が展開し始めた。




        周りはみんな見て見ぬふりをしながらチラチラうちのママを見ている。
  ママは毅然としてお友達たちと楽しいおしゃべりにふけっていた。




                  『彼女 、怒ってないみたいだね。』



                『ニコニコしてるし気にしてないみたいじゃない。』




  たどたどしいドイツ語理解力の綾ちゃんの耳にさえこんなささやき声が
  聞こえて来る。あ~あ、うちのママ、頑張ってるよ。可愛そう。
        適当なところでパーティーを辞去したママと綾ちゃん、帰りの自動車の中で
  ママはもちろん、凄まじく機嫌が悪い。





               『酔っぱらいなんてだいっきらい!!!』
              


       『男なんてサイテー!!!』





    そうだね。こんな風に自由にしていたい男の人とは結婚しないほうがいいかも。





                                   


シュナップス
日本で言うと焼酎だね。強い果実酒です。


2014年2月27日木曜日

ドイツ、男と女の物語 ②






             ママから一方的に話を聞いただけのワンサイドストーリーなんだけどね。




               浮気をしたのはご主人の方、ある日突然別れ話を切り出されて激昂、
  すったもんだの末離婚。ママとママの実家に経済力があったので母子はそのまま
  家に残る。持ち家だしママの実家は地元の大きなクリーニングチェーンの
  オーナーでプール付きのでっかい家に住んでいる。この点はよかったね。
  ドイツには日本と違って「慰謝料」がほとんど出ないらしい。男女同権で
  女性も職業を持ってて当然だからね。請求できるのは「養育費」のみなんだって。




           今は職場の同僚が恋人で「公認の仲」だけど別々に住んでいる。
  週末に彼がお泊まりに来るだけ。私達がホームステイしてた時は「家族」の
  体裁を整えるためにパパ役として泊まりに来てただけなんだって。



            こんなのってあり?




        ママ曰く、もう、結婚はこりごりよって。男性との関係に縛られるのもごめんだわ。




通勤途中 車窓からの風景



ここは電車の倉庫




2014年2月26日水曜日

ドイツ、男と女の物語 ①





           これまで病院で出逢った「ヘン」な男女関係の最たる例はガルミッシュの
けれど、「別れた」男女がその後も普通に、少なくとも見た目はオトモダチとして
付き合っている例は多い。男女が婚姻関係にあって別れたとなると当然それなりの
修羅場があったんじゃないかと思っちゃうんだけど。そりゃあ、いつまでも反目
し合うのはオトナじゃない。だが、「積極的に」お付き合いするかなあ、って
不思議になっちゃうよね。





      私が生まれて初めてドイツにやって来たのは日本の大学2年生の春、大学のホーム
ステイ付き研修旅行だった。その時お世話になったご家庭はバイエルンの片田舎の
女の先生親子のお宅でママが婚姻関係を持たない同僚と一緒にいらした。
小さな田舎町で「別れた」ご亭主が次の奥さんとやはり近所に住んでいて、
通りですれ違おうものなら闘犬試合のショーよろしく互いに嫌悪のオーラを出し
まくり唾でも吐きかけん勢いだった。



     これはお互い仕事の都合で遠くへ引っ越す訳にもいかず(おそらくうちのママと
しては己に非が無いにも関わらずなんでアタシが引っ越さにゃあいかんのだ、という
意地の様な気持ちが働いてもいたのだろうけれど • • • )やむ終えずの形態
かもしれんが、なんか、昔の安っぽいドラマみたいな話だなあと思ったものだ。




  この頃綾ちゃんのドイツ語は全く片言だったのであまり立ち入った事情も
わかっていなかったのだけれど、だんだんに母娘との付き合いが続くにつれ
こちらもその度少しずつドイツ語も上達していく。ママから色々女同士の
話にもなる、ということでわかって来た事があったのだった。



           

バイエルン地方の代表的な食べ物
ブレーツエル、ビール、ハツカ大根
じゃがいも、どれも素朴なものばかり


          

2014年2月25日火曜日

ドイツ、男と女の物語    序

       



            ○○さんのご紹介、つまりトモダチの輪ってパターンで
      患者さんが次々に訪れることが多い。クチコミは偉大だ。




         でも安易に「この人とこの人はオトモダチ」なんて考えていたら
    意外と??ってことも多い。




           なんだか仕事はほっぽらかしで人間観察に余念のない綾ちゃんだが
    やっぱ面白いものは面白い。これってドイツというお国柄かと思いきや
    長らく日本を離れて暮らしている本人としては何が常識で何が常識外れなのか
    判断に苦しむこともしばしばだ。




       これまでここドイツで見聞きしてきた男女の仲ってやつそれからもちろん
 病院絡みのお話を語ってみたりしちゃおうかなっと考えているところです。








中国三大文学の一つ「紅楼夢」
人物挿絵の切り貼りです。




そして其の一人一人の人物説明(中国語)
なぜか綾ちゃんのお仕事


これについてはそのうち説明いたします。









2014年2月24日月曜日

これはセクハラなのだろうか?   其の弐

       



       その方はその日の朝、二番目の患者さんだった。男性。






  昨日が初診であったが夕方の綾ちゃん不在時。つまり、綾ちゃんは初対面の人だ。
 その方がいらしたとき綾ちゃんは最初の患者さんのお灸をしている最中だった。
 綾ちゃんが奥の部屋から戻ってくると、ドクターが二番目の患者さんのためにお灸に
 火を灯しているのが目に入った。すでに鍼を打った後らしい。



 
              『先生、こちら、お灸終わりました。次の患者さんは私が引き続き
      やりましょう。』





    いつものやり取りだ。が、しかしその日はドクターの応対がいつもと違った。
   



           『あ、いいよ。僕がやるから。』



  え??いいの?あるいはV.I.P.か?時々、いかなる治療もドクター本人からでないと
 「許さない」患者さんもいらっしゃる。まあ、ここはドクターの名前で看板挙げてる
 訳だからそれもいたしかたないが • • • などと想い描いた数秒間をドクターは
 あるいは別の意味に解釈したのかもしれない。私がいつもの仕事を「させてもらえ
 なくて」「不満に思っている」とかね。例えば、よ。例えばの話。



  ちょっぴり複雑な、というか何となく妙な表情を顔に漂わせながらドクターは
 一瞬の逡巡ののち、こうおっしゃった。




      『吉岡さん、患者さんのお灸はぼくがするけれど、あなたは後学のため        (???)側で見学しておきなさい。』





  はあい。よくわからんけど、まあいいや。んで、お灸を持ったドクターの後について
 一番の治療室に入った。お灸はいつもの棒灸。何だか難しい「ワザ」でもあるのか?




  ドクターはお灸と灰皿を一旦洗面台に置き、医療用ビニール手袋を取り出し
 両手にはめた。んん??何で?そして患者さんの下腹部の毛布をそっと持ち上げる。
 これは全然珍しい事ではない。下腹部の太陽叢にお灸をあてるのは補陽、
 つまり生体エネルギー補給の第一歩だからしょっちゅうだ。が、恐ろしい事に
 その患者さんは下着を着用していなかった。このケースは初めてではないものの
 実際珍しいことだった。ドクターはおもむろに患者さんの足を広げさせ
 患者さんの「ブツ」を持ち上げ(ああ、それで手袋!)その「裏側」に
 当たる部分をお灸で暖め始めた。ここは何ていうツボなんだ!?





      そのツボの名前はいまだにわかりません。
   その時のドクターの説明によると、この患者さんは重度の前立線炎で
  ここが一番のツボなんだけど鍼を打つよりお灸で暖めた方が効果的との事。 




   綾ちゃんは5分ほど見学していたがこれ以上見るべきものは無いと
  判断、『失礼します。』と言い放って退席した。
  受付のパソコンで早速検索してみたがイマイチわからん。尋ねる勇気もない。




   でも、これって、やっぱり一種のセクハラ?それともクールにお仕事って割り切る  ものかな?いつか綾ちゃんも「は〜い、失礼しま〜す」って言ってあんな風に
  しなきゃいけない日がくるってことかな?




          


      「ざ•つぼ」より ううん、わかったようなわからんような
   

2014年2月23日日曜日

これはセクハラなのだろうか?  其の壱








綾ちゃん夫が日本から帰って来た。





一週間だけだが仕事の引き継ぎだ。多忙を極めている。
夫の話題はとりあえずおいておくが、その夫が先日うちのドクターに
頼まれた買い物をしてくれた。書道の筆である。



ドクターは書道が趣味でヒマさえあれば毛筆で色々書いている。
ウソかホントか知らんが彼によると中国の筆は悪筆で中々良いものが
ないそうで、日本のものなら良質の製品が手に入るのではと夫に
頼んだものだ。写経用の極細筆をご所望だった。
主人の母も書道が趣味の人なので姑にも相談の上、
これが良いだろうと言う小筆を何本か買って来た。





もう、ドクター、大喜び。



早速試し書きして大感激。さすがニッポン!素晴らしい!!
いやあ、ご主人によろしくお伝えください。あのね、申し訳ないんだけど
これもこれもあれもそれも、つまり次に往復する時にまた買って来てもらえないだろうか
と、綾ちゃんに合計で200ユーロほどの現金を手渡しながら
おっしゃった。





いやあ、お忙しいのにスマナイねえ。ええっと時差や激務で
身体の消耗も激しいだろうから • • • と薬品庫に駆け込む
ドクターを見て、綾ちゃん即座に




『あのお、ドクター、いままで朝鮮人参なら十分たくさん
いただいていて(そう、彼は何かあるとすぐ他人に高価な朝鮮人参を
配る癖があるのだ)飲みきれないくらいたくさんありますから結構です。
お代もいただいていますし特に何もしていただかなくても • • • 。』




『何?朝鮮人参は十分だって?ようし、それじゃあ。』




と、いただいたのがコレ





虫草鞭丸


これはね、素晴らしい精力増強剤なんだ。
ご主人もきっと気に入ってくださると思う。








ネットで検索してみるとホントにそのテの丸薬だった。
「中国古来から伝わる高級漢方薬材「冬虫夏草」を主原料とする画期的な性機能改善、精力増強剤」とある。




これってセクハラ???




2014年2月22日土曜日

エコバッグに感動しました。

   




         ドイツにdmというドラッグストアチェーンがあります。





        綾ちゃんはこのdmが好きでよくここでお買い物します。ドイツにしてはかなり
色んな部分が行き届いていると思う。Bioの商品が安く色んな種類そろっているのもいい。ちょうど楽譜を入れる手頃な手提げ袋が欲しくて買い物用のエコバッグのお洒落なのは
ないかなっとdmを覗いてみたらあったあった。綾ちゃん好みのライトブルー。
派手な模様とかは苦手なので単色がいいな。










             これもbioの素材仕立て。2ユーロ。しかも、、、


   ダメになってしまったり、もう気に入らなくなってしまった時にはいつでも新品と
交換もしくは返金いたします、ってわざわざ書いてある。









     偉いなあ、と真剣に感心しました。相手への思い遣りに満ちている。このバッグを
作った「信念」を明確に打ち出していて共感を持ちました。綾ちゃんはあまりエコだの
ビオだの好きじゃない。好きな時期もあったんだけど社会の利害やお金もうけの手先に
なったようなファッションみたいな感じがし始めてどうもダメになっちゃった。
「本当に良いもの」が判りにくい時代だ。


     このバッグはきっと静かなブームを呼ぶんじゃないだろうか。

2014年2月21日金曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ⑧















                  しかし何の成果も出せぬまま月日は流れて行った。


  シェーンさん(仮名)はドクターに指示されるまま週に二度うちに顔を見せ治療を
受けて行った。内容は毎度ほぼ同じ。指圧にお灸、梅針と生姜、時々漢方薬を
処方される。吸玉療法をすることも。









       家に帰ってネットで検索してみると、西洋医学ではステロイド注射
(ここでもステロイド!!) 以外では脱毛部分に軽く傷をつけたり薬品で軽く炎症を
起こしたり火傷っぽく刺激を与えて毛根の再生力を呼び覚ますらしい、、、って、
これってうちの治療と一緒じゃん。あとは正しい食生活と質の良い睡眠をとり
ストレスをなるべく減らす。若年性脱毛は必ず治るけれど最低でも半年は必要と
書いてある記事もあった。







3ヶ月ほど彼女は通院してくださった。が、ある時息子さんの
具合が悪くなって予約を取り消し。その後息子さんは盲腸炎と
判明、緊急入院でばたばたなさったせいか、ぱったり足が遠のいてしまった。
まあ、治療の成果も出なかったことだし無理も無いか、と
あきらめていたところ、それから更に3ヶ月ほど経って
彼女からお電話をいただいた。





『髪の毛が生えてきました。』って。
ほほう、「最低6ヶ月」の記事はまんざらウソでもなかったようだ。





先日彼女がお花を持ってご挨拶に見えた。
もう今は完全に元に戻って付け毛は一切無しだって。良かった。
本当にね、五体満足とはよく言ったもので
昨日まで当たり前に思えてたものが無くなるというのは
かなり惨い試練だと思う。



綾ちゃんもいつもお役に立てているばかりではないけれど
そんな皆さんから学ぶ事は本当に大きくて重いです。





2014年2月20日木曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ⑦






  『先生、私、怖いんです。このまま髪の毛が戻らなかったら、
     いいえ、もっと酷くなってしまったらどうしたらいいのかって。
ああ、恐ろしい!』





そうだよね。男の人ならまだしも、こんなにお綺麗で順風満帆に見える方が脱毛症
だなんて。同じ女性として大いに同情します。






  『大丈夫だから心配しないで。心配すると身体に良くないから
      この問題は私に預けて出来る限り明るく楽しいことを考える習慣が
必要ですね。』





  ドクターはそうおっしゃって慣れた手つきでひょいひょい鍼を打つ。綾ちゃんは
脇でお灸に火をつける。脱毛症の部分にいくつもの鍼が刺さった。境界線をぐるっと
囲むように。あとは身体の色んな部分に鍼を刺していく。ええっと、これはいわゆる
腎経だ。ドクターからも足の腎経を棒灸で温めるよう指示が出る。









果たして彼女の髪はドクターの治療で戻るのかしら?










ドイツでも回転寿司は大人気。
先週の日曜日、日本にご帰国のご家族の招待(!)で
お寿司を食べに来ました。いやっほ〜い!食べ放題!!




ご覧下さい!巻き寿司の中身はいちご🍓です。
白い部分はクリームチーズ。
決してウマくないのはわかっていたが恐いもの見たさと
写真撮りたさに取ってしまいました。
お味は、ごはんといちごとクリームチーズの味がそのまま
バラバラにしたというだけの代物でした。



2014年2月19日水曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ⑥









     『先生、シェーンさん(仮名)の指圧終わりました。』






いつものようにドクターを呼ぶ。すると、





     『ハイ、じゃあ吉岡さん、台所に行って生姜(しょうが)をね、
        5ミリ厚さくらいにスライスして3枚ほど持って来て。』




 はあい。中医学において生姜はとってもエライ存在である。身体を温めるし
のどにもいいし胃腸にもいいし、外用にも良く使う。煎じ薬にもしょっちゅう
使うからお台所の野菜かごにはいつも生姜がどっさり入っている。
今日は何に使うのかな?お灸かな?日本でもせんねん灸みたいなヤツを
生姜のスライスの上に乗っけたりするもんね。うちでも時々やるからね。




 生姜をスライスしてシェーンさんのお部屋をノック。するとドクターはおもむろに
小さなハンマー状の剣山のようなものを取り出しているところだった。
おお、これは何だろうと以前から気にかかっていた代物だった。




            



以前、綾ちゃんがドクターに「これって何に使うんですか?」って尋ねたら
これも一種の鍼だよっておっしゃってらした。「梅針」というらしい。





 西洋の自然療法が専門の綾ちゃんは、これはドイツのレーベンスウェッカー
(生命の目覚まし!!)と呼ばれるバウンシャイト療法の道具に似ているなあ、と
思っていた。




         

                           これがレーベンスウェッカー




 バウンシャイトというのは人の名前でこの技を編み出した人なんだけど
日本では長野県などに伝わる「蜂療法」が一番近いかも。蜂に刺されると
リュウマチなどの筋肉痛その他が良くなる、という発見から蜂に刺された
感じを人工的に作り出す療法です。
剣山の部分がバネ仕掛けになっていてハンコみたいにポンポン打っていく道具です。




 ドクターを見ていると「梅針」(こちらはバネはなし)を患者さんの脱毛の部分に
打ち付けてちょびっと血がにじむまで傷をつけている。うわっ、痛そう!
そこに今度は綾ちゃんが生姜のスライスをこすりつける、という段取りでした。
うん、やっぱり似てるぞ、バウンシャイト。






2014年2月18日火曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ⑤




         『頭のマッサージ?それは素晴らしいアイデアだわ。是非、お願いします。』






        患者さんから許可をいただいて、そろそろと頭部を揉み始める。百会(ひゃくえ)というのは頭頂部の有名なツボ。上半身のエネルギーをつかさどると言ってもいいかも。その百会の部分に親指を持っていくと何やら金属の感触が。こりゃあ、私の時代(!)には「カッチン止め」と呼ばれていた髪留めだ。






                  『髪留め、お邪魔かしら?』




                  『いえいえ、そのままで結構ですよ、おほほ。』





な~んてね。そりゃあ、髪留めなんて無いほうがいいに決まってるけど指圧はやって出来ないわけじゃないし、何より綾ちゃんには髪留めを取ってもらって彼女の「秘密」を剥ぎ取る勇気が出ない。


                  そう、彼女の悩みは「円形脱毛症」。




      髪留めは全部で3個。その部分が付け毛なんだ。



      おいたわしや。カルテによれば、特に思い当たる節もなく、突然降り注いだ「悪夢」とのこと。ご主人は内科医で皮膚科で出来る限りの治療は行ったが脱毛は進行するとばかりだという。





          ドクター、期待してるよお!!!






            


             今は「パッチン留め」というらしい






             

『知っておきたい15の特効ツボ』より


2014年2月17日月曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ④





                 半年以上前のことだ。





    40歳前後の身なりの良い女性が新患でやって来た。うちの常連の患者さんの
ツテだった。専業主婦なのにプライベート保険加入者だからお金持ちさんに違いない。
上から下までバッチリブランド品で決めている。髪型も身のこなしも隙がなくて、
良家のお嬢様育ちかもしれない。豊かな金髪をきっちりまとめてああ素敵。




     彼女を紹介した「常連」さんたちというのはいつも不定愁訴でやって来る方々で、
正直、綾ちゃんの目にはお昼寝しにうちに通いにいらしてるように見える。
彼らの仲良しでしょっちゅうパーティーしてるということだったから綾ちゃんは
てっきりこの方もそういう感じなのだと思っていた。




     指圧も特にドクターからの指示はなく綾ちゃんスペシャル全身コースでいいみたい。
でも一応、カルテには目を通す。そして知ってしまった。彼女の「病気」を。そうか、
そういうことなんだ。




    足から始めてだんだん身体の上の方に向かってまんべんなく経絡の重要ポイントを揉みほぐす。ドイツのマッサージではあまり頭のマッサージはポピュラーではなくって日本の床屋さんみたいに首から頭部をもんだげると感激して下さる方が多い。ううん、今日はどうしよう、って絶対するべきだと思うんだけど、どうしよう。



      ご本人に尋ねてみるのが一番いいよね。








これは政治家シリーズ
全部ドイツの政治家です。



王室シリーズ
ここまでくるともはやドイツのお土産とは言えない。

その他、ガンジー、マンデラ、マザーテレサなどの
ノーベル平和賞シリーズとか
ポップスの歌手(これは一人も知ってる人がいなかった)が
ありました。

2014年2月15日土曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ③








「失くして」しまってらっしゃるかどうかは
正確にはわからないんだけれど • • • 。




男性泌尿器の部分にプラスチックの器具をつけてらっしゃる
患者さんがいる。この患者さんも初めてお会いした時には
動揺してしまった。悟られていない事を願うばかりだ。



綾ちゃんはは現在半日勤務のパート状態なので
全部の患者さんと顔見知りな訳ではない。たまたま綾ちゃんと
初対面の場が治療の最後で鍼を抜く場面だったりすると
綾ちゃんは簡単な自己紹介をするだけで特に患者さんのカルテを
事前確認してから対面する訳ではない。




『初めまして。アシスタントのヨシオカです。
それではお時間ですので鍼を抜きますね。』



なあんて明るく言って鍼を抜きにかかる。これも前もってドクターから
鍼を打った場所を知らされている訳でなく、患者さんとお話ししながら
だいたいの当たりをつけて鍼の場所を探していくのだ。
困った事になった事は一度も無い。
止血のための消毒ガーゼを左手にもって身体の各部分を点検。
頭部など見えにくかったり見逃したりする事があるので
必ず皮膚をなでながら患者さんと一緒に確認する。下着を一度開けて
鍼を打つケースもままある。これは患者さんに口頭で質問。
さすがにパンツを一度脱いで鍼を打たれたケースでは患者さんが絶対
覚えているのでこれも問題無し • • • のはずだったんだけど。



この時は患者さんの泌尿器周辺にいっぱい鍼が打ってあって
正視せざるを得ない状況だった。う〜ん。いくらええ年こいたオバはんでも
患者さんにとってはこの姿を女性に見られるのは苦痛なんじゃないのかな、
と思ったり、(後にカルテを読んで知った事だが)彼は大学病院で
手術を受けたばかりだったので看護婦さんに見られるのは
もう慣れっこなのかなあ、と思ったり。




割り切るしか無いんだろうけれど、やっぱり、これが自分のことなら
やっぱり辛いと思うなあ。









今日、デパートで発見。これ、テイーバックです。
上からゲーテ、ダンテ、ヴォルテール、シラー、シェークスピア。




2014年2月14日金曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ②







人間って強いよね。


いや、生き物って素晴らしい。生命力の神秘だね。




そんな風に感じるのがこんな時。



身体の一部分を「失くしてしまった」患者さんに出逢う機会は
結構多い。よく出逢うのは、かつて乳がん手術によって乳房を失った女性だ。
ヨーロッパは日本より乳がんの発生率が高く、従って乳房を持たない女性が
後に別の症状でうちに来る事が多々ある。
意外にも乳房再建手術を行っていない方は多いのだ。




そういえば • • •


もう、ずいぶん昔の事。綾ちゃんは日本で大学生の頃茶道を習っていた。
綾ちゃんのお師匠様は綾ちゃん父と同い年の方で
けれど驚くほど可愛らしい小柄で愛らしいチャーミングな方だった。
その方がある時乳がんで手術となった。



1〜2ヶ月ほどお稽古が中断したあと何とか再開の運びとなり
綾ちゃんはいつものようにお稽古に出かけた。
すると、お師匠様は綾ちゃんのお点前をなんだか不思議そうに
見守った後、おもむろにこうおっしゃった。



『ああ、そうよねえ。今どきの二十歳前後のお若い方って
皆さん、あなたのようにひょろりと痩せてて、そしてペチャパイ(!!!)
なのよねえ。(悪うござんしたねえ!!!)
私だって他人から見て特別変じゃないのよねえ。』




ハイ、おっしゃるとおりでございます。




だけどあの頃私はお師匠様がどれほど辛い想いでその言葉を
発せられたのか想像もつかないでいた。
何となく、そうでも言わないと収まらない何かがあるんだろうな、っと
思った程度だった。






ちなみにこのお師匠様、この手術から約十年後、65歳くらいの頃
20歳以上年下の恋人が出来て「駆け落ち」事件を起こしました。
その5年ほど後に今度は別の病気でお亡くなりになったそうです



素晴らしい波瀾万丈の人生ですね。
駆け落ち出来るほど激しい恋に落ちたという事は
身体のハンディをある意味乗り越えなきゃ出来なかったんじゃないのかな?







先日、買い物帰りにものすごく「妙な」動きをする
飛行物体を視認。UFOだといいなあっと思いながら
シャッターを切りました。
これでは何の事やらさっぱりわからん写真ですが
お月様の下の方に小さく光る星の様なものが「それ」です。










2014年2月13日木曜日

なくしてしまったもの ~それが身体の一部なら ①





                        「大工さん」がやって来た。患者さんとして。





   去年、職場で事故に遭われたとかで今もむち打ちに苦しんでらっしゃるらしい。
さてえ、今日の綾ちゃんの出番はマッサージ。こういう時は指圧なんて関係なし。
筋肉をほぐすために背中の痛むところをぐいぐいもんだげる。不思議なもので
経絡とかツボとか考えない普通のマッサージのほうが綾ちゃんとしては楽チンに行える。






             『ああ、気持ちいいねえ。』





って言ってもらえてこっちも嬉しいよ。







    ふと何気なく患者さんの手元に目が行って一瞬ぎょっとたじろぐ。左手の親指の
第一関節に当たる部分がない。良く見ると人差し指も中指もそれぞれ第二関節までしか
ない。そうなんだ、この方、きっと「事故」の際に手もお怪我なさったんだ。
お気の毒に。ハンディを持ったまま職場復帰は並大抵ではなかったはずだ。





   そういえばうちの二男お世話になっている楽器屋さんはプロの音楽家の間でも
評判のいいマイスター職人さんのお店だけど、そこのおじさんも片手が不自由で
いらっしゃる。いつも器用にひょいひょい仕事なさってるけど常に危険と
隣り合わせなんだろうな。





        もちろん綾ちゃんは見て見ぬ顔をする。



  ここは病院だからこういうケースの患者さんにも出くわすことが多い。いちいち驚いてはいられないということもあるが、身体の損傷は心の傷に繋がっているに違いないからね。ま、普通の状況でもそれがマナーだよね。







先日ミュンヒェンの中心マリエン広場
夜7時過ぎ。空の色が怪しかった。


Foto by Jiro Y.


2014年2月11日火曜日

ドイツ青少年音楽コンクール ~ミュンヘン大会~ ⑤

  





                            そして迎えたミュンヘン大会当日初日。





   長男は一週間ほど前からいつもの「本番直前病」にかかり、「ピアノの練習」と
称してはピアノの周りをちびくろサンボよろしくぐるぐる回り(!)続け、ようやく
ピアノの前に座ったかと思いきや全然関係ない新しい曲を「指ならし」と称して
必死で練習していた。あ~!これってあるある。テストの直前とかに勉強が
手につかなくなっちゃって猛烈に部屋の片付けしたりとかしちゃうんだよね。




      二男は家ではのろのろ、だらだらの毎日だが練習はお友達と一緒で楽しいらしい。
綾ちゃんはアンサンブルに詳しくなくて一度だけ聴いた発表会での演奏が上手やら
下手やらさっぱりわからない。ていうかどれを聴いてもどれもすごく上手に聞こえて
しまう。『むちゃくちゃ上手なんじゃない?』って本人に訊いたら、『え〜?ひどかったじゃん。あっちも外したし、こっちはタイミングがずれたしetc』へえ、そうだったんだ。まあいいや。本音を言えばこれ以上二男の負担を増やしたくない。いや~頑張った、
いい思い出になったね(=残念だったね!)位が丁度いい。LINEを通じて(文明の利器って
素晴らしい!)息子のカルテットを日本で見た主人は「楽しそうでいいなあ。」って
つぶやいてた。とりあえずオッケーって程度の意味なんだろうなっと思いきや、
本番ではいきなり、、、、、









これは直前の発表会での様子
画像が悪くてすみません。
”エムフロザジ”(?)カルテットという
名前です。単にみんなの名前を一文字ずつつなげただけ。
どんな名前かはそれぞれ想像してね。



       ブラボーの喝采に包まれ満点1位! 弦楽アンサンブル部門最高点だった~!
おお、本番に強かった~!





        家に帰って自慢、自慢。兄をいらいらさせどおし。お兄ちゃんは翌日なのに
怒らせちゃったよ。まあ無理もない。弟にとってお兄ちゃんを抜く機会は
あんまりないからね。




        翌日お兄ちゃんは、というと、、、




  案の定緊張してドジってしまい弟ほどの成績ではなかった(*_*)がなんとか
セーフで切り抜けポイントひとつ落としたけれど州大会への切符を手に入れました。




     さて、次のステップは4月の半ば。また報告します。因みにコンクール1位入賞者はのちに「1位入賞者コンサート」が行われるのだけれど都合がつかなくて二人とも出演出来ませんでした。





2014年2月10日月曜日

ドイツ青少年音楽コンクール ~ミュンヘン大会~ ④








         二男は二男で去年、チェロソロ部門でコンクールに出場、州大会まで行った。
今年は関係な~い 、はずだったのに今年出場することになったのには訳がある。
昨年の大会の際、知り合いのヴァイオリンの先生に会った。この方はご夫婦で近隣の町の音楽学校の先生をなさっていらしてユースのオーケストラ指導で大変優れた実績を
お持ちの方だ。以前から彼らのオケに誘われていたが種々の理由で辞退していた。
何よりうちの二男は身体が強くない。以前、合唱団の活動と学校の勉強、楽器
(当時はピアノ)3つの負担がどのような悲劇を招いたかは以前ブログにも書いた。





       今回久々にオケの先生にお会いした。その先生(奥様の方)は2年ぶりに会う
うちの子に興味を示しコンクールでの演奏を大変誉めてくださった。その上で、
来年は一緒にカルテット(弦楽四重奏)をやりましょうね、とお誘いを受けた。
彼らのオケでは常時チェロの子供が不足しているらしく、本当に熱心に誘って
下さる。熱意にほだされた形でコンクールまでという条件で承諾した次第だ。




         


二男のカルテットはここミュンヒェン音大の
大ホールが会場でした。
ものすごく大きな本格的な大舞台です。
母の方が緊張してしまった。




2014年2月9日日曜日

ドイツ青少年音楽コンクール ~ミュンヘン大会~ ③

       

     




       ところで我が家は今年、このコンクールとは関係ないゆったりまったりとした
   冬を送る心積もりでいた。コンクールというのは普通のコンサートとはまた異なる
  緊張を強いられる。観衆はプレイヤーに好意を持っている訳でもないし、
  他人と比較されたりあら探しされたりとにかく「結果」のお土産無しにいいこと
 なんて何もない。






          スポーツならともかく、「芸術」で他人と「競う」是非はおそらく誰の胸にも
一度は去来する疑問じゃないだろうか。この感性は、たとえそれが子供の演奏家であっても自然と溢れてくるもののようだ。だからプロの音楽家でそのキャリアをコンクールに
全く頼らず大活躍している人もたくさんいる。(反対に有名コンクール優勝者で
消えていった人も多い訳だしね。)




            ところが、ところが、コンクールなんてえプレッシャーは子供には負担が
大きいだけだろうと思いきや、そのスリルとサスペンス(?)を楽しみたい心も
半分あるらしく、今回何と子供の方から出場宣言が出てきたのにはたまげてしまった。




         幼い頃から本格的な音楽教育を受けて来た長男は3年前、この同じコンクールの
同部門で全国大会2位入賞した。ドイツで義務教育を終えるこの秋、当然音大進学を
志すものと期待を寄せる周囲に向けて「普通科大学」進学を宣言して周囲を驚愕させて
から2年近くが過ぎた。最近は大して練習もしなくなってしまった息子の姿に親も
このコンクールに対して半ば興味を失ってしまった頃、今度は突然の出場宣言、
一体なんじゃそりゃあ。



        まあ、こういうところがこのコンクールの面白い一面で趣味の子だって十分
参加し甲斐があるのだ。私は個人的にこのコンクールは日本でいうと(毎日コンクールとかよりむしろ)甲子園に似ていると思っている。甲子園に出場するような優秀なプレイヤーの子だって普通に進学の道を選ぶ子はいくらもいる。だけどだからって「本気」じゃない訳じゃない。その子の中で大切な部分を占めてるものの価値を再確認する、そんな
役割をはたしているんじゃないだろうか。






スタインウエイハウス入り口









フジコヘミング  ショパン「革命」
この曲今回弾きました。

2014年2月8日土曜日

ドイツ青少年音楽コンクール ~ミュンヘン大会~②





                    このテーマは漢方とは何の関係もありません。
             あしからず。





 このコンクールについてひととおりの説明を試みてみよう。
参加資格は年齢のみ。オルガンと声楽を除き(27歳!以下)21歳以下であること。
国籍や居住地、プロ・アマの別は問わない。もっともプロ活動してる人は普通
出ないけど。でもドイツ人でプロになった音楽家はまず皆このコンクールを
通過している。ユリア・フィッシャーさんとかアリス沙羅・オットさんとか。



 毎年一月の末あたりから各地方で地方大会が行われる。全ドイツだから大変な数だ。
楽器はほとんど考えうる限りのものがある。ピアノ、ヴァイオリン以下弦楽器、フルートなどの金管クラリネットなど木管楽器、打楽器、声楽etc。そしてこれらの組み合わせ。
クラッシックだけでなくモダンやポップなども部門がある。ジャズは別にコンクールが
あるらしい。一昔前はこれらの楽器も組み合わせの可能性ももう少し制限されていた分、ピアノやヴァイオリンなどのメジャーな楽器は毎年ソロ部門のコンクールが
あったそうだ。が、現在は各種目が3年に一度のルーティーンとなっている。つまり、
3年に一度しかないチャンスなのだ。ね、オリンピックみたいでしょ。
それぞれ楽器や組み合わせごと、年齢に応じて曲目の時代と組み合わせ、演奏時間が
細かく定められている。


                               

           
       ミュンヒェン会場本部はかつてヒトラーの総統官邸だった
             事で有名なミュンヒェン音大です。







 10歳以下の子供たちはお祭りはここでおしまい。規定の点数によって
1位25点〜21点、2位20点〜17点、3位16点〜13点と定められている。
あとは参加賞。1位、2位というよりは金賞、銀賞と置き換えた方がわかりやすいかもしれない。



 11、12歳の子は1位の中でも23点以上の者が州大会へ進める。13歳以上の子は
州大会で24点以上をとると全国大会へ歩を進める事が出来る。もちろん審査はどんどん
厳しくなるし参加者のレベルもどんどん高くなって来る。





2014年2月6日木曜日

ドイツ青少年音楽コンクール~ミュンヘン大会~






            ここのところ毎年冬が近づくとにわかにこのテーマで子供の周辺は盛り上がる。



                                            ドイツ青少年音楽コンクール




    コンクールというかお祭りみたいな感じですね。なにしろ出場料無料(寄付金歓迎!)、
一位大量放出(ええ!?)、でも賞金や奨学金なども用意してある半官半民ドイツ国を挙げての一大イベントでドイツで音楽を習っている子供の大半はアソビの子も趣味の子も
本気の子も出場する。州大会以降は毎年開催地が変わるため開催地に選ばれた土地
(たいてい僻地な田舎)の宿泊•飲食施設、交通は賑わうので町おこしも兼ねている。



    国際コンクールではないため「本気」の子は二の足を踏むかと思いきや
そうはいかない。ドイツ中の各種音楽大学その他はここでの成績を専攻基準に加味する
ためむしろ「必須」だ。うちの長男はミュンヒェンにたった一つしか無い音楽学校
(ギムナジウム)に通っているが、ここは音楽のためというより学力が高いため
人気の学校で入学時に条件の成績をクリアした子供たちの中からさらにくじ引き選抜
となる。このくじ引きを避けれる条件が、この、ドイツ青少年音楽コンクールでの
入賞歴なのだ。他のコンクールでは(いかに有名でレベルが高くとも)だめなのだ。
うちの長男もまさかこんなことで役に立つとは思いもせず前の年に参加していたので
ラッキーだった。その他、ドイツでは16歳から若くて才能のある学生は音大に
特別予科生として入学可能だがその条件の一つにこのコンクールの全国大会入賞歴が
あるらしい。マストではないようだが。



    その大会にまたしても今年、うちの子たちはトライする事になった。










長男はピアノソロ部門
スタインウエイハウスのルビンシュタインホールが会場でした。




本番前に5分間だけピアノに触れる事を許される。
後ろの写真はルビンシュタインがスタインウエイに口づけている場面。



2014年2月5日水曜日

眠りたいの。 その 6








                今日もまた新しい患者さんが来る。





         笑っちゃうほどなだれ込んでくる患者さんたちには、ある「流行」があり、
まるで流感の如く同じ症状を訴えるのだ。もちろん患者さん同士がクチコミで繋
がっているケースも多いけどね。
そういえばネットでチャット仲間の患者さんが「リアル」の場としてうちの病院を
「オフ会」状態にしてたことがあったっけ。つまり、当人たちは面識がなかったん
だよね。それは肥満(!)サイトの仲間だったんだ。他人に言えない悩みをネット上で
分かち合う、なるほど便利な世の中だね。





  不眠に話を戻すけど、一般的に女性の方が眠りが浅い。原始社会において
狩猟しなければいけない男性は昼間の重労働に供えて熟睡、女性はねぐらで
子供や家族に異変が無いかいつでも感知出来るように神経が出来上がっている、
らしい。




 綾ちゃんは専業主婦だった頃はすごく眠りが浅くて、ちょっと心配事や
小さなストレスでもあろうものなら直ちに眠れなくなったものだ。まあ、
そこは専業主婦だから翌日お昼寝ってテがあるので気楽なもんだ。対照的に
綾ちゃん夫は布団に入ると1、2、3で熟睡してしまう。 



 ただ、眠れない時、信じられないくらい頭の中で心配事が増幅していって
胸がどきどきしたり叫び出したりしそうな恐怖に駆られたり、つまりパニック
症候群に陥りがちだった。だから不眠で悩む女性を見るにつけ他人事とは
思えないくらい同情しちゃう。
幸い綾ちゃんの場合、現在の職業に就いたとたん、全ての入眠障害は雲散霧消して
いった。ブルーカラーな肉体労働だもんなあ。神経は男性化させる事が可能らしい。



 あともう一つ、当時太り気味だった綾ちゃんはちまたの噂で「夜ごはん食べない
ダイエット」を敢行してみた。倖田来未さんがそれで痩せた、という番組を観たのが
きっかけだった。そしたらダイエットはともかく(いえ、すごく効果あるんですよ)
それより何より信じられないほど「深く」熟睡出来たのに驚いた。もう、自分は
死んでたんじゃないかと思うほど深く、深く、そして翌朝の目覚めの爽快な事!
胃腸と腎臓を全て休ませた状態では身体全体が「睡眠」を堪能できるのだ。



 ただし、これは誰にでも当てはまる事ではないらしい。綾ちゃん夫などは
空腹状態では夜中に目が覚めてしまう。上手い具合に満腹中枢が働いていないと
熟睡出来ないらしい。



       ううん、難しいもんだ。









              
倖田來未   好きで、 好きで、 好きで

     

2014年2月3日月曜日

眠りたいの。 その5





      今日の患者さんは自然療法士。またもやかなり「厄介な」人だ。





      何でまあ、アンタたちはそう揃いも揃っておしゃべりなのか。




      でもね、「病気」と直接かかわり合いがあるかどうかわからないけど
     女性って大変なんだよなあ、ってしみじみ想う。こういう人見ると
     思うんだ、いつも。




      ドイツにやって来てからたくさんの「高学歴の」女性と知り合いになった。
     綾ちゃん自身もそれなりに学歴は高い方なんだけど、それは日本での
     話だし、ドイツでは専門学校を出ただけの身分だ。
     今、ドイツではものすごい数の「女医さん」がいるし、おそらく若い
     お医者さんの大半は女性じゃないだろうか?博士論文を書いてドクターの称号を取る人の割合も女性の占めるパーセンテージがすごく増えていると思う。




                   そして明らかに女性のほうが身分や地位、学歴を誇示したがる傾向にあると思う。多分、「弱い」から。いろんな意味で。
例えば子育てをしていて、うちの子が赤ちゃんだったころ赤ちゃん同士のお付きあいでママ会を開いたりすると、自己紹介の時に高学歴の人は必ずそれを付け加える。「私はキャリアウーマンです」とか絶対言う。名前も「私の名はドクター○○です」とかね。男の人はそんなことないもの。おいおい、ハイハイグループだよ、ここは。そんなこと言って周りをビビらせてどうするんだ、て思ったことも一度や二度ではない。









         これも女性の悲哀だ。真面目で責任感の強い女性ほど肩に重くのしかかってくるものがあるに違いない。