惨めに滑稽に絶望的に訳の解らない状況を受け入れざるを得ない
グレゴール ザムザ。一家の長男で真面目な公務員で家族と信頼の絆で
結ばれていたはずのザムザ。しかし「変身」した彼は最も信頼厚い家族に
とって疎まれ忌み嫌われストレスの元凶でしかなかった。
大作家というのは本当に凄い。ね。カフカの名作「変身」に解釈の
必要なんて全く必要ないから。例えば「アル中に陥った義理の息子が
毒虫のように忌み嫌われその死を歓迎される」という、ある「現実」を
そのまま当てはめると「な~んだ、そういうお話だったんだ!」と
すんなり納得できる。もちろんうちの病院のおばあちゃんちのパターン。
グレゴールは別にアル中の息子である必要はない。世界中の家庭に
存在する「忌み嫌われ」る人間の代表だ。愛情に育まれ生まれ来た
生命が全て愛情に満ちた生涯を送る訳ではないのだ。カフカはラストの
シーンでぐっと背伸びをする美しく育った妹の姿に作品全体のアイロニーを
全て投影する。
そして綾ちゃんの目の前にはその「美しく伸びをする妹」の姿と
おばあちゃんがダブって見えた。
おばあちゃんは何度も繰り返し"erlöst "という言葉を使った。
これは宗教的な意味合いの単語だ。この言葉は単に
「救われた(gerettet)」のではなく「神によって」「魂」の「救済」が
行われたということだ。
2009 07 17 Tölzer Knabenchor Teil 1A
Motetten Felix Mendelssohn Bartholdy
綾ちゃんにとって魂の救済はこんな音楽。
手前味噌で古い画像ですが最前列の左から三番目が
うちの長男。まだ幼く可愛かった。
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