2016年4月10日日曜日

敬称を学ぶ重要さの一例(綾ちゃんドイツ語講座)




     随分昔のことですが実話です。綾ちゃんの日本の内輪では大変有名な話。




    綾ちゃんの大学の先輩にあたるHさん。大学時代ドイツに旅行に行った。
   確か彼は法学部の学生だったと思う。独文とかドイツ語と直接関わりのある
   専攻ではなかった。初級文法と基礎会話はきちんとお勉強していたけれど
   大学2年生の春だからドイツ語の実力や推して知るべしのレベル。




    彼はなんとミュンヘン駅構内でいきなりひったくりにあったのだ。全財産と
   パスポートが入っているカバンごとひったくられて外人労働者っぽい犯人は
   あっという間にホームを駈け去っていく。



    H先輩は大変だー!とすぐに反応して後ろを追いかけた!大声を出して
   彼に呼びかけたい。でも彼の語彙もドイツ語もたどたどしく表現力もない。
   待てー!!!と呼びかけようと思って唯一、彼の(日本で)勉強した文章を
   大声で叫んだ。



          WARTEN SIE, BITTE!!(どうか、お待ちください!)



     すると犯人はびっくりして立ち停まった。そして後ろを振り返った!


    H先輩はなんと犯人に追いついて、そして


      GEBEN SIE MIR DAS ZURÜCK, BITTE. (どうかそれを返してください)


   とお願いしてカバンを返してもらってきた、というのだ。 



   ひったくり犯は一体何に驚いたのかというと先輩の丁寧なドイツ語の物言いに
  ビビったのだ。普通はWARTE!(ヴァルテ!待てー!)で終わりだ。口に出して
  言ってみると大した違いがあるようには思えないが、ドイツ語を識れば識るほど
  この語感の違いは全く明らかで綾ちゃんはこの犯人の驚きが良く理解できる。



  おそらくこの犯人氏は誰かにこんな風に話しかけられた経験がなかったのだ。
  けれど立派ななりをした他人がこんな風に喋っているのは山ほど見てきたんだ。



   H先輩はもちろんこの犯人氏を警察に突き出したりなどしなかった。そんな
  こと考え付きもしなかっただろう。語学力の問題も時間の問題もある。カバンさえ
  取り戻せたらそれでいいのだ。そして図らずしもズイーで語られる文体には相手への
  尊敬の気持ちが込められていてそれを犯人は読み取ったのだ。
  そんなこと初級文法しか知らない学生には意図することなどできなかったに
  違いないのだけれど。



    だから我々はまず二人称を学ぶにあたってズイーから入らねばならないのだ。


         ドイツ語を学ぶとともに尊敬の表現を学ぶために。



         えへへー!綾ちゃんのちょっと一杯。詳細はまた今度。




   
 

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