『おい、オマエ、バーカ!(Du, doof!)』
こんな言葉で始まる教科書が存在するということが信じられますか?
でもこれが現実だったりします。ドイツでは第二次大戦以降施行された
移民政策とともに「外国語としてのドイツ語(=DAF
=Deutsch als Fremdsprache )」という学問が急速に発達してきました。
実は綾ちゃんがミュンヘン大学に留学していた頃このダフ(DAF)という学科は
綾ちゃんのような若きドイツ語教師の目にはとても進んだドイツ語教授法に
映ったものでしたが、今にして思うとあれは我々の求めていたものとは全く
別次元の世界だったのじゃないかしらと思うことしばしば。
もう随分以前から始まっているドイツ国内での目に見えぬ両極化現象。
ドイツの国内にどんどん「ガイジン」が増えてくる。彼らにドイツ語を
教えるため、つまり支障なくドイツ社会に適合してもらうため。
即ち、できるだけ文法は簡略な方がいい。実戦に即している方がいい。
二人称はドウーだけでいい、そういうドイツ語が我々の住んでいる世界の
裏側にじっとりと棲息しているわけなんです。
例えばうちの病院でつい最近まで掃除を担当していた女性(ギリシア人)
などはその典型だった。綾ちゃんに対してもドクターに対しても奥様に対しても
全部初対面からドウー。アンタ、アンタ、アンタ。 動詞は全てマッヘン(machen
=英語のmakeに当たるが幼児語的にはdoの意)。
マッヘン エッセン(料理する?)、マッヘン シェーン(綺麗にする?)、
マッヘン、マッヘン、マッヘン。
見知らぬ人に声をかけられて、しかもそれが何の躊躇もないドウーで
始まる質問だったことはありませんか?
『ねえ、アンタ、ヤパーナーなの?ニーハオ?』
そういうときにはこちらとしても軽々しく対応すべきではないし
毅然とした言葉の選択につて一考してもらえたらいいなあと思ったりする
綾ちゃんでした。
家族の一員のように親しい関係になろうよ、という本来の意味のドウーと
ここで話題にしたドウーの性質がそもそも異なるということを理解して
いただけましたでしょうか?
お天気良くなると綾ちゃん家ご飯の写真が充実してきます。
魚介のパスタが簡単豪華でいいねえ。
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