2013年3月22日金曜日

夫と妻と犬と私  ④






      ガルミッシュのおばあちゃんはキビシイ。


    とにかく今度という今度は潔癖性をどこまでも貫いている。



 まず、朝7時過ぎにに病院にやって来る。私は6時15分には病院を開けて
一日の準備を整え最後に患者さん用のお茶(ジャスミンティーに中国ハーブを混ぜたうちのオリジナル)をポットに3杯分沸かす。私はそれとは別におばあちゃん用にお白湯を
用意して一人用の陶器ポットに入れておく。彼らは皆、猫舌族だから室温に冷めていなくてはならない。


 そのころおばあちゃんはやって来るが(5分ほど遅れて車を駐車場に入れた息子もやって来る)なぜか手にはキッチンペーパーを持っている。
ドアの取っ手やエレベーターのボタンを押す時に感染を防ぐためだ。


     『吉岡さん、おはようございます。』そして握手は行わない。徹底している。



     『吉岡さん、トイレの消毒薬が切れかけているわ。薬用ソープも。』



 ひゃああ、キビシイ!前後してドクターもやって来る。普段ならまずはお茶を飲みながら四方山話とともに体調の話に持って行き。さりげなく問診をするところだ。
が、今回はおばあちゃんの具合が悪いのでおばあちゃんは治療室へ直行。
お白湯を持って。
パーシーはゆっくりとお茶を(冷ました後)3杯くらい飲み待合室に置いてあるスナック類を一通り賞味する。そののち、やはり(別の)治療室に入る。彼は喘息持ちなのだ。




 おばあちゃんは暖房の効いた部屋でゆっくりと服を脱ぎパンツ一枚になって
診察台に横たわる。お気に入りの毛布とともに。ふとみるとベットの脇にまたもや
キッチンペーパーが敷かれている。床を裸足で踏んでばい菌をつけないようにだ。


  『今週いっぱいに便通が無ければ強制入院なの。レントゲンを見たでしょう?
  S字結腸が明らかに細くなっていて、ああ、入院したら絶対手術だわ。
  そして人工肛門処置をされてしまうのよ。』



 ううん、本当にそうかなあ。実は私、一昨年盲腸で入院したんだけど同室にやっぱり
腸閉塞で搬送されて来た女の人がいたんだ。最後の最後まで手術しなくていいように手を尽くしていたよ。手術も人工肛門は最後の手段だから他にも色々やり方があるみたいに
聞いてるけどなあ。でも、不安なのはわかります。おばあちゃんは80歳近い。



(つづく) 



ドイツ最高峰ツークシュピッツエ(2962mだったかな?)ガルミッシュにあります。
展望台の風景。実はケーブルカーが動いていて誰でも簡単に行けます。登山だと丸二日はかけないといけないらしい。

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