精神科医である彼は女性心理に詳しい(?)のか毎日私を喜ばせる
「しかけ」を用意して来る。見ようによっては、私を口説こうと思っている
としか思えないはしゃぎぶりだ。
『吉岡さん、今日の新聞に「古き泉」という詩が載っていたよ。
誰の作品かわかるかな?一つ朗読してみよう。』
(女性に詩の朗読をして喜ばせようなんてなんとクラシック!)
『さて、ここで問題です。世界中のソロコンサートに自分のピアノを
運び入れていたピアニストの名前を当ててください。』
どちらも私にとっては易しすぎる問題。ちなみに最初のはカロッサで後のはポリーニ。
私にとって易しすぎる導入に始まってお互いが楽しめるような話題に少しずつ持って行くという心憎い演出。
私の子供がかつてテルツ少年合唱団に属していたときいて喜ぶのなんのって、何と
彼はテルツ少年合唱団の創設者兼指揮者であるシュミットガーデン教授の音大時代の
ご学友らしい。
もう、本当に毎日毎日彼との会話が楽しみでしようがない。そしてガルミッシュのおばあちゃんの治療に当たっては彼女の人生に涙するのだ。ああ、なんてひどい夫を持って
かわいそうな目にあったのだろうって。
私とドクターはただただこの二人の元夫婦に翻弄され続ける一週間を送った。
(つづく)
テルツ少年合唱団。画面の前列中央に映っているのが
長男。ただし3年前。
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