2013年3月8日金曜日

プロフェッサーのお友達 ⑫




      次の週、私は一通の手紙を受け取った。クリングさんから。



 クリングさんは良家の由緒正しいお嬢様だ。ミュンヒェンのご自宅の他に
あちこちに別荘をお持ちでプロフェッサーは彼女のウイーンの別荘にある
ベーゼンドルファーのグランドピアノ(最高級!)でいつも練習させて
もらっていたそうだ。
そんな彼女の手紙らしい、クリングさんオリジナルのチェンバロの透かし模様の
はいった封筒と便せんだ。アメリカに帰国前にお礼の手紙をしたためてくださった。
とても丁寧な言葉でただただ感謝の言葉が連ねてある。誠心誠意の治療とこの上ない
新しい友情にって。


 言葉もない。たった数日のおつきあいだったけれどもう何年も識っていたかの
ように仲良しになれたのに。そんな大切な関係も治療の結果がついて来なければ
おしまいなのだ。


 実は経験上、この危険性を予測しないでもなかったから、恐れていたから
裏目に出てしまった今回の失敗が悔やまれてならない。でもどうしようもない。
たった一週間のミュンヒェン滞在だったのだ。集中治療も本人のたっての希望で
らしたのだ。



(つづく)

清涼油。ちっちゃいちっちゃい小瓶です。ハッカ油で色々用途があります。頭痛の時に
うなじやこめかみに塗ったりね。筋肉痛や自然の虫除けとしても。










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