2013年3月27日水曜日
夫と妻と犬と私 ⑦
彼は彼で大変感動していた。
とても病院とはいえないうちの病院の全てに大感激していた。これは「ふり」では
無かったと思う。ドクターとお茶を飲みながら歓談したりごはんを食べたり、
私もたくさんお話をした。彼は病院にやって来てまさか文学修士号を持ったアシスタントがいるとは思っていなかった(そりゃあそうだ)ので大いに驚いてくれて
文学の話、音楽の話、医学の話、もうお互いに話題は尽きない。
ああ、彼ってなんて素敵なのおってとろんとしながら施術を終える。(彼はくるぶしの
複雑骨折の後遺症に苦しんでいらした。)そしてその足で今度はおばあちゃんの
治療室へ向かう。
一旦ドアを閉めるとそこにはおばあちゃんと私だけが培って来た二人だけの「空気」
がよみがえる。
これがプロってことなのか私ってただただ節操というものが無いだけなのか
すううっと彼女の「反 • 元夫、嫌 • 元夫」の空気に包まれる。そうだった、
彼女の病気の原因はあの元夫だったんだ。彼女はかなり神経がまいっているらしく
あるいは彼のペースに流されないようにと私への警告なのか、彼のエゴイスティックな
過去を暴く。なぜ彼と別れなければならなかったのかを次々と説明する。
『彼と結婚した直後にね、私、彼から誰とも交際しちゃいけないって
言われたのよ。なぜって彼は北ドイツの出身でしょう?私のバイエルン方言が
恥ずかしくってしょうがないって言うのよ。パーティも一切だめ。公の場には
出るなって本当に禁止されちゃったの。』
あの、おばあちゃんのドイツ語ってかなり標準語に近いと思いますけど(パーシーは
すごいガルミッシュ訛りだけどね)、おばあちゃんの言葉のどの辺りがだめだって
ご主人はおっしゃったんですか?
『例えばイッヒ ハーベ( Ich habe =私は〜) って言わなきゃいけないって
イッヒ ハプ(Ich hab')なんていうとダメなんですって。』
嘘!私なんてしょっちゅう使ってる!こういういい方って学校で習うものじゃあ
なくって周りの人がみんな使っているから教科書的な用法より親しみがあるものかと
思っていたけれど。スラングというほどでもないしいいかと軽く考えていたけれど気を
つけなくっちゃ。私、ついさっきまで彼女の元夫との会話を頭の中で復習してみる。
ああ、いっぱい使っちゃったよ、イッヒ ハプ、イッヒ ハプって。ああ、恥ずかしい!
(つづく)
今日はマイ記念日。私が病院で勤めだしてから1年が経ったのです。
大輪の薔薇を一輪買って来て受付に飾りました。
(写真は別の方のブログから拝借したものです。スミマセン。)
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