2013年5月11日土曜日

南の島から来た彼女  21




       そこで私は決心した。ホーノルさんに勇気をわけてもらったぞ。



 翌日、午前中少し空いた時間があったので思い切ってドクターのお部屋をノックして
みる。先生は相変わらず一人で机に向かって古典のお勉強をしていらっしゃった。


  『あのお〜、ちょっとお話があるんですけどお。差し出がましい事とは思ったん
  ですが。昨日、ホーノルさんが受付のリノベーションのことでおっしゃったこと
  なんですけど、私、彼女が言った事、全部、まるきり正しいと思うんです。
  これまで先生のなさる事に口出しするのは良くないんじゃないかと思って黙って
  たんですけど、リードさん提案の受付セットはまるでドイツの歯医者さんみたいで
  ちっともうちの持ち味が出ないと思います。
  あの、私、この間の研修の時にもたくさん色々な点でリードさんの意見に賛同
  出来かねる事があって、あの、だから、今、全部は言えないので今度まとめて
  きます。
   とにかく、出過ぎた事言いますけど、私の目から見てリードさんは自分の
  利益にしか目がいってなくて、うちの病院の事を考えて下さってるようには
  思えないんです。危険だと思うんです。リードさんのお話を鵜呑みにするのは。』




 すると先生は(なんたって私が自分の意見を口にしたのはこれが初めてだったから)
かなり驚いてらしたけどやがてゆっくりとこうおっしゃった。



  『心配しなくて大丈夫だよ。実はね、僕も昨日、ホーノルさんがああおっしゃった時
  突然バットで頭を殴られたようなショックを受けたんだ。目が覚めたよ。そう、彼女  はよくぞ自分の意見を言ってくれたよね。
  吉岡さんはうちのスタッフなんだからいつでも十分意見を言ってもらわなきゃ。
  遠慮しないでこれからもなんでもどしどし思ったことを言ってくださいね。』



 はああ〜、よかった〜。とりあえずあのきざでクールなデンタル受付の話はおじゃんに
することができたよ。ありがとう、ホーノルさん。


(つづく)




              コーヒーも美味らしい
 




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