村上春樹は魅力的な作家だ。
私がこんなところであらためて論じるほどでもないが、ここドイツの本屋さんに
山積みになっている「1Q84」なんかを見ていると、いやはやすごい人気なんだなあ
とびっくりしてしまう。ハリーポッターか村上春樹かって騒ぎなのだ。誇張ではない。
人気があるだけでなく現代文学で数少ないホンモノの一人だ。
今、日本を知らない人に日本の文学を一冊紹介しろと言われても残念ながら店頭には
川端も三島も漱石もない。ダブル村上とか吉本ばなななんかは結構どこの本屋さんにもあるから喜ぶべきか憂うるべきか。で、一冊選ぶならやはり春樹さんの方となる。
私の感じる村上文学の魅力と言うのは多様な「解釈の可能性」にあるのだと思う。
少しでも文学と言うものをシステマテイックにかじった事のある者ならば、彼の作品に
見え隠れする古典の香りに道標を見いだしてしまって「統一的な」「解釈」をしてしまいたくなる。しかもその道しるべが、また、多種多様で、そこに溺れてしまうのが
妙なる快感だという不思議な「新感覚」だったりするのだ。
昔は、実は私は「アンチ」で、どうも、彼のそういうのが鼻について
しようがなかった。
はっきり、これは読む価値のある一冊だと思い知ったのは「ねじまき鳥クロニクル」だったっけ。そして彼の翻訳調の文体は海外で受け入れ易いものらしい。内容的に子供には不向きな箇所もあるけれど。余談だが私は「ハードボイルド〜」を日本語より先にドイツ語で読み始めて、後から原文で読み始めた時、日本語原文の、ある箇所を見て、『あっ、誤訳がある(!)』と勘違いしたという体験がある。あの原文の「翻訳調、というか翻訳節」はすごいものがあるのだなあ。
でも、妙な小難しい事は考えても考えなくても、「1Q84」は読み流すだけでも
楽しい一冊だと想う。ホーノルさん、楽しんでくれたかな?
カタルーニャ賞の「原発=核、ノーというべき」スピーチは
感動的でしたね。
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