2013年5月8日水曜日
南の島から来た彼女 ⑱
私は悩み深い日々を送っていた。
今回のリノベーションから始まった一連の「病院改革案」に私はとことん不満
だったのだ。特にリードさんがしゃしゃり出てきてからは全体の方向性とも言うべきものがとことん本質から外れているといわざるをえない。少なくとも私にはその確信が
あった。
でもここは私の病院ではない。
私は自分の性質上他人との境界線を踏み越えることにものすごく敏感な人間だ。自分が
領土侵犯される事が苦痛でたまらないから他人もきっとそうに違いないと思ってしまう。どれほど気が合わなくても、または大切な人に対しても基本的に自分の信念や意見を
押し付けることをしない。皆、それぞれ価値観や生き方がちがうからそれを尊重すべきだと思ってしまうのだ。
私はただのアシスタントな訳だから病院がどんなふうになろうとも自分の責務を淡々と
こなしていけばいい。それに病院という「いきもの」はそれ固有の「成長」や「歴史」と
いうものを持っているはずで私ごときが横槍を入れるべきではないんじゃないだろうか、
そもそも私が何か言って流れが変わったりするんだろうか?
それでも私が最後までひっかかってしまったのは、実は彼らが中国人だからだ。
(過当競争をしなかった頃の)共産圏の人間だ。しかも国民服を来ていた時代の、
である。
私が職場でドクターと同世代の中国人を見ていて思うのは、私と比べて「世慣れ方」が
ものすごく「遅れて」いるということだ。そしてその事を心の隅で恥じらっていて
西洋人が「ドイツでは〜」なんていうと状況を冷静に分析する事なくひょいと流されて
しまうのだ。おい、診察や治療のときの威風堂々はどこへいった〜!
誰かがそっと耳元でささやいてあげてもいいんじゃあないか。
『あなた自身のやり方でいいんですよ』って。『自信を持って』って。
おせっかいが大嫌いな私。職場では無駄口、陰口をたたかないおとなしい私。まっ、
これはドイツ語で生活してるせいだけどね。日本語ならぺらぺら綾ちゃんなんだけど
職場では物静かが売り物のフラウ ヨシオカなのさ。
(つづく)
おお〜!コスタリカ島周辺の海に泳ぐイルカたち
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