2013年6月18日火曜日

プロフェッサーの友情  ②




 今回は全て治療が上手くいった。ホテルに滞在してキッチンを使えないプロフェッサーのために病院の台所で彼の薬湯を煮出して飲ませる。残りは瓶に詰めてお持ち帰り。
一週間この繰り返しのつもりでいたが水曜日にはすっかり具合が良くなったので木曜日に
予定を一日早めてお帰りになる事になった。この日、ドクターはたまたま慌ただしい
一日でプロフェッサーに鍼を打ったらその足で在宅患者さんのところへすぐに向かわな
ければならなかった。ドクターは二週間に一度ほど訪問治療を行う。そんな時私は
電話番をしながら日々の雑務をこなしお留守番をするのだ。その日がプロフェッサーの
治療最終日になると思っていなかった先生はゆっくりとお別れが出来ない無礼を丁重に
詫びたあと慌ただしく出て行った。



 私はその日のラストの患者さんであるプロフェッサーのお灸をしながらいつものように
楽しい音楽の話を続けるつもりでいた。すると私が彼の治療室に入るや否や、彼はずっと以前からこの話題を出そうと決めていたかのようによどみない口調でこうたずねたのだ。



プロフェッサー『吉岡さん。あなたは音楽に興味がおありの方だ。もしかして日本で活躍       するピアニストで K • • • という人を知りませんか?』



 残念ながら私は全然音楽に詳しくない。「いくぶん好き」というくらいのレベル(?)だからそのKなるピアニストの名前も全然知らなかった。


(つづく)


                   


           今日は真夏日。洪水から二週間でイザール川の
          ほとりは海水浴場と化しました。
         (もちろん水害に遭った地域の方々は今も大変なんですよ。)

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