2013年6月30日日曜日

ドクターの負傷  ①



              今日は月曜日。



 ずいぶん早く出勤しました。今日はさして忙しい日ではないのだけれど一人だけすごく早い時間の患者さんが来る。時間に余裕を持ってばたばた準備していたら電話が鳴った。


     『スミマセン、今日、急に同僚が病気になってしまって私が彼女の
     代わりに早番で出社しなければならなくなりました。今日はキャンセル
     させてください。』




 ありゃりゃ。なんだ、キャンセル。次の患者は10時だからずいぶん余裕あるな。
今週、割とヒマなんだけどこんな時こそたまってる仕事片付けられるぞ〜。おっと、
その前にドクターのご自宅にお電話しておこう。慌てて朝早く来る必要ないもんね。


私 『もしもし。ドクターのお宅ですか?先生、もうお出になられましたか?』
奥様『いえ、今出るところですよ。』
私 『では先生にお伝え下さい。最初の患者さんはキャンセルです。次は10時ですので
  どうぞごゆっくりおいでくださいと』



 えへへ。久々にゆるりとした時間。ゆったりとジャスミンティーでも飲みながら書類の
整理でもしよう。うちの病院にはコーヒーは置いてないんだけど(中医学だからね。)
下のパン屋さんでコーヒーでも一杯買って来ようかな。



 • • • なんてゆる〜い雰囲気でくつろいでいたところ、不意にドアのチャイムが
鳴ってドアがちょっぴり開いた。うん?急患さん?私はドアの方を覗き見る。だけど
誰も入って来ない。ええ、何?やだ、何だろう?私はドアへ駆け寄る。すると私の
目の前でゆ〜っくりとドアが開き、私の知ってる人が少しずつ見えてきた。先生の
奥様だ。なんだか大きな荷物を引きずっている。あっ、それで入るのに時間が
かかったのね。お手伝いしましょ。




 奥様の「荷物」が少しずつ見えてきた。


         きゃああああ〜!!思わず大声を出してしまう私。


 奥様が引きずっている、というか抱えていたのは


            ずばりドクターその人、でした。


(つづく)






                我が家のコーナー
                    Photo by Jiro Y.

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