2016年2月29日月曜日

バイフース



     ところがドクターは患者さんにこれは何ってお灸を指差して聞かれた時
  


         『これはバイフース(Beifuß)です。』



    って答えるんだ。



                             

Beifuß

バイフースって日本語訳は何なんだろう?



こちらでは結構ポピュラーな香草で隣家の庭にもいっぱい生えていて
夏場になると毎年たくさんいただく。味わいはローズマリーに似ているかな?
お肉やお魚料理の時に一緒に煮込んだりフライパンに香り付けに放り込んだりする。


イタリアンでも結構活躍していてバターソースに香りを染み込ませて
パスタに絡めたりするとこっちの人にはそれだけで大ご馳走!



でもとにかく香りの方向性はヨモギとは似ても似つかない。




だから一度ドクターに向かって、バイフースはお灸じゃないですよ、
絶対ヴェアムートですよ、って教えてあげたことがある。



そしたらそうかいそうかい、ってその時は感心してくれたのに
何日か経ったら(多分ヴェアムートって単語を)忘れちゃって
やっぱり患者さんにバイフースですって説明していた。



もう、ドクターったら!って小さく憤慨していた綾ちゃんだったんだけど
最近チームに仲間入りした研修生のクリス(中医学の専門学校を卒業している
自然療法治療家)がはっきりとこれはバイフースと説明しているのを聞いて
突然、綾ちゃんは自分の自信がぐらついてしまった。



もしかして勘違いしているのは綾ちゃんの方だったの?って。



2016年2月27日土曜日

草餅ってジャパニーズオンリー?




      ヴェアムートを日本では食用にするなんていうと今度はドイツ人
     ばかりではなく中国人までがびっくり仰天。あんなに苦いのにどうやって
     食べるの?って。






      そういえばマイさんがヨモギを使っている場面を見たことがないなあ。
     待てよ。アジアショップでも中国のお菓子でヨモギ入りのお餅とか
     見たことないような、、?韓国はどうだっけ?トッポギとかさ。
     草餅ってジャパニーズオンリーなの?




      昨今、ジャパニーズフード流行りで巷にはWASABIとかMATCHAとか
     あふれてるけどね。グルメはYUZUだな。でもヨモギは取り残され組。
     多分、味わいがマニアックに渋すぎるせいだろうな。




      んでも、草餅、草団子こそ国宝級の食品なんだ。ヨモギの素晴らしい
     スーパー薬効を知っていしまった後となってはこれを食品に使わないテは
     ない!と思っちゃう。




      実はかく言う綾ちゃんも小さい頃はヨモギの香りが苦手であんまり
     食べなかったんだけどね。





            





2016年2月25日木曜日

ヴェアムートとおばあちゃんの知恵袋



      もぐさというのはニガヨモギの繊毛から作られたお灸の成分だ。



     ヨモギはドイツ語でWermut(ヴェアムート)だからずっと患者さんに
    そう説明していた。ヴェアムートと言うとドイツ人は必ずお酒で反応する。



         

          だからコナンファンしか通用しないって。ベルモット。

     ドイツでは薬局などにヨモギ茶のテイーバックなどが(胃腸薬として)
    売ってはいるが全くもってポピュラーとは言えない。でもベルモットという
    お酒の名前は皆知っている。有名な食前酒だからね。


             

                  ベルモット

     ちなみにヨモギというのは苦味成分が胃腸に良いので漢方薬の生薬としても
    使われるが外用、内服様々な用途がある。生命力の強い植物らしくドイツでも
    野山を歩いていると結構あちこちで見かける。止血作用もあるし湿疹にも
    効くから綾ちゃんママがドイツに遊び来た時など一緒に山登り中に誰かが
    手を切っちゃったとかかぶれちゃったなんていうときには即座にあたりを
    見回してヨモギを見つけると葉っぱを手で揉んで汁を患部につけてあげたり
    していた。さすがおばあちゃんの知恵袋!



     こんな話をついでに患者さんにしてあげると皆さん、一様に驚く。
    そもそもそんじょそこらにそんなにありがたい植物が生えているなんて
    思いつきもしないものね。

                 

ヨモギの葉



2016年2月24日水曜日

それなあに?




    綾ちゃんが病院に勤務していて1日に一度は向けられる質問が




          『(お灸を指して)それなあに?』




             お灸の説明である。



        そう、我々の施術の中で最も不可解なものがお灸。



     鍼はわからんなりにもすでにドイツでは立派な市民権を得た治療法。



     メリディアン(経絡、けいらく)なんていう言葉も患者さんはまずみんな
    知っていてびっくり。鍼治療に来るくらいだから基礎知識としてマスト
    なんだろう。綾ちゃんは自然療法の勉強を始めるまでこんな単語
    知らなかったよ。 




     これ以前にも書いたかもしれないけれど、お灸の説明をするのって
    結構難しいもんなんだ。




              

2016年2月23日火曜日

これぞ食の中華思想

              



      ウイキペデイアを鵜呑みにするのが良くないというのはコンセンサスだと
    思うんだけど、まあこのテの百科事典的知識はほぼ信用出来ると思って
    いいのかな。ピザの由来について。だが、




                        そこで意外な事実を知った。




                  ピザという食品はその固有の成立史があって葱油餅は当然のことながら
    そこに登場しはしない。




                   が、葱油餅を絶大に支持する中国人の間ではこの葱油餅信仰がいつしか
    一種の都市伝説を生み出してしまった。即ちイタリアの誇る国民的食べ物で
    あるピザの由来は中国の葱油餅である、という綾ちゃんが今目の前で聞いた
    ばかりのホラ話である。現在でも多くの中国人がこの説を信じて疑わない。
    そしてその立役者はいつもマルコポーロなのである。派生的に
    スパゲッティ=ラーメン説もあるらしいって、いや、綾ちゃん、それも
    たった今聞いたよ。



                    これこそ食の「中華思想」というやつじゃないかと思うんだよね。
    中国人がいかに自国の食文化に誇りというより絶大なる自信を持っているかを
    垣間見る出来事でした。




           

マルコポーロ


2016年2月22日月曜日

ピザは中国由来???




     葱油餅が出来上がると奥様が患者さんたちに振舞って回る。



         『中華風ピッツア食べて行きません?』



   この誘い文句はテキメンで大抵皆さん、ええ?なになに〜?と興味を
  そそられる。




   ピザかあ、日本のクックパッドには葱油餅は中華風お好み焼きって説明が
  出ていたなあ。日本の(本物の)お好み焼きとかトルコのラフマージュンとか
  だったらそれっぽいからピザって表現も良いけど。綾ちゃん自身はこれドイツ人に
  なんて説明しようかなあって考えて、やっぱ(甘くない)デニッシュとかパンの
  方向かなあとアタマをひねらせていた最中だったんだ。



           『ピザ?中国にもピザがあるんですか?』


   患者さんの質問に奥様、得意満面で



       『何言っているんですか。ピザの発祥の地は中国なんですよ。
       マルコポールが中国でこの料理を食してから感激してヨーロッパに
       持ち帰ったものがイタリアに根付いてトマトソースやチーズを 
       かけて発展していったものが今日のピザなんです。
       それを言うならイタリアのスパゲッティだって元は中国のラーメンで
       これもマルコポールがやはりヨーロッパに持ち帰ったものなんです。
       スパゲッティってスープの中に元々入ってた具材でしょ?
       これってまるきり中国のラーメンですよ。』



   と説明した。




    この時彼らの背後で経理の書類に没頭していた綾ちゃんは内心ひっくり返って
   しまって冷や汗たらたらで慌ててパソコンの画面でwiki先生を呼び出したもの
   である。




    少なくとも綾ちゃんはそんなめちゃくちゃな俗説は知らんぞ。
   年代的にだって無茶苦茶じゃないか! 




                                             

トルコのラフマージュン

2016年2月19日金曜日

葱油餅(ツォンヨゥピン)




      お料理のマイさん(仮名)が葱油餅(ツォンヨゥピン)を焼いてくれた。
     綾ちゃん、これ大ー好き。


                




      今日は朝から晩までうちの病院は予約でぎーっしり。戦場日和。
     午後は新しくスタッフになった研修生のクリス(仮名)もスタンバイ。
     ドクターの奥様も朝から詰めてくださっている。



      この奥様、胃腸が弱くって何故だかお米をたくさん食べられない。
     マイさんに「粉モノ」をリクエストするのは大抵奥様だ。賛成!賛成!
     大賛成ー!!そして特に我々の好物はこの葱油餅だったりする。ネギ無しのも
     あるけど綾ちゃんはネギ入りが一番好きです。



      マイさんはお料理のプロだからひょいひょいあっという間に作っちゃう。
     中華風パイ生地だよね。さくっとしててごま油が香ばしい。パンケーキと
     クレープの中間くらいの厚さの生地でわずかにパイっぽくさくさくっとした
     食感がある。綾ちゃん、クレープはどっしりしすぎだしパイははぐはぐして
     口の中に張り付く感触がイマイチ気に入らない。でもこれはちょうどいい。
     ごま油で焼くから香りがいいしねぎが入るとぐんと風味が上がって
     もう、言うことなし!



      仕事が忙しいとおなかぺこりんになっちゃう。そんな時にこんなご馳走に
     ありつける幸せ!最高!



            大満足の綾ちゃんです。

 

2016年2月18日木曜日

発音で教養がわかる?



     昨日の話の続きをしてしまおう。なぜ発音がきれいだとインテリジェントだと
    思われるのか?




     ドイツ人は外国人のドイツ語を聞く時に「耳から」のみの聞き憶えで
    学んだブロークンドイツ語か高等教育の一環として身につけたドイツ語かを
    一瞬で見分ける。社会階層意識の強いヨーロッパだからドイツ人にとって
    この能力は大切なんだ。何しろヨーロッパ内からたくさんの移民が流れ
    込んでくる。怪しい奴らもいっぱいだ。ドイツ語を学ぶのは日本人ほど
    苦労しない。なんとなく、、で身につける外国人もたくさんいる。

            

「訛り」研究家ヒギンズ博士が発音で出自を全て言い当てる。
マイ フェア レデイのお話の背景はヨーロッパに来るとよくわかる。



     語学学校に通い続けるのはお金がかかるから出稼ぎの人はまず机について
    勉強しない。それでも時々器用な人もいて、耳から入ってくる言葉を
    そのまま覚えて身につけちゃったりする。そうやってペラペラ喋る人も
    たくさんだ。



         でもね、簡単に見分ける方法があるんだ。


     一見ペラペラに見える外国人でも怪しいと思ったら喋っているドイツ語を
    「書かせて」みたら100%わかる。ドイツ語のスペルは基礎がしっかり
    わかっていないとなかなかミスせずにデイクテーションできないものなんだ。
    そこまでさせなくても喋ってるのを聞けば、だいたい、その人が「スペルを
    意識して」発音しているかそうじゃないかは容易に区別できる。
    
             例えば、ね、



     こないだうちのドクターがね、内緒なんだけど(ってネットで公開して
    どーする!)クリスマス時期にグリューワイン(Glühwein=燃やした?
    燃える?ワイン)を買ってきてみんなに振る舞ってたんだけど、


       ささ、グリューンヴァイン(Grünwein=緑のワイン)をどうぞ



    と発音していておっとっとって思っちゃった。


     こういうのはスペルと意味の関連性が頭にないまま耳から
    入った音だけで単語を覚えている典型的な悪例で(すまん!ドクター!)
    医者の肩書きを周りが知らなければ蔑まれちゃうところだと思うな。


     ドイツ語の発音は易しいとよく言われるけれどきちんと「正しく」読むのは
    実は難しい。書くのはもっと難しい。一つ一つの音の発声はフランス語や
    中国語みたいに日本人にとって難関なハードルではないけれど、ドイツ語は
    名詞なんかいくらでもドッキングして長〜い単語を作れるし分離動詞とかも
    あるから文法の基礎知識がないと一体どこでどう区切って発音して
    いいのかもわからない。(むしろ上級になってくるとはっきりと意味を知らない
    単語でさえ文法の知識と経験から類推していきなり初めてでも正しく
    使えることがある。)



    



     移民を大量に受け入れてまあ、なんて太っ腹な国民なんだろうと思われる
    かもしれないけれど綾ちゃんの知る限り、ドイツ人は本来閉鎖的で
    よそ者を警戒する向きが激しい国民だという印象を持っているなあ。ただし
    敬意を払うべき対象にはとても紳士的に大切に扱おうとしてくれる。



     綾ちゃんは病院勤めを始めてから毎日初めての人々と知り合う訳だけれど
    ほとんどの場合、リスペクトを持って相対してもらっている。ありがたい
    ことだ。



     でもこういう「流れもの」と正当な権利を持ってやってきたきちんとした
    外国人を区別してレスペクトに値する人には大いなる敬意をきちんと表して
    くれるのがドイツ流紳士学のすごいところだと綾ちゃんは思うなあ。
    ロコツ、とも言えるか。

    

2016年2月17日水曜日

もう少しドイツ語の勉強のことを話そうかな




     綾ちゃんが「ドイツ語が喋れるようになった」って言ったって
    いや、もともと専門家だったわけでしょ?私たちとは本来の立ち位置が
    違うわよって思う人もおいでだろうし、現在の綾ちゃんをリアルにご存知の
    方は綾ちゃんがドイツ人と未だにあーうー言いながら喋ってるのを聞いて
    「アレで喋れるですって、笑わせるんじゃないわよ」と思うムキも
    あるだろう。  




     そう、語学力なんてどうせ相対的なもんなんだ。綾ちゃんのドイツ語力は
    初心者の目には雲の上の人に映るだろうし、ネイティヴやこちらの日本人妻の
    方からは「20年以上住んでてしかもゲルマニスト(独文学者)だったって
    笑わせるよ」って思われるレベルなのである。現に綾ちゃんは毎日息子どもから
    下手くそなドイツ語を喋る母親であることについて罵倒されている。



     ドイツ語は難しい。何より文法が複雑で何十年経ったって名詞の性を
    覚えきれないし格変化もスラスラ出てこない。パーフェクトにマスターするのが
    困難なのはむしろ初級文法の方だという気がする。
    綾ちゃんが学者のタマゴだった頃先輩からよく、ドイツ語教師になっても
    必ずバカにしないで初級文法に常に立ち返ることと言われていたしなあ。



     ネイティヴの子供と外国語としての学習者の一番の違いは名詞の性なのだ
    そうだ。子供になぜりんごはデア(der Apfel=男性)で梨はデイー(die Birne
    =女性)だって知ってるの?と聞いてもわからない。格変化も最初から
    変化した状態で頭に入っているから考えて喋っているわけではないのだ。



     綾ちゃん自身が日本ではドイツ語教師だったのでどうしたらドイツ語を
    楽しく学んでもらえるだろうかどうやったら全くの初心者をある一定の
    レベルにまで持っていくことができるだろうか随分悩んだものだ。
    色ーんな説があるのはもちろん知っているけれどね。残念ながら最初の
    初級文法一通り終わるくらいまではただただ諦めてガガガーと頑張って
    もらうしかないというのが現在の結論だな。もちろんちょっとしたコツは
    いくつもあるけどね。



     大人が新しい言葉を学ぶ時、赤ちゃんが言葉を習得するように膨大な
    情報の洪水を一気に身につけるわけにはいかない。文法に代表されるような
    知識は考えて頭の整理をしながら窮地に陥った時でも論理の力で正しい言葉を
    話せるように導いてくれる羅針盤のようなものなのだ。絶対に軽視するわけには
    いかないと思う。



     一方で新しいスポーツを始めるような気持ちで反射神経を磨くような
    感覚で知識を「慣れ」に置き換えて頭のシナプスの連携をいかに素早く
    行えるかの鍛錬も必要だ。うん、例文をどんどん覚えるのはいいことだ。



     文法なんて言葉の本質じゃないとか発音がブサイクでも通じればいいとか
    いろんな極論があるけれど綾ちゃんはどれにも賛成できない。



     この話はまた別の折に改めてするけれど、綾ちゃんはよくネイティヴの
    ドイツ人からものすごく頭のいい人だと勝手に誤解されることが多い。
    まだ何にもハナシが始まっていないのに、、である。綾ちゃんは何故こんな
    誤解?が起こるのかよくわからなかったんだけど、どうも綾ちゃんの
    発音にあるらしいという結論に達した。初対面の人にグーテンターク、
    イッヒ ハイセ ヨシオカ(こんにちは、吉岡と申します)といった時点で
    なんと勝負は決まっているらしい。やっぱりニッポンの大学教育ってすごいな
    と思うことがある。綾ちゃんがドイツ語を始めたのは大学の一年生から
    だからね。なんの訛りもないアナウンサーのような発音に訛りコンプレックスの
    ミュンヘン人はショックを受けるらしい。


                面白いもんだ。




           

綾ちゃんが大変お世話になった先生が
新しい本を出しました。
これ、通読するだけでもものすごく面白いです。
オノマトペ和独小辞典 根本道也



  

2016年2月16日火曜日

男の嫉妬は最低!!!




    たったの10日間で素晴らしい上達を見せたわけだからもしも
   綾ちゃんがその後「上手く」いったり、彼じゃなくてもドイツ人の
   恋人作ったり結婚していたりしてたら、そりゃあ、ドイツ語は母国語同然に
   なっていたと思う。疑いの余地はないな。



    まあでも周りに乗せられてつい突進しちゃったけど、綾ちゃんにとって
   こういう恋愛のやり方はやはり「らしく」なかった。
   綾ちゃんは一目惚れだとか告白だとかそういうのとは本来無縁のヒトで
   ボーイフレンドはその名の通り周囲の男の子。コツコツ仲良くなって
   盛り上がって互いの価値観を確かめ合って確信を深めていく。お付き合い
   しましょうかとかプロポーズとかに劇的な感じは無くって、だいたいそういう
   時期が来るとお互いの気持ちはもう判っている、というパターンの
   お付き合いしかしたことがないんだ。



    綾ちゃんは相手と「言葉」で仲良くなっていくタイプだったから
   やっぱり結婚相手は日本人男性だったわけだ。どちらかが言語的な
   ハンデイを負っているとどーもお付き合いまではたどり着けなかったと
   思う。




    でもあの10日間、一人の男の子にのぼせ上がった体験は綾ちゃんの
   人生に決定的な影響を及ぼした。意外にも実り多い「濃い」時間を過ごした
   わけだ。
   ドイツ語会話学習のコツのような感触をつかんだしミヒャエルは綾ちゃんの
   心の中で永遠のアイドルとなって心の中にしまわれることとなったのだ。




    綺麗な綺麗な男の子だった。長い金髪を一つにまとめてとっても背が高いから
   ほんの少し猫背に歩く。ヘヴィメタが好きで歩きながら拍子をとってたっけ。
   今でも鮮明に記憶の奥に焼き付いている。



    実は彼の想い出を文章にするにあたってネットで彼の名前を画像検索してみた。
   学者になりたい、って言ってたからどこかの大学教授にでもなってない
   かなあって。でも。



          よく解らなかった。



    彼のフルネームで何人かの「おじさん」の画像が出てきたけれど、、、。
   職業も当時の彼の専攻からは程遠いものばかり。




    綾ちゃん夫は綾ちゃんの昔の美しい恋バナを聞いた後、むげに言い放った。



       『大丈夫、心配しなくてもそのミヒャエルって奴、
       立派に今はハゲてるよ。』





        あーやだ!あーやだ!オトコの嫉妬って最低!!!




         



       おい、のんきに鍵盤ハーモニカなんか吹いてる場合じゃないぞ!
      綾ちゃん夫はハゲてはいません。いい気になってないか? 






2016年2月15日月曜日

綾ちゃんの恋愛ドイツ語学習法



    綾ちゃんがその時具体的に行っていたドイツ語勉強法とは、、、




    延々とアタマの中でドイツ語作文の勉強をしていた、の一言に尽きます。
   パターンをシュミレーションしながら、、、。



    洗脳されたアタマで綾ちゃんはひたすら成功体験のみを思い浮かべていた。
   すなわち、、、




    「フラれる」パターンは綾ちゃんの頭にはなかった。だってフラれた場合、
    それきりドイツ語を使わねばならないシュチュエーションは無くなるわけ
    だから。問題はうまくいってしまった場合なのだ。そしたら綾ちゃんは
    それ以後彼と延々とドイツ語で話をしなければならないではないか!



    彼が日本語を解する男だったとはいえ、日本語で彼と会話をするのは
   綾ちゃん沽券にかかわると思っていた。彼だってそこまで深い話が
   日本語でできるわけではない。ノージャパニーズで彼の懐に入っていかねば!
   となぜか思い定めていた。



    ドイツ人の男性と一時間、普通に(日本人の友達とダベるように)喋れる
   だろうか?どんな話題で?スポーツ?いや、綾ちゃん、スポーツはダメ。
   サッカーもさっぱりだし。政治?経済?文化?音楽?生活?
   よく考えたら日本人男性とだって大して話したりしてるわけじゃない。
   と、とにかく話題を作らなくっちゃ、共通の友人の話題とか、こないだの
   ファッシングスバルのこととか、、、。ドイツの印象だとか、こっちで
   驚いたことだとか、、、。




    それから彼のこと。私はどれだけ彼のことを識っているんだっけ。彼が
   国費奨学生でものすごいエリートだっていうことは知っている。ドイツ人の
   学生同士でこの間時事問題について延々とデイベートしている場面は見ていた。
   中東問題について。噂で聞いただけだけど、以前、黒人の彼女がいたって。
   そのことで揶揄してる仲間がいて「僕は肌の色でパートナーを決めたり
   しない」って怒っていたこと。彼がそんなこんなことについてどんな風に
   考えているのか感じているのか理解してあげなくっちゃ。



    ネットも無かった頃のこと。シュミレーションでこの場面で日本語だったら
   こんな風に返すんだけどって表現を和独辞典で調べたり朝から晩まで
   やっていた。勉強してるなんて意識はなかった。ただ頭の中でどうしても
   いろんなシチュエーションが頭をよぎってしまって、しまった!この質問には
   ドイツ語でどう答えたらいいかわからない!ちょっと今のうちに(ズルしてる
   感じ)調べておいちゃえ!とかいうカンジ。夜、寝床に入ってからもずっと
   昼間考えたシナリオを復習して夢の中でも暗唱していて朝目覚める時にはっ!
   ちゃんと答えられた!(答えられなかった!)って飛び起きたりしていた。




    10日間、朝から晩まで夢の中でまでひたすら独作文の練習をしていた。
    


        勉強しているなんて一瞬だって思っていなかった。 





             

         全然本文と関係ありません。綾ちゃんパパが福岡宗像大社
        短歌大会で最高賞に当たる県知事賞を受賞して毎日新聞に
        写真付きで載りました。綾ちゃんを文学と言語芸術の道に導いて
        くれたのはただただこのパパの存在のおかげです。









2016年2月14日日曜日

恋愛は外国語習得ににどのように作用するのか?




     綾ちゃんは問題の10日間、ほとんどドイツ語を喋らなかった。
    日本人の女友達とはだべっていた。
    ただアタマの中で「シュミレーション」を繰り返していただけだ。
    言葉というものを生きたものとして生きたシュチュエーションで
    「活かす」ことを考えていたのだった。


           心から「伝わる」ことを願って、、、。



     オンナの子というのは本能的な生き物なのである。ちょっとくらい
    エリートの称号を与えられたって本質が変わるわけではない。あの頃の
    綾ちゃんはただの20歳代のひよっこだったんだ。




     実は綾ちゃん、今回の事件とは全く別に留学生活で一種の閉塞感というか
    行き詰まった感じを持っていた。ドイツ語をこんなにやっているのに
    まるきり「生きた」言語として感じられないことについて。一生懸命
    ドイツ語を勉強すればするだけ母国語の日本語や日本的な感覚から生活の
    言語が隔離していくような絶望感といったらいいのだろうか。(大学の
    会話の時間では綾ちゃんはむしろ一番デキる生徒だったのに、、という焦り
    もあった。)日本でドイツ語を勉強していて打ちひしがれるならばまだ判る。
    でもドイツ生活を始めてさえなお感性はまるで日本にいるときと変わらない
    じゃないか、このまま結局、終わってしまうんじゃないかってね。



     それに比べて、例えば現地で暮らしているドイツ人と結婚している女性の
    方などが、綾ちゃんのように確固とした文法や学問的基礎も無しに
    自由闊達に(ペラペラというんだな、要するに)ドイツ語を使いこなしている
    ことに対する羨望(妬みだな、要するに)を抱いていた。彼女たちは
    綾ちゃんがこれまで四苦八苦して勉強してきた苦労など一顧だにせず
    まるで日独友好外交官のように振舞っているではないか。




     綾ちゃんは、そんじょそこいらにフラフラしている女の人とは全く違う
    学術的背景を背負っているはずだった。そんなことを口に出して言うことが
    人間として、女性としてはしたないことだと恥じていて困惑していた。




      そんなこんながこの即席恋愛事件で雲散霧消してしまったのだ。




     そう、例えば国際結婚していらっしゃるこちらの日本人女性というのは
    たった一人の人を自分の大切な人として自分を愛するように大切に考えて
    らっしゃるわけだから自然、相手に伝える言葉を唯一の伝達手段として
    一つの言葉に賭けるエネルギーを余さず伝えようと努力しているはず。



     ゲーテを知らなくったって、カントを読んだことがなくったって。




        大きく思い上がっていたのは綾ちゃんの方だったんだ。 




     愛するという行為はここでも真実を暴く。自他行為という言葉があるけれど
    「言葉」というコミュニケーション手段にどれほど力を与えられるかは
    どれほど伝える相手に愛を送ろうという気持ちが強いかという問題
    だったんだ。 




これはエンゼルパイ


これはきのこの山、だと思うんですね。
綾ちゃんちの近所のスーパーマーケット、ロシア製品売り場です。









2016年2月13日土曜日

綾ちゃんのドイツ語会話力はどのように培われたか




       ご想像に違わず綾ちゃんは玉砕した訳なんだけど、、、。




    ねね、も、もしかして、わ、私のことがす、好きだったりする、、、???





    この訳のわからん、それでも必死の思いで絞り出した綾ちゃんの質問に
   ミヒャエルはあっさりナイン、と答えた。色々言い訳してたけどね。



    まあ、この間のはなんていうか「ノリ」だったんだな。つまり。




            ががががーん。まあ、短い恋だこと。



    はっきりさせられて良かったといえば良かったしあまりにも短い青春でした。




                   ちーん。




    ぶももーっと盛り上がって一気に終わったので綾ちゃん、ほとんど「傷つく」と
   いうことがなかった。





         そして、これからが結論なんだけれど、、、、、。
        (ええ?これまでの逸話が前置きだったわけー?)



    ファッシングスバルの日の事件からヴァレンタインデーの玉砕まで
   10日ほどだったろうか。信じられないことが起こったのだ。





    綾ちゃんのドイツ語会話力は信じられないレベルに向上していたのである。




      自分でも驚くほどこの玉砕の瞬間からのちいかなる場面でも
      ドイツ語での受け答えに障壁を感じることがなくなっていたのだ。





      外国語の習得の一番の特効薬は恋愛だって本当だったんだ!!





恵方巻きは食べなかったけど久々に太巻きに挑戦。
だいぶ具が真ん中にくるようになった。



























2016年2月12日金曜日

ファッシングとヴァレンタインデー、個人的追想その四




      バルの夜には急用で日本に一時帰国していた親友のFちゃん(京大)が
     帰ってきた。Fちゃん、どうしよう!?女の子ってこのテの秘密なんて
     守れない。ていうか共有することで友情を育んだりするんだな、これが。
     綾ちゃんのうれし恥ずかし「事件」を聞いてFちゃんは目を輝かせた。
     いややわー、綾子さん、それは「ハジマリ」いうもんやわ。私の彼の時と
     なんやえらい似てるわあ。



      Fちゃんははんなりと京都弁で自分の彼とのなれそめを語った。いや、
     本当に古今東西女の子ってのは変わらない。要するに綾ちゃんの体験は
     彼女の現在の彼氏とのなれそめに酷似していてどう考えてもこのまま
     突き進むしかない、という意見だった。


      Fちゃんはさらにもう一人の留学生仲間のMちゃんまで引き入れて
     綾ちゃんになんだかんだと入れ知恵した。もう、みんな寄ってたかって
     留学先で何やってんだか?



      女性の権利とか性差別だとか言われてから苔がむしるほどの時間が経った
     けれど、やっぱ女性ってのは十分解放されてるなあって感じる。
     何より意識がポジティブだ。みんな積極的だよなあ。とにかく皆で
     綾ちゃんにこの場は何としても押して押して押しまくれとレクチャーする。
     まっ、他人事で楽しんでる向きもあるんだろうけど。
     ちなみに綾ちゃんの郷里の女友達も、もう押しまくって彼氏や旦那さんを
     ゲットした娘が多い。(そしてみんな未だに幸せそうにしている。)
     そ、そーかー?



      だんだん綾ちゃんも洗脳され始めてその気になってきた。まあ、旅の
     恥(旅?)はかき捨てってことで、、、。
     とにかくいずれにせよこのままってことはないだろう。
     



      腹をくくった綾ちゃんはアタマの中でシュミレーションを始めた。




            

         今日はポカポカ綺麗なお空でしたね。あちこちで
        小さな西洋すずらんを見かけました。
           

2016年2月11日木曜日

ファッシングとヴァレンタインデー、個人的追想その三




    生まれて初めて(そして最後、たぶん)チークを踊った相手は
   王子様みたいな男の子だった。くー!綾ちゃん、この人生に悔い無ーし!
   涙〜!!



    彼の方でもそれなりに舞い上がっていたらしく席に戻った後でもこっそり
   耳元に口説き文句をささやく。そして、、、うわっ、うわっ、うわわー!




    んでも彼らはやっぱり紳士で(ここら辺の解釈は今となっては微妙だ
   な)特にそのあと狼に化するとかいうことはなく(だから微妙。いやむしろ
   微妙だったのは綾ちゃんの方だったのか?)お開きの時間になったら
   ちゃんと「一人で」部屋にたどり着きました。



    ただし綾ちゃんの側では茫然自失。それからの日々は全て上の空状態。



    数日後、飲み物を取りに行くと言って消えた畜産大の彼女から電話が
   かかってきた。ねえ、ねえ、聞いてくれるー?私、飲み物買いに行って
   帰ってこなかったでしょう?実はコーラ買ってたらドイツ人の男の子に
   声かけられちゃったのー!今ね、ドイツ人の男の子たちの間では日本人の
   彼女を作るのがトレンドなんですって!でね、今日、もう一度その子と
   会う約束してたんだけど、一緒に映画に行ってコクられちゃったー!!
   工学部の子なんですってー!


    のちに綾ちゃんは当の彼とも知り合いになったがコレがなかなかの
   好青年であった。そう、別に知り合った場所がどこだっていいヤツは
   いいヤツだしキチンと真面目なお付き合いをするに障壁とはならない。



    まあ綾ちゃん一人とっぽかっただけで、要するに大学のバルなんて
   ナンパのための会合みたいなもんなんだな。





    じゃ、綾ちゃんはどうなる?次に彼に会った時何話せばいいんだろう?
   想像もつかない!彼は綾ちゃんの住所も電話番号も知らないから次に
   会う日は自ずと決まってくる。大学で会う日だ。それは、、、っと
   カレンダーで確認すると、、、。




         2月14日、聖ヴァレンタイン・デーだった。






今朝地下鉄駅構内の大きな宣伝を写真に収めた。
ヴァレンタイン仕様の高級浴用剤。右側のハートの中に
「忘れないで!ヴァレンタインデーは2月14日です!」と
書いてある。忘れないで!なんて釘をさすあたりが
明らかに男性向けの宣伝文句と思われる。







 
    

2016年2月10日水曜日

ファッシングとヴァレンタインデー、個人的追想その二



      北大の彼女はじゃね、と帰ってしまった。ミヒャエルたちは彼女とは
     面識なかったし、彼女はここで何々?っとついてくるような性格では
     なかった。いたってタンパクな娘だったのだ。



      ひえー、ここからは美青年軍団と綾ちゃん一人?ドイツ語オンリー?
     とほほなレベルの綾ちゃんのドイツ語会話力。我ながら独文学専攻の
     看板が恥ずかしい。綾ちゃんはこんなことで恋人ゲットできるとか
     期待するほど(当時は)図々しくなかったし大体、何話したらいいか
     わかんないよー!と、心の中で泣いていた。(←若かったんだなあ。
     今の綾ちゃんとは大違い。あーやだやだ、オバサンって。)



      彼らはおとなしく縮こまっている綾ちゃんと実にスマートに接した。
     コロナ飲む?(実はこの時は初めてコロナビール識った)今日は一人?
     音楽うるさすぎない?自然な流れで綾ちゃんが不快にならないように、
     でも世話を焼きすぎないように気を遣ってくれる。


            


      このメンバーの出自を綾ちゃんは事前に知っていたが3人が3人とも
     いわゆる「良家の子息」で会った。大学教授の息子とかね。花より男子?
     ドイツでは全くもって社会階層がロコツで良いお家の子は絵に描いたように
     お行儀がいい。もちろん例外は沢山ありますよ!でも彼らの紳士ぶりが
     本家本元だというのは綾ちゃんは事前に知っていた。だからこそ彼らと
     行動を共にしたのだからね。


             




      アヤチャン、ちょっと踊らない?初めてでも大丈夫。みんなに合わせて
     適当に動いていればいいだけだから恥ずかしくないよ。
     綾ちゃんはミヒャエルに連れられて何んだか良くわからんが言われた通り
     不恰好に進み出た。うーん、やっぱりラジオ体操の域を出ないな。



         すると程なくお決まりのチークタイムに突入。
     


      綾ちゃんはそんなことさえ分かっていないお子ちゃまだった。



     

2016年2月9日火曜日

ファッシングとヴァレンタインデー、個人的追想その一


        今日は薔薇の月曜日、この日にちなんで思い出を一つ、、、



     この話はリアル綾ちゃんのお友達の方なら誰でも一度は聞いたことのある
    話です。またかあっ!はあー(タメイキ)とお思いでしょうがお許しあれ。




     綾ちゃんはドイツ生活初めてのファッシングに生涯忘れ得ぬ出来事を
    経験したんだ。それはね、ドイツの男の子のことが好きになっちゃった
    事件(!)だったんです。



     ドイツに来て初めてのファッシング。でもよくわかんないし出不精の
    綾ちゃんには関係なさそう、と一人でゴロゴロしていたところ留学生
    仲間の先輩からファシングスバルのお誘いがかかった。



     バルっていうと辞書的翻訳語で「舞踏会」の文字がちらつく。そんな
    綾ちゃんに先輩は電話口で「仮装してくるように」とのお達し。仮装??
    仮装ってコミケとかあんなの???できるかー!ととりあえず黒っぽい
    服を選んで金ラメをばらまいてお茶を濁しておいた。
    先輩は、えー?それで仮装のつもりー?と不服げであったがこれ以上は
    どうしようもないのでそのまま決行。



    会場はなんてことない綾ちゃんの学生寮の部屋のほぼ真ん前。




    でもここは実はミュンヘン最大のファッシングスバルの会場であった。
  

         ミュンヘン大学学生寮主催のオリンピア バル。

                       

          ミュンヘン大のHPに載っている写真。こんなの?


    動物とか海賊とか哺乳瓶片手のベビー姿のおっさんとか趣向を凝らした
   仮装の若者が集結。でも何をするというのでもなく巨大な会場でひたすら
   デイスコ風に踊りまくる、という催し物だった。いや、これは綾ちゃんには
   無理でしょう。地味な大学院生だった綾ちゃんにはもうどうしたらいいやら
   さっぱりわからない。踊ったりもできないしね。



    出陣時には交換留学生仲間の国立大学出身の女子大学院生総勢6名(日本の
   宝だぜ)だったはずなんだけど、すぐに半数とはぐれた。畜産大の彼女と
   北大の彼女と3人になって綾ちゃんは内心ものすごく不安だったんだけど
   とりあえずどこかに落ち着こうということになって隅っこに場所をとって
   おしゃべりしていたら、畜産大の娘が「飲み物とってくるねー」と言い置いて
   そのまま帰ってこなかった。



    北大の彼女は綾ちゃんより一段輪をかけて地味で大人しい娘だったんだけど
   やっぱり私はこんなところダメだわ、頭痛いから帰ると言って帰ろうとした。



    綾ちゃんも一緒に帰ろうとしていたんだけど(帰ると言っても同じ建物なんだ)
   思いもかけず知り合いにばったり会った。



    マンモス大学のミュンヘン大のバルで知り合いに会うなんて後から考えたら
   すごい偶然なんだけど、それだけ我々は周囲から浮いていたんだと思う。



     「アヤチャン、ヘイ、アヤチャンジャナイカ。コッチヘオイデ。」



    声をかけてくれたのは西洋史学の大学院生のミヒャエルとその仲間だった。
   彼とは知人の紹介ですでに何度か一緒に行動したことがあった。でもいつもは
   他の友人たちと一緒でちゃんとお話ししたことはない。ものすごく背が高くって
   青い目金髪、知的で礼儀正しくって、でもイマドキの男の子。何より魅力的なのは
   日本語ができることだった。彼は某日本企業のドイツ支社副社長の子息で
   幼少期を東京で過ごしたという帰国子女。
   

    もう、これらの条件を聞いただけでもずっとーんと恋に陥ってしまいそうな
   ときめきを予感しちゃうでしょう?若かりし綾ちゃんもちょっぴり憧れちゃったり
   していたわけです。





   

2016年2月8日月曜日

ヴァレンタインとハロウイーン




      もっと訳がわからないのはハロウインだと思う。



    日本に於けるハロウインの存在意義に至ってはもちろんのことだけれど
   もうこれはこれで仕方ない。
   そのうち日本でもイースターとかやりだすかもしれないな。何でも
   やっちゃれ、、と投げやりな気分にすらなる。オクトーバーフェストだって
   あるしな。日本には。しかも全国どこにでも。





    ドイツではヴァレンタインがゆっくりと浸透して行ったのに比べて
   ハロウインの出現はあまりにも唐突でしかも定着するのが早すぎた。
   ここ10年ほどのことだ。



    ハロウインがドイツの大人たちの目にとても奇妙に映る理由は幾つか
   あげられる。ヴァレンタインがキリスト教由来であるのに対して
   ハロウインはキリスト教と関係ないケルト人の祭りであること。
   ハロウインとほぼ同時期にドイツでは聖マルティン祭というドイツの伝統的な
   行事が秋の収穫祭とカップリングで行われるのが本来の常であるべき
   だということ。ハロウインの内容が要するにドイツではこれからの時期に
   行われるファッシング(=カーニバル、断食祭または謝肉祭)と被って
   いること。仮装など。



         

綾ちゃんの息子たちが幼かった頃聖マルティン祭はとても
重要な秋の行事でした。今はハロウイーンの派手さにに押されて見る影もない。
慈悲深き騎士マルティンを懷う素朴な星祭りです。


要するに外来の祭りであるハロウインはドイツの土地柄や風習とは
なんの関係もないのにもかかわらずそのインパクトに押されて
突然根付いた行事なのである。


これには英語の教科書の影響も多い。


ドイツの子は小学5年生から通常本格的な英語学習が始まる。
綾ちゃんの長男は第1外国語がラテン語の学校だったので6年生から
だったが(二男は違う学校に通っているので5年生から。でもお兄ちゃんと
同じ教科書。)バイエルン州の学校(ギムナジウム)で使用されている教科書は
皆同じで新学期の最初のテーマに「ハロウイーン」が時節柄登場するのだ。



だからドイツの子供たちは10歳以上になるとほぼ全員がハロウインの
なんたるかを知っているし、面白そうだから真似したくなって
トリック オア トリートを唱えて家々を練り歩く。


ドイツに移住したアメリカ人たちが広めたという説もあるみたいだけど
綾ちゃんはやっぱりドイツの英語教育と子供達の役割が大きかったと思うなあ。






2016年2月6日土曜日

ドイツでのヴァレンタイン




      綾ちゃんが初めてドイツに上陸した頃、ヴァレンタインデーはまだ
     ドイツでは市民権を獲得してはいなかった。




      これには綾ちゃん、カルチャーショック。



      ニッポンでは一億狂乱お祭り騒ぎなのに何という静けさ!全く無いと
     いう訳ではなく時々お花屋さんの隅っこに「ヴァレンタインに花を贈ろう」
     とか地味なポスターが貼り付けてあるのを認めたりする程度。
     一体ここはいつ時代?いやいや、やはり日本がクレイジーなだけなんだ。
     とにかくヴァレンタインの一般の認知度はとても低かった。




      ヴァレンタインデーはドイツで年々少しずつその認知度を上げていった。
     ここ数年は2月14日に電車に乗ると花束を抱えた背広姿の男性を
     あちこちで見かけて微笑ましい。ヴァレンタインデーは愛の日で、
     主に男性がパートナーに愛や感謝を伝える。
     贈り物はなんでもいいんだけど、お花が一番多いみたい。



      そういえば一昨年のその日、夕方突然ドクターから携帯に電話が
     かかってきて花を届けるとかなんとか言ってた。たまたま綾ちゃんは
     用があって近くにいたので、ああ、そっちに行きますよって何だか
     訳も分からず病院に寄ったらスーパーマーケットの値札が付いたままの
     花束を手渡された。(当時まだ働いていたりんちゃんの分もあった。)
     なんでも奥様の話だと、今日はこうこうこういう日ですよって患者さんから
     教わって慌てて我々の分のお花を買い求めたらしい。
     あーあ、従業員に愛なんぞ伝えんでいいから、奥さんの分を買ってあげたら
     いいのに相変わらずトンチンカンだなあって思ったけれどありがたく
     いただいた。綾ちゃんは旦那様(チョコ好き)に日本風にチョコあげたから
     自分がもらえるのは嬉しかったね。


          昨年はもうすっかり忘れたらしく何ももらわなかった。



          今年は日曜日、可能性ゼロだな。ハッピー ヴァレンタイン!







またしても息子のSpeed Drawingです。
机がきたなーい!ちゃんと綺麗にしろー!


                         

2016年2月5日金曜日

恵方巻きとヴァレンタイン




            節分には恵方巻きを食べるそうな。

               なんじゃそりゃあ?
          

綾ちゃんが恵方巻きを最初に認知したのは10年近く前。
未だに食べたことはありません。


もう日本では次から次に新しいブームが起こっていつの間にか常識的な
習慣に移ってしまうからついていけない。


昨日のFBにこれについての記事が載っていて、こんな商魂に乗せられた
ブームに関わり合うのは止そう!というツイートが山のように寄せられていて
ほほう、と面白く読んでいた。ハロウインも恵方巻きも、これに
思い入れのある大人というのは皆無であるのにかかわらず
子供達でこれを知らないものはない。なんと日本全国の学校で
この風習を広めるべく取り計らっているらしい。



日本人はお祭り好きなのと幸福になれるとかいうキャッチにとことん
弱い国民だから仕方がない、と綾ちゃんは思っているから別に反対は
しない。積極的に打ち込んだりもしない。ただ、常識に疎いと後ろ指
指されないかと内心びくつくくらいのことだ。



綾ちゃんはこの議論を読みながら、これってヴァレンタインデーも
一緒だよねって考えていた。

1910年のヴァレンタインデーポストカードだって。wikiより。

綾ちゃんはヴァレンタインデーというものが無かった頃というのを
よく思い出せない。綾ちゃんが小学生の頃、すでに存在していたなあ。


でも大人たちはとっても怒っていた。お菓子屋さんの陰謀論を唱えて。
全くもってその通り。子供といえどもそれに異論を唱えるやつはいなかった。
でも告白のチャンスを与えられて(相手がいないくても!?)盛り上がらない
テはないじゃあないか。なんて面白いイヴェントなんだろう。それで
意味もなく義理でも友でもなんでも参戦していた。


でもね、多かれ少なかれドイツでも似たようなことが起こっているんだ。






2016年2月4日木曜日

そしてピロシキ





            もっとすごいのはピロシキ。



      日本人でピロシキという単語を知らない人っているのかしら?
     綾ちゃんは日本にピロシキという食べ物が上陸した時期を明確に
     覚えている時代の証人(ああ、またしても年齢ばればれ)なんだけどね。
     とにかく大抵のパン屋さんに置いてある。ロシア由来の食べ物だってことも
     広く知られているよね。




            

wikiの写真。いろんな種類があるらしい。



でもドイツでは誰も知らない。


日本ではパンというのはお米より後発の分、スナック感覚で
広まっていったから(綾ちゃんの解釈だけど)おかずパンの種類が豊富で
楽しい。ピロシキなんて、そういうパン食文化が広まっていく経緯に上手に
取り込まれた感があるよね。偉大なるカレーパン様の後輩的位置付けになって
いるし。売っている場所は違えど肉まん様とはどう考えても親戚っぽいし。
ご先祖をたどるとあんぱん、アンドーナッツなんて血筋には何の由来もないくせに
パン屋における系譜の長を容易に推察できたりする。



ドイツにはこういう楽しいパンの種類が少なくってがっかりします。
これはドイツにやってきた日本人ならほとんど皆が最初に経験するがっかりの
代表的な例。パンはこちらでは日本におけるお米同様の大切な主食だから
大きな食事パンに重点が置かれていてどうも小さいものにまでパン職人さんの
気持ちが行き渡らないらしい。



ロシア人に日本人がピロシキの存在を知っていると言うとめちゃくちゃ驚かれる。
しかも日本人なら誰でも知ってるよと言ってもまず信じてもらえない。
まさかここまでピロシキさんが日本で有名になっているとは
想像もつかないらしい。



でも本場のピロシキって色々種類があるらしくって甘味系とか揚げてないのとか
具材もお魚やジャガイモ入れたりヴァリエーション豊かなのだそうです。



えっとね、日本ではよくひき肉や細かいお野菜入れたり、あっそう、
春雨入ってるなあ、、、と言った後で一人で恥ずかしくなってしまった。




ロシアでロシア人がピロシキに春雨なんて入れるわけないじゃないか!!


でもそういえば日本のピロシキってよく春雨入ってません?
何の疑いもなく食していましたがどう考えてもチャイニーズの発想ですよね。


海外で暮らすことがなければ決して思い当たることのなかった事実でした。









2016年2月3日水曜日

ロシアン テイーの真実

 

     例えば


     日本人が外国文化をひどく勘違いしているケースもある。




     一例として、以前、ママ友でとっても仲良しのロシア人女性がいたんだ。
    フランクフルト郊外に住んでいた頃の話でミュンヘンに引っ越しすると
    ともに音信不通になっちゃったけどね。



     綾ちゃんはロシアって聞くともう池田理代子さんの世界がぶもーっと
    吹き荒れて、本当にお歳が判ってしまうのだが仕方がない。まあ、
    ドストエフスキーとかタルコフスキーとかロシアものならなんでもいいんだけど
    とにかくロシアとロシア文化ってのは偉大な名作に溢れているからね。

              

池田理代子作「女帝エカテリーナ」(原作アンリ トロワイヤ)


    その彼女は綾ちゃんと年齢が近くて子供の年齢が一緒で気さくなインテリ
    女性だったので、もう、ここぞとばかりに色々ロシアの話を聞くのが
    楽しかったんだ。



     でもね、この彼女に「ロシアン テイー」という言葉が通じなかったんだ。


     ロシアン テイーってご存知ですか?紅茶にいちごジャムを入れた飲み物。
    香りづけにラム酒?とか少しだけスピリットを足してある場合ある。少なくても
    日本ではそんな風に一般に通っていた。福岡の中心部にある有名なロシア料理の
    お店でもロシアン テイーっていうとそういう甘味感覚の濃厚なお茶が出てくる。
    おしゃれなテイーハウスでもアレンジテイーの一種として並べてあるよね。


                 

          食べログに載っている福岡ツンドラのロシアン テイー



       『ねえ、ロシアの人って皆ロシアン テイーを飲むものなの?』



       『え?ええ。そうねえ、ロシアの人は大抵紅茶が好きねえ。』




      彼女は綾ちゃんの言う「ロシアン テイー」をいわゆるハイテイーの
     ような午後テイータイムの格式高い時間のことだと解釈したらしく
     ロシアでの正式なサモワール式の紅茶とお茶菓子について説明してくれた。
     ジャムを入れることもあるけれどミルクもレモンもお好みよって。




      そーかー!我々の理解する「ロシアン テイー」という言葉は
     存在しないんだあ!



                ロシアのサモワール



          

2016年2月2日火曜日

異文化への無理解という名の追想





     ドイツ人が干支を知っている話をちょろっとしましたが
    こういう断片的な東洋ブームっていうのは結構以前からドイツで
    見かける。いつからかっていうとちょっと難しいんだけど、、、。



     綾ちゃんが生まれて初めてドイツに足を踏み入れたのは大学2年の時
    学生の団体旅行だったんだけど、その頃はエスカレータの前で女子大生が
    ドイツ人のおばあさんに親切に手を引かれて(いいですか、おばあさんが
    女子大生の手を引くんですよ!)



      『怖がらなくていいのよ。これはエスカレーターと言って(!)
      足を乗せるだけで自然に上の階まで連れて行ってもらえる便利な
      階段なの。』



      と講釈してもらったり(その女の子は後で歯ぎしりしていた)




       『ニッポンには冷蔵庫はあるの?』



     と東芝や三菱の電化製品が溢れている家にホームステイしていて
    尋ねられたり




        『日本人は魚を生で食べる(⬅︎絶対野蛮な想像してる。
        手づかみで尻尾持って頭からがぶりとか。)っていうけど
        どうやって食べるの塩を振るの?それともお砂糖?』


     なんて興味津々で質問攻めにあったとかいうレベルだった。
    さすがに現代の人々はここまで文化断絶しているわけではない。



     もちろん日本人だってこの手の海外の様子をどのくらい「ちゃんと」
    知っているかというと(無論、綾ちゃんも含めて)極めてアヤシイもの
    だよね。でもドイツ人の場合は土壌が違うから同じ断片的なる理解でも
    方向がまるきり間違っていてオイオイってことがある。


     

          

お魚はこうやって食べます。
えへへ、天満屋にて。一年に一度の贅沢だな。
昨日はコンクールの打ち上げでした。