『綾子、◯◯さんの奥さんが是非綾子にお会いしたいってさ。』
その頃綾ちゃんはフランクフルト郊外の自宅にいた。医学や自然療法を
勉強中とはいえ身分はお気楽極楽三食昼寝つきの専業主婦。
綾ちゃんは大学こそミュンヘン大学に通ったもののお勤めに始まり
結婚、出産と長い期間をフランクフルト郊外ののどかな田舎町で
暮らしていた。職場を退職してしまえばネットも携帯もまだ無かった
当時の綾ちゃんの日常は日本から情報遮断されていた
浦島花子ちゃん状態で実際この辺り10年ほどの
日本に関する知識は記憶障害のごとくぽっかりと抜け落ちている。
夫は単身赴任で先にミュンヘンに赴いていた。転職といっても前職と
つながりのある職場で出向という形を取らないが皆に祝福されての
ステップアップだった。
綾ちゃんは自宅マンションを売却する使命を夫から仰せつかって
夫に遅れること10ヶ月。やっとでミュンヘンで家族揃って暮らせる
目処がついたところであった。
綾ちゃんに会いたいと言っているという女性は主人の同僚の奥様だ。
綾ちゃんは一面識もない。よくわからんけど、これからいわゆる「奥様会」
なるものが始まるってことなのかな?噂ではなんか、面倒臭そうな感じだけど、
大丈夫かな?綾ちゃんにハイソなおつきあいなんて出来るのかしら?
余計な取り越し苦労だった。
この奥さんは極めて特殊な理由で綾ちゃんとお知り合いになりたかったのだと
いうことがミュンヘンに来てからすぐにわかることになるのだった。
今、ミュンヘンの街中に貼っている映画のポスター。
こ、これって、、、
ほら、「安心してください。はいてます。」じゃん。
ほらね。
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