2015年10月9日金曜日

二度目のセッション




       綾ちゃんのセッションからはあんまり実ある成果が得られたとは
      言えなかった。おそらく綾ちゃん本人は深刻な悩みもなく(自分で
      言うのも変だが)バランスのとれた俗人なのでセッションしがいのない
      お客だったんだろう。彼の言う通り、真面目といえば真面目な性格
      だけど人生を楽しむことを忘れるほど勉強に没頭したりはしないし、
      むしろそういうのに憧れたりするくらいだ。




       でも全体の流れとかドイツ語の感じはわかったから通訳の下準備には
      なった。少なくても役にはたったぞ。
      そして本番、三度目の正直で彼女の順番の日がやってきた。彼女は
      一番高いフルコースを選んだ。まるまる二時間。




       ヒーラーの彼は楽勝通訳気分の綾ちゃんに向かって厳かに申し渡した。




        『アヤコ(ってすでに馴れ馴れしい)、いいですか。これから
        私が彼女に伝えることを全て一語一句正確に彼女に伝えてください。
        決して手心を加えてマイルドな表現に置き換えてはいけない。
        いいですね。』




       この場面でハイという以外答えようがない、、、が、、どうしたんだ?
      この間と人が変わったみたいじゃないか?まるで怒ってるみたい。
      フルコースだと真剣味まで変わるというのか?





       彼が彼女に施したセッションというのは叱咤に次ぐ叱咤。お説教と
      いうより非難に近い。これ以上ないほど「責めて」いるようにさえ
      見えた。





       彼が事前に綾ちゃんに断りを入れた意味がよくわかった。いや、直訳
      するとすさまじく攻撃的な言葉になるので、結局しばしば表現を変えて
      伝えてしまった箇所もしばしば。(そう、通訳って実はこういうところが
      難しいんです。)




       曰く、なぜそんなにいい加減な人生態度なのか?家族、特に父親との
      心理的トラブルが彼女を安易な方向に向かわせている。
      ドイツに3年も住んでいて一言もドイツ語を発しないとは何事だ!
      (ひえー!)せめて英語を使ってでも頑張ればいいものを!(きゃあー!)
      何もかも心を入れ替えて人生をやり直しなさいと言わんばかりの
      お叱りだった。




           

ドイツでファンタグレープ、ファンタマンゴー、
ファンタストロベリー??発見








 

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