2013年11月26日火曜日

怒ると身体に良くないよ。 (八)





        彼は救急隊員のパイロットさんだから職場から
       特殊なプライベート保険をプレミアでつけてもらっている。
       身体第一の仕事だもんね。うちの治療もほぼ全額職場が
       出してくださるそうだ。とりあえず金銭面での不安はない。
       そうはいってもお仕事の合間を縫ってだから
       週に二回から三回位の割合で通って来られただろうか。




   


        通常、うちの先生は腫瘍を手術なしで鍼と漢方薬だけで
       治せるかという質問に対しては、初期の場合、腫瘍が小さい場合
       (だいたい直径3〜4㎝以下)の時には「手術なしでOK」を
       出すのだが、彼の場合は外から見ても直径10㎝くらい、到底
       無茶な大きさなのだが、外科的にも大変きわどい場所にあるらしく
       CTスキャン画像によると咽頭のかなりの部分に食い込んでいて
       手術をすると障害が残る可能性大だと言うのだ。





        だから、どうしても手術なしで何とかしたい。





         かなり必死でいらした。だけど2ヶ月経っても3ヶ月経っても
        何の効果も現れなかった。その代わり綾ちゃんもすっかり
        そのパイロットさんと仲良しになった。一人暮らしなのに
        炊事が苦手で無茶苦茶な食生活であることが判明したので
        (そして幸いエスニック料理が大好きということなので)
        ドクターは彼にせっせとごはんを食べさせた。朝ご飯など
        食べたこともないとおっしゃるので彼が来る日にはまず
        治療前に朝ご飯を食べさせる。綾ちゃんが朝、慌てて
        食べるものを用意したこともあった。お昼はその場で食べさせるか
        何かうちの料理を持って帰らせることまでした。
        ドクターは「これが大切な治療なんだから」とおっしゃった。




         彼が彼の「怒り」について具体例を挙げてくれたことは
        いまだに一度もない。忍耐強い紳士なんだな。




         そして4ヶ月目を過ぎた頃、とうとう朗報が訪れた。
        いつものようにやって来た彼にいつものように綾ちゃんが




         『お加減いかがですか?』




         と尋ねると



         『見てください、判りますか?腫瘍が小さくなったのが!』




         え?え?ええ〜??おおお!!!本当だあ!!
         何と!三分の二くらいになってるう!!
         やったあ!




 






今日の朝の気温は−3℃
道の水たまりはみんな凍っちゃった。
photo by Ayako Y.





夜は雪。我家の風呂場の天窓。
photo by Jiro Y.



おお寒い!

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