ここに勤め始めて1年半とちょっと。
もう何度目になるんだろう?訳のわからんものに出くわして奇声を発したのは。
今、目の前の冷蔵庫の中には「何か」がいる。「活きた何か」だ。
誰が?何のために?薬にでもするのか?もしかしてペット?縦に横にもぞもぞ
してたから魚ってことはないな。
今、ちょうどお昼休みでここには私しかいない。誰かに訊く訳にも行かず
立ち尽くす私。何だか地球上であの「ビニール星人」と私とたった二人きり
取り残された気分。
いやいやそうじゃない。とりあえずは場面転換が必要。
そう判断した私はとりあえず冷蔵庫を再度開けることは止め、着替えたり
後片付けをしながら昼休みが終わるのを待った。
そうこうするうちにお昼休みが終わりドクターとお手伝い(最近雇われた
中国人の女性。片言しかドイツ語が出来ない。主に台所業務を担当。)の
メイさん(仮名)がおしゃべりしながら私のところにやって来た。
ドクター 『吉岡さん、日本人の人はカニって食べるの?
僕たちはカニのスープなんて大好物なんだけど
吉岡さんは好き?』
私 『ええ、私は大好きです。日本では冬になるとよく
お鍋にしたりして食べますよ。カニのお出汁って美味しい
ですよね。』
ドクター 『実はね、メイさんが今日、東駅の鮮魚市場で生きたカニを
買ってきてくれたんだ。もしよかったら吉岡さんもひとつ
お家にもって帰る?』
私、 『(ううん、と考え)子供が喜ぶとは思えないですからね。
私も今、湿疹の治療中で魚介類を避けているとこなので
また今度にします。残念だけど。』
あれ? あれあれあれ?あれれ?もしかして?
さっきのビニール星人の正体って??これ?
ドクター 『じゃあ、せっかくだからどんなのか見ていってよ。
(メイさんに向かって中国語で)メイさん!吉岡さんに
カニを見せてあげて!』
ドクターはカニをゲットしたことがやたら嬉しかったらしくメイさんに件の
カニを取って来させた。メイさんは器用にカニを甲羅のところで持ち上げて
私に見せにきてくれた。
余命幾ばくもないその小さな生き物は、逃れられないおのれの運命を悟ったかの
ごとく、それでも「いやあん。」と言わんばかりの雰囲気で四肢(っていうか
八肢?)をゆっくりとうねらせていた。
私がつい想像してしまったビニール袋の中身の
「ビニール星人」はバルタン星人風(?)
だったので結論から言うとあまり変わりなかったかも?
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