ロンさんは最低でも週に二回は通って来る。
治療抜きでもふらりと寄ってご飯を食べていくことがある。
不思議なことにアポ抜きで来た時でも彼が顔を見せる日の
うちのご飯はわざとらしいくらい豪華でやれ手打ち麺の焼きそばだの
アヒル料理だの月餅だの鯉だの続々と腕に寄りをかけたメニューが並ぶ。
もううちはすでに病院ではなくレストラン状態。
この時期うちを訪れた他の患者さんにとってはラッキーというしか
言いようがない。
こんな風にロンさんが現れてからうちの病院はなんだか
華やかな喧騒に包まれるようになった。
普段なら綾ちゃんと交代の時間に顔を見せるドクターの奥様が
ロンさんが来るときは決まってお昼の時間にやって来て「接待」する。
それでああ、なるほど、と事前に電話でアポをとっていたこと、彼のために
特別メニューをこしらえていたからくりを理解したりするわけだ。
もうひとつ大きな変化があったのは患者さんに突然中国人が増えた
ということだった。しかも若い女性ばかり。学生さんとか起業家の
キャリアウーマンとか。留学生の女の子たちは明らかに実家が裕福な娘たちで
皆ほとんどドイツ語は出来なかったけど英語で綾ちゃんと会話して語学学校に
通いブランドの服を着ていた。
この新しい患者層(客層?)は全部ロンさんが連れて来た人たちだと
綾ちゃんが気付いたのはずいぶん後になってからだったんだ。
ここはミュンヒェン ガスタイクの音楽図書館
大抵の楽譜はここで間に合う。
ここでCDを視聴出来る。
今日は綾ちゃんここでチェロの譜面を借りました。
ブースでDVDを視ることも出来る。
わずかな年会費を払うだけで全て無料。
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