ロンさんが出入り禁止になってから病院はまた以前の通りになった。
時々、ロンさん、怒ってるだろうなあ、とかいまだに追い出された理由を
ご自分では把握してないだろうなあとかちらちら考えることはあったけど
まあ、全体としてそれほど大それた事件じゃない、時間が経てば笑い話さ、
位に思っていた。
そして「本当」の事件が起こった。
ある日のこと、若い女の患者さんが怒鳴り込んできた。
文字通りの怒鳴り込みだった。
彼女は例の、ロンさんの紹介で治療を受けた中国人の学生さんだった。
ドイツ語が一言も喋れなかったので綾ちゃんとはいつも英語で会話していた。
彼女が大変「キツイ」性格のヒトだと言うのは気がついていたがそれにしても
まあ、凄い剣幕でドクターに食ってかかった。まあ、中国語だから
綾ちゃんには全然わからなかったんだけどね。
ドクターはというと、深刻そうに彼女の話を注意深く聞いたあとで
どこかへ電話をかけた。そして電話口で相手に向かって今度はドクターが
文句を言っているように聞こえた。何だろう?お金のことかな?
綾ちゃんは他人事には首を突っ込まない主義なのでまあ、いいやっと
自分の仕事に集中していた。
すると先程まで中国語で不快そうに誰かと電話していたドクターが
まだ切れていない電話をそのまま綾ちゃんのところに持ってきた。
ええ?電話の相手が綾ちゃんに何の用?それって間違いなく中国語の
ヒトでしょう?
ドクター『フラウ ヨシオカ、ロンさんがあなたに話があるって。』
えええ!?電話の相手ってロンさんだったの?
私に何の用?
ロンさん『こんにちはー!フラウヨシオカ。お元気ですか?実はですね。
折り入ってお話したいことがあるんですけど近いうちに
お時間とっていただけないでしょうか?』
はあ。この間の契約のことらしい。まあ、ロンさんご自身は
出入り禁止だから綾ちゃんが出向くしかないようだ。幸い彼のオフィスは
病院のすぐ近くだから仕事帰りに寄れないこともない。
子供の帰宅が遅い火曜日ならと約束をした。
彼は終始にこやかだったがなんだか悪い予感がするぞ。状況的に。
ドクターはさっきの患者さんと一緒にどこかへ出ていっちゃったし。
綾ちゃんの結んだ保険契約。なんかまずいことでもあったのかなあ?
園芸下手の綾ちゃん、買って来る植物を次々に冥土へ旅立たせている
罪深いヒトですがこれだけは上手に育ちました。
クレマチス
3年目で大きくそだったなあ。
今日は16度と寒い日ですがお庭で満開です。
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