2015年12月30日水曜日

良いお年を、、、




改めて今年一年書き綴ったブログを読み返すと
まあいろいろあった年でした。相変わらずのドタバタ。



まあ、きっと来年も同じくドタバタなんだろうなあ。



みなさま良いお年をお迎えくださいませ。








マリエン広場地下のパン屋さんで見かけた。ヌードルサラダ?って
これはもしや?



スーパー ソバだと?ソバサラダかあ?
あはは、大晦日にいい塩梅かも!?



2015年12月28日月曜日

みんなでバースデー



日本ではみなさんクリスマスなんてとっくに過ぎて大晦日に向けて
慌ただしくしていることでしょう。

でもドイツではクリスマスは三ヶ日お休み。今年は日曜日もつながって
4連休。我が家は宗教色もなくただまったりして過ごしています。


かろうじてアドヴェンツクランツは作ったもののツリーは飾らなかった。
去年大きなツリーを購入して張り切ったら「なんでー?」と子供らに
呆れられ意欲を失ったため。


ドイツの家庭ではプレッツヒェンと呼ばれるクリスマスクッキーを
どこのご家庭でも目の色変えて作るものなんですけど綾ちゃんは作りません。
クッキー作りは労多くして益少ない。いただいてばっかりです。
でもシュトレンは毎年大量に作ってお歳暮代わりにみなさんに
配って回ります。これが大変喜ばれる。


それとは別に実は綾ちゃん一族?皆、この時期誕生日ラッシュなんですね。
11月末の綾ちゃんの誕生日に始まって綾ちゃん義母、母、姉、義父、父、
年を超えて長男、二男、綾ちゃん夫と数珠繋ぎであります。


大して娯楽もないこの時期、パーティー三昧というのも悪くない。
もちろんプレゼントもね。


親類は大抵食べ物を送ってくれることが多い。
子供達には現金。
でも時々素敵な贈り物もあって


ローラ アシュレイのエプロン。ドイツならこんなのいくらだって
あるんじゃないかなんて考えないで日本から送ってくれる心意気が
嬉しい。姉からいただきました。われわれ姉妹の好みです。



お菓子も日本のものはいちいち素敵ですねー。


ということで時間の出来た綾ちゃん、普段やらない大掃除を
腕まくりしてやっているクリスマスの日々でした。







2015年12月27日日曜日

カンデインスキー クレー展に行ってきましたー!




クリスマスとは思えない暖かな日差しの中、楽しみにしていた
カンデインスキー、クレー展に行ってきました。


綾ちゃん、クレーの大ファンです。


レーンバッハハウス


ケーニヒプラッツすぐそばです。




常設の「青い騎士」の画家たちのコレクションも圧巻です。



この人、パウル クレーさんですが、実は綾ちゃんの知人のドイツ人に
激似で笑っちゃいます。



ホールのシャンデリア

 

カンデインスキー 「サロメ」



マルク「青い馬」


などなどここまではレーンバッハハウス本館内の常設展。
これだけでもものすごいコレクションですが今回の特別展示は
ケーニヒプラッツ地下鉄駅構内のギャラリーに一堂に集められたお二方の
他の作品。もう、ファンには垂涎ものの逸品ばかりです。




クレー「船出」
綾ちゃん、クレーの作品では一番好きな作品です。ベルンの美術館に一度は
足を運ばねばと思いつめて未だ実現できずにいた矢先、夢が叶い大感激です。




「破壊された場所」


「大天使」



日本人の感性にピッタリくるのでしょうか、クレーのファンは
特に日本人に多いとよく聞きますがもちろんドイツ人も大好き。

ベルリンの国立美術館でため息をついた数々の名作にも再会できました。
ニューヨーク美術館やベルン美術館所蔵の作品などなど
たくさんの作品に出会うことができてもうこれ以上ないほど幸せです。


ヒットラーナチス時代に退廃芸術の烙印を押され、またその故
これほどまでにないほど愛好されたという特異な経緯を持つこれらの
作品たち。言論による圧力を加えられた人々による言語を使用しない叫びの
数々。クレーはその中でも特に色と音とのつながりが密だと言われていますが
絵を見ているだけで音やエネルギーが溢れて心をいっぱいにしてくれます。



1月24日まで特別展は開催されていますが
今年中にもう一度、今度は家族で訪れる予定です。



2015年12月26日土曜日

クリスマスに読む綾ちゃんオススメのドイツ文学



       クリスマスに綾ちゃんがオススメするドイツ文学の一冊は

                  これです。


アーダルベルト シュテイフター  「水晶」(「石さまざま」より)



ドイツ文学の至宝。



綾ちゃんがこれまでに出会った最も美しいドイツ文学の作品は
「青い花」、それから今日紹介する「水晶」です。
(綾ちゃんは昔カロッサの専門家だったのですが彼の「幼年時代」を加えた
3作品が綾ちゃん的にはドイツ文学三大ベストです。全部世間的には
マイナーだということは承知しています、、、が。)



ちなみに日本では公開されていませんがミュンヘンの誇る巨匠フィルスマイヤー
によって2009年に映画化されてもいます。








             


    少し現代っぽくした内容ですが大筋は原作をなぞっています。もちろん
   原作とは似て非なるものなのですが、これはこれで泣けちゃいます。
   綾ちゃんはロードショーを2回(一人で)見に行って、クライマックスのところで
   もう、監督の罠と分かっていてもドーッと滝のように涙が溢れて泣いて
   泣いて大泣きしてしまいました。DVDも買いました。




    むかしむかし、スイスの山岳地方で起きたクリスマスの小さな奇跡についての
   物語です。とても地味な筆致ですがスイスヨーロッパの自然の厳しさとそこから
   溢れ出る小さな喜びの数々が丁寧に綴られています。渋い一冊です。





              良いクリスマスをお過ごし下さい。








 



2015年12月25日金曜日

Silent Night 〜 聖なる夜に




        キリスト教とは無縁の環境で生まれ育った綾ちゃんが
       ドイツに長く住んでいて、少しでもこの時期のドイツのクリスマスの
       雰囲気に誠実であろうと考えて、独りで行っていることがある。






        それは、せめてこの時期だけでも真面目になって「平和」について
       考えたり語ろうと思っているということだ。






        今年はそのような意味ではとても考えることの大きな年だった。





        綾ちゃんにとっては(そして多くの日本人にとって)一月末の
       日本人人質事件の悲惨な結末が大きな波紋の引き金となりパリの
       惨劇までを震撼とともに過ごした一年だった。


        この問題については武田先生が綾ちゃんの言いたいことを見事に
       全部代弁してくださったのでもはや語るべき内容の無い状態だが
       ドイツの人々が全体としてではあるが実に理性的になって一つ一つの
       目の前の事実に対処している姿が印象的だ。



        先日、ドイツ人の友人のお宅にデイナーに招かれた。日本人である
       アヤコはどんな風にクリスマスを祝うの?と訊かれたので綾ちゃんは
       答えた。少なくとも綾ちゃんは祝うべき背景を持たないから平和に
       ついてひたすら考えることにしている、と。
       自然、現在のシリア問題について延々と話し合うこととなった。
       ドイツ人は本当に議論好きな人たちだ。そして気持ち良くスマートに
       意見交換を行うことができる。綾ちゃんの仲良しだからということも
       あるけれど彼らはほぼ綾ちゃんと同じ思考回路を持っていて、
       最終的に政治を語るために平和を語るためにきちんとした歴史の勉強を
       続けていくことが重要だ、というところに落ち着いた。




        世相を見渡すと大きな無力感に陥ることの多い私たちだが
       小さな明かりを灯すように生命を大事にしたり自分を守るような
       気持ちで他人の心の尊厳を尊重することを学んでいきたい。
       






                 メリークリスマス。




       今年を締めくくる綾ちゃんのイチ押しはもちろんURUさん。
                                     Silent Night



       

2015年12月24日木曜日

生きている人を損なう痛み






この夏読んだ「ソロモンの偽証」


映画は綾ちゃん的にはぶーです。ちょっと色々残念だった。



映画化されたりして話題になった宮部みゆき久々の大作からご存知の方も多いと思う。
この中で、謎の死を遂げた男の子のお母さんが全くの虚無に支配されてしまい
生きているお兄ちゃんを全く眼中に入れることができないという描写がある。
このケースだと母親は二男をそもそも偏愛していたという前段があるにはあるが
近親者の「死」があまりに重く本来今こそ大切にすべき周囲の「生きている」人を
損なってしまうことは割とよくあることで、職場でこういうケースを
耳にしたりすることもあるし実際知人にもこういう人がいる。
(その人はお子さんを亡くした後、そのショックが原因で離婚してしまった。)


夢の中で綾ちゃんが体験した絶望感も圧倒的な暗闇でそれはすっぽりと
綾ちゃんを包み隠しどこへも出口を見せないほど暴力的で強い力だった。
勉強になりました、では済まされないリアリティーだったんだ。



夢の続きを見るのが怖い。



綾ちゃんは自分の人生で不幸な体験というのをほとんどしたことがなくて
実際には打たれ弱いのだと思うけれど。
夢の中とはいえ、こんな風に生きている人を損なっていく痛みが
あるのだと思い知った出来事でした。






それはそうと今日は御用納め
ただ普通に家にかえるのが惜しくて寄り道。
カールス門のアイスリンクで一杯飲んだ。ら、思い切り酔っ払った。



ちなみに「死ぬ夢」というのは自分の場合も家族の場合も
夢占い的には大吉なのだそうです。






2015年12月23日水曜日

どちらが先に死んでいた?



        『ほらねー!判ったでしょう?僕にスマホを買ってあげるのが
     いかに重要なことかって。奈落の底から引き戻してあげたんだよ。』



              クリスマスプレゼントにスマホをとわあわあ言う息子は相変わらずしつこい。
   うるさい!お前に持たせるとゲームとアニメにチャットで一日終わってしまうわ。



              と口では言いつつ夢の余韻に未だ支配されている綾ちゃんは目にはいる
   息子の姿にうるうるしてしまう。今日このまま電器店に連れて行かれたら
   一番高級なスマホを買い与えてしまいそうだ。今日が日曜で本当に良かった。



               綾ちゃんが強烈な夢を見て、しかもそれをはっきりと覚えているというのは
   実に数年ぶりのことだと思うんだけど、夢を見ている最中、ショッキングな
   ことがいくつかあった。




               一つには、夢のただ中で気付いたんだけど、やっぱり綾ちゃんは続きものの
   夢を見ていたのだ、という事実?だった。綾ちゃんが息子の死ぬ夢を見たのは
   それ以前に息子から彼の死ぬ夢について聞かされたからではなく絶対にその前の
   時点だったと思う。あるいは同時かも?、、ぎゃああー。母息子で同時に
   同一人物が死ぬ夢えー?嘘でしょう。



               それから、これは出典がありそうなんだけど、長男に対する綾ちゃんの無感情が
   我ながら怖かった。ひやああ。片一方を失ってしまったらそのことに心を
   奪われてあんな風になってしまうのか?でも夢の中の綾ちゃんは
   マジ本気だった。(マジ本気って畳語?)





日曜日お散歩の最中発見した。子供遊び場からアンパー川に抜ける通り道。
異世界への入り口っぽく雰囲気あるー。



               

2015年12月22日火曜日

すでに死んでいた?






ふと、違和感を感じた。なんだかおかしい。


綾ちゃんはいつものように炊事をしたり(放っておくと
不健康なものばかり食べたがる子供のために工夫してお野菜を入れ込む)
綾ちゃん出来ないくせにフランス語の単語や文法をチェック(お勉強の出来ない
二男に復習させるため。長男の時もラテン語でいつも苦労しながら手伝った)、
それからバッハのチェロスイートのお手本探したり(以前は音楽を手伝うのは
夫の役だった。今はど素人の綾ちゃんにお役が回ってきてちと荷が重い)
しながら何が間違っているんだろうかと不安を覚えた。



独立独歩の長男は思春期も卒業して母親に全ての面で介入されるのを
嫌うから(その割に突然頼ってくることもあってややこしい)普段は
なるべくそっとしている。男の子なんてこんなもんなんだろう。
ママっ子の甘えん坊は二男。だからこのところ綾ちゃんがあれこれ
世話を焼くのは大抵下の子のことなんだけど、、、どこがおかしいんだっけ?



ん?綾ちゃん、今、何してるんだっけ?料理?何のために?
食べる人もいないのに?フランス語?何でアイツ、学校になんて行ってないよ。
だって、、、チェロ?チェロなんて今更聴いてどうするの?綾ちゃんはチェロなんて
弾けない。うちにチェロなら一台あるけど。でも誰も弾かない。
弾く人はいない。だって、、、。だって、、、。



そうだ。彼は死んだんだ。



一瞬のうちに奈落の底が綾ちゃんの胸に蘇った。



信じられない。綾ちゃんの意識がこの厳然たる事実を拒むがあまり
一瞬先には息子の死を受け入れまいとしてついつい目を背けて
以前と同じ生活に戻ろうとしてしまう。現実に戻ると突然恐ろしい虚無感に
支配され息をするのも苦しい。一体いつ?いつ彼はいなくなってしまったんだっけ?


もう数日は経ったはず。今日はお葬式をあげる日だった。あれから何度も
記憶喪失に陥っては現実に戻り、を繰り返している。いや、やっぱり
受け入れられない。全てがあまりにも突然で悲惨な最期だった。
あれが彼の運命だったなんて、、、。



綾ちゃんはふと静かに佇む長男の姿を目にする。じゃあ、この子は何者だろう?



いや、やっぱりおかしい、、、。


まてよ、昨日、誰かが綾ちゃんにしつこくしつこく新しいスマホを買えと
迫っていたっけ。長男はすでに持っている。奴じゃない。



スマホ、スマホ、スマホ、、、。これは何かのキーワードだ。



あいつだー!二男だー!生きてるぞ!つまり、今は、これは、、、



夢なんだー!!



ハッと目をさますと綾ちゃん、大泣きしていた。



ヴィクトリアン マルクトのマイバウム。
クリスマス仕様ですかね。イルミネーションか綺麗でした。



2015年12月21日月曜日

死の夢





       『あー、怖かったー!僕さ、自分が死ぬ夢見ちゃったよ。』




    そう息子(二男)が言ったのは先々週の週末のことだった。朝食時に
   家族が揃うのは週末のみだから多分土曜日のことだったと思う。





    え?自分が死ぬ夢って見るものなの?死にかける夢なら見るっていうけど
   本当に死んじゃうの?彼によるとそれは本物のせい惨な殺人事件で大量に
   血を流しながらああ死ぬー!と感じて意識が途絶えていくところまで
   鮮明な夢だったそうだ。目が覚めた時、自分が生きていることにしかも
   ぴんぴんしていることのショックがまた大きかったそうだ。
   そしてこれは違った世界に間違って
   パラレルっちゃったんじゃないかともまで一瞬考えてしまったそうだ。


    それから家族3人で夢の話題でひとしきり盛り上がった。



    夢の見方というのもそれぞれ人によって異なっているものだけれど
   綾ちゃんは残念ながら夢というものをほとんど覚えていない。特に
   仕事を始めてからというものバタンキューで深く眠って結構短い睡眠時間で
   毎日をこなしているせいか夢を見ていないか覚えていないかのどちらかだ。




    あえて言うなら、、、というところで長男と意見が合ったのだが
   綾ちゃんは昔、よくシリーズ物の夢を見ていた。朝起きると大抵
   忘れちゃうんだけど夢の中では前回までの成り行きを完全に把握していて
   続きが普通に始まっちゃうのだ。まさしくパラレルワールド。





    死の夢を見た本人は相当なショックだったらしくかなり青白い
   顔をしていたが皆でわあわあ盛り上がっていたら大分落ち着きを取り戻し
   後半は一緒になって笑っていたから調子を取り戻すのも早かった。




    その時はそれだけのことだった。、、、その一週間後、
   今度は綾ちゃんが夢を見ちゃったんだ。




            

夢文学といえばこれ。
夏目漱石 夢十夜

自分が死んじゃう夢は第六夜ですね。

    
 

2015年12月20日日曜日

一葉の写真と親としての願い



      一週間のコースが終わって結論が出た。文句なし!これ以上の
     伴侶はいない。半年以上にわたる楽器探しの旅は終わりハッピー
     エンドを迎える。




      綾ちゃんが楽器を恋人に例えるのには実は訳がある。今から
     10年近く前、子供の音楽教育をどのくらい本気にするのか
     まだ半信半疑だった頃、ある女性と知り合いになった。
     その方は4人のお子さんを全て一流の音楽家に育て上げたことで
     有名な方で男の子、女の子、性格も違い持たせた楽器も様々。
     その方と最初に話した時、ほとんど開口一番にこうおっしゃったのが
     あまりにも印象に残っているのだ。


        『教師探しは結婚相手を探すのと同じです。』


     彼女自身は音大教授夫人。そう、自分の先生と結婚しちゃった訳で
    あまりにも説得力のある発言だ。それだけに綾ちゃんはアタマを殴られたような
    ショックを受けたものだ。



     これが「自分を大切にする」ということなんだと。





     趣味なんだからとか自分を誤魔化しちゃいけない。人生の一瞬一瞬に
    全てを賭けて生きていくべきなんだと。綾ちゃんは少なくともそのことを
    子供達に伝えていかなければならないと。





     綾ちゃんは子供が実際に音楽家になるとかそういうことにこだわっている
    わけじゃない。でも音楽はたった一つのフレーズにもその人の人生を現わす。




     だからそのために、そのことを理解してくれるパートナー(楽器)を
    そばに置いておいて欲しいと切に願っていたことをわかって欲しいのだと。






          

         若き日のファイヒェルマン氏(チェロの持ち主)と
            ウエン シン ヤン氏



   綾ちゃんが今願うことはただ一つ。綾ちゃんの子供が手にした楽器を奏でる
  ことで一人でも多くの人々を幸せにすることができれば。




 

2015年12月19日土曜日

火災警報器という名のチェロ


 

そしてこれは今借りているパウル クノアよりお安い。綾ちゃん本来の
予算通りのお値段。


先生は注意深く点検した後でおっしゃった。とにかくまだ即決はできない。
一週間指鳴らしして合格ならば冬のコースに持って行って大きなホールで
弾いてみよう。綾ちゃんはその旨職人さん経由で持ち主の方に許可を頂き
シュタルンベルク湖に持っていくことになった。



毎年ブログにも記事をアップしている。ここで毎年チェロはうちの先生と
もうお一方、ビックゲストを招くのが常だが
それが今年はあのウエン シン ヤン先生だった。





この方。素晴らしいチェリストです。


彼は、というか彼も元バイエルン放送響のソリスト。つまり、うちの先生と
チェロの持ち主、ヤン先生は一本の線で繋がるわけでなんだかものすごい
縁を感じるー!


シュタルンベルクでは全くの合宿状態で大広間で皆で一緒に食事する。
普段は雲の上の存在であるユリアさんやヤン先生と気軽におしゃべりしたり
できるのもものすごい体験なんだ。


うちの先生、ヤン先生に件(くだん)のチェロを見せて説明した、、、ところ
なんとヤン先生はこのチェロを覚えていらっしゃったのだ。



『なんだ!こりゃあアイツの火災警報器じゃないか!アイツがいつも
真っ赤なチェロ下げてやってくるから俺はいつもからかって言ってやったもんさ、
ファイヒェルマンが火災警報器下げてやって来たよってね。
たまげたなー。懐かしいよ。こんなところでまたお目にかかれるなんて。』









2015年12月18日金曜日

本当に引き寄せた?





       案の定危惧していた通りアンナちゃんの職人さんの仕事は
      遅々としてはかどらなかった。約束の3ヶ月が過ぎた頃電話した
      綾ちゃんに、あと六週間かかります。あうーん。こっちは予算的に
      カウフミーテもそろそろ限界。先生は先生で今度はクレモナ(イタリアの
      都市。アントニオ ストラディバリの故郷でヴァイオリン製作の聖地)
      行きを持ち出し始めた。ひええー!そこまでする?どんだけー?(⇦古い)



       そろそろ追い詰められた綾ちゃん。息子のコンクールまであと2ヶ月を
      切っている。とりあえず捜索範囲をバイエルン州圏外にまで拡げるべく
      準備を始めたところで例の職人さんから電話が入った。



       『フラウ ヨシオカ、いえね、新しいチェロはまだなんですけどね、
       実はとても良いチェロを売りたいという人が現れて。以前の私自身の
       作品なんですけど興味ありませんか?』




       あります!あります!なんと所有者は引退したばかりのバイエルン
      放送響のソリストだという。彼が舞台でメインに使用していた宝物を
      売りたがっていらっしゃると。(おそらくもっとすごい逸品をお持ちで
      引退後に何本も楽器を必要としないと判断なさったのだ。)今から
      行きます。すぐに行きます。一時間ちょっとで着きますから誰にも
      売らないで待ってて下さい。




       慌てて息子と家を飛び出した。丁度いい。今日はチェロのレッスン日。
      先生にその足で見せに行ける。綾ちゃんは早足で歩きながら携帯で先生に
      電話をかけて事情を説明した。すると彼は電話口で驚いて、





       『何だって?フラウ ヨシオカ?いいですか、私があの職人さんを
       紹介した時に説明したでしょう?元同僚のチェロが素晴らしかったって。
       それはその彼のことですよ。もしかしたらあなたはこの条件で
       考えうる限り最高の楽器に出逢ったのかもしれない。』





       何てこったい。まさか綾ちゃん、本当に「引き寄せ」ちゃったの?




病院のすぐそば。ゼントリンガー門のクリスマス市。







2015年12月16日水曜日

さてそのお値段




      ところで気にかかるお値段だけれどもこれは本当に千差万別。
     とはいえ結局どこへ行ってもお値段が質に比例するという基本法則に
     変わりはない。店頭で予算はこれくらい、と伝えるとその額で「あーあ」と
     ママの「本気度」を推し測られる。ちなみに2年前にドクターの従姉妹さんが
     遊びに来られた時にドイツの思い出にとヴァイオリンを買って帰った。
     10ユーロ。一体どこで買ったんだ!綾ちゃんが教えてあげたお店に
     本当にそんなものがあったのか謎だがとにかく安くて素敵なものが
     見つかったと喜んでらしたから装飾用とかで別枠料金帯だったかもしれない。
     が、とにかくとことん安いものもある。
     まあ、普通は趣味の練習用なら1000ユーロ以内かな?チェロだと。
     ヴァイオリンはもっと安いと思う。日本じゃあこうお安くはいかないん
     じゃないかな?



      皆さんどうなさっているのか気にかかるところだけど、中々他所の
     ママには訊きにくい。綾ちゃんはアンナちゃんが払った額までなら
     なんとか払えるし、その値段であのレベルの音が出るならまずオーケー
     だと思っていた。無茶をしても仕方がない。
     綾ちゃんの個人的なリミットは数年前に長男にグランドピアノを購入したのと
     同額まで。何となく、これで兄弟平等って気がするし。




      綾ちゃんの交友範囲(音楽ママ友)で、お子さんに1000万円級の
     楽器を購入してあげた親御さんを数人知っている。正直、とっても
     羨ましい。そのくらい予算があればじっくり選ぶことができる。
     でも無い物ねだりをしたって仕方がないからね。
     なーに、こういう時こそ綾ちゃん、得意の念力(おいおい)で「出逢い」を
     「引き寄せ」ちゃうのさ。



     この時期、偶然ミュンヘン地域で高名な子供のヴァイオリンの先生が
    うちの病院に患者さんとしてやってきた。綾ちゃんはすぐに彼と仲良しに
    なれたので早速良い職人さん情報を尋ねたら快く教えてくれた。ここは
    ヨーヨーマが贔屓にしている店だから間違いないよって。
    速攻で電話をかけた綾ちゃんにその職人さんはあっさりと
    こうおっしゃったものだ。


        『失礼ですが、おそらくうちはお客様のご要望にお応えできかねると
        存じます。当店の場合は最も価格帯の安いものでも1000万円
        以上になります(!!)ので。14歳(当時)のお坊ちゃんには
        少々お高いかと。』





       ひゃあー。これはやっぱり別世界。本当に千差万別です。






マリエン広場とクリスマス市

             



2015年12月15日火曜日

最高の恋人に出逢えると信じて







       あちこち楽器探しを続けたのち、ある時友人のチェリストIの
      紹介でミュンヘン市内の楽器屋で一つの出逢いがあった。



       1世紀前の職人、パウル クノアの作品。ちょっと個性的で渋みの
      かかった陰影のある音色。いいじゃん、いいじゃん。
      お値段は綾ちゃんの予算を軽く50万円近く超えている。弓だって、
      ていうか弓だけでも別件で40万円以上する。
      でもうちの先生も気に入ってくださったので思い切ってカウフミーテ
      (購入を前提としたレンタル。定価の1%を月額で支払うと3ヶ月まで
      前払金としてくれる。)にしてゼーフェルトの夏のコースに持って
      いくことにした。でも一週間のコースの最終日、先生に言われた。
      もう少し探してみましょう、この値段のクラスでこれが最高とは
      言えない気がする。




       結局このチェロを都合半年間レンタルした状態で、これより良いものをと
      探し回ってさらにウロウロして回った。





       そう、最高の恋人に出逢えると信じて。




               

              早いものでもう第3アドヴェントです。


2015年12月12日土曜日

旅の始まり






       もちろんイの一番にしたことはアンナちゃんの職人さんに
      電話をかけることだった。「昨日、アンナちゃんのチェロを見ました。
      あんなの(ってダジャレじゃないつもりなんだけど)欲しいです!」って。




       職人さんはいわゆるアトリエを持って一人で毎日コツコツ楽器を
      作ってらっしゃる方だから(大きな楽器屋さんではないので)当然
      アンナちゃんのことを覚えてらした。





       『残念ながら今すぐにというわけではないのだけれど、今、制作中の
       ものがあるから3ヶ月以内に出来上がりますよ。』



       そう、売れっ子職人さんの作品は完成する側から売れてしまうから
      争奪戦になってしまうのだ。でもとりあえず次回作ゲットの筆頭リストに
      加えてもらえた。これは悪くない兆候だと思う。新作の楽器というのは
      真価を計るのに時間がかかるし必ずしも彼の作品だからといって綾ちゃんの
      気に入るとは限らない。オタクのムスコさん、誰でもいいからオムコに
      下さいってなわけにはいかんのだ。(⇦しつこい)何よりも他にどんな
      出逢いが他に待っているかわからないから他所を当たれるだけ当たって
      みたほうがいい。そうしたらきっと綾ちゃんのチェロ審美眼も
      磨かれることになるだろう。




       綾ちゃんは更なるアドヴェンチャーを(?)求めて旅に出ることに
      なったのである。







                              ヨーヨーマは世界最高のチェロを持っている一人。
        ウイキ博士によればモンタニアーナのペチュニア、
        それからジャクリーヌ デユ プレから譲り受けた(!)
        ストラディヴァリウスを演奏しているそうだ。

 

2015年12月11日金曜日

一目惚れと青い花




       それで去年ミッテンヴァルトへ行ったりバンベルクに赴い(て
      ビールを飲んだ)たりした記事をアップしました。
      もちろんミュンヘン中の楽器屋さんも回りました。




       でも実は最初からこういうのがいい、というモデルがあった。





       お高い買い物だけど右も左もわからない。どんなのがいいんでしょうね、
      先生?と尋ねた時、たまたま門下生のアンナちゃん(本名)がそばにいた。





       『それがね、アンナがつい最近、すごいいいのを買ったんだ。
       新品だよ。ちょっといいかな、アンナ。』




        先生はアンナちゃんのチェロを借りて幾つかのフレーズを
       演奏してくださった。






                 じーん。惚れた。




        『ね、いいでしょ?これは昔の同僚で音楽家としてすごく
        尊敬しているチェリストがいるんだけど、その彼のチェロが
        モダンなタイプなのにものすごく音がいいから誰の作品なのか
        訊いたんだ。そしたらミュンヘンの職人さんのだっていうんで
        そこに連絡して買ったんだよ。』





                  一目惚れだった。




         人間でいうとこれは「道ならぬ恋」に当たるのか?他人の
        恋人に惚れちゃったわけだから。いや、違うな。
        なんていうか憧れの雛形を見た夢の中のハインリッヒ・フォン・
        オフターデインゲン(ノヴァーリス「青い花」の主人公。
        夢の中で見た花を求めて旅に出る)に近いかもしれない。




         そう、綾ちゃんはチェロの中に「恋」を見つけて旅に出ようと
        していたんだ。





             

綾ちゃん、もしかしたらドイツ文学全作品中で
一番好きな作品かもしれない。
ロマン主義の最頂点



2015年12月10日木曜日

恋人探しのように






     息子は成長期で見るたびにでかくなる。毎日顔を合わせているのに
    まるでタケノコだ、という時期にそろそろ1/1のチェロを持たなければ、と
    先生に言われた。分数楽器の頃は借りてきた楽器に大して文句も言わなかった
    先生(元バイエルン放送響首席奏者)が俄然張り切りだした。





     『いいですか、今回だけはものすごく良いものを買いなさい。昨今は中国製の
     素材などでびっくりするほど安いもので音も良質なものが出回っているけれど
     これはお薦めできない。今は良くても5年、10年先の保証が出来ないし
     何よりも財産としての価値がない。あなたのお子さんが音楽の道に進むなら、
     今、出来うる限り一番良いチェロを買って音楽性を磨いてあげるべきだし
     もっと上手になってもっと素晴らしいチェロに出会った時にそれを資金源に
     できる。たとえこの先音楽に進まなかったとしても、万が一彼が資金難に
     陥った時には彼を助けてくれる。』





     なんだか似たような口上を不動産売買の時に聞いたような気がしないでも
    ないけれど、、、んでもおっしゃることはよくわかるよ。綾ちゃんは
    ピアノ探しの時にも経験したからね。最初は息子のお嫁さんを選ぶような
    気でいたのに途中からエンジンがかかって自分の恋人探し!?の気分に
    陥ってしまったものだ。あーあ、おそろし。息子が本当に恋人連れてきたら
    どうなるんだろう?



     うちのピアノは2台。アップライトがスタインウエイ社でグランドが
    ベヒシュタインだ。ピアノも一台一台音が違うからこれ!というのに
    出会うまで妥協せず(お値段はとことん妥協できるものを探して)
    頑張った。これというのが見つかった時には綾ちゃんみたいなど素人でも
    鍵盤に触れただけで天にも昇る心地がしたものだ。
    良い道具に出会った時っていつもそうだ。
    触れるたびに、ああ、出会ってよかった、何て幸せなんだろうって思うんだ。
    そして不思議なことに良い楽器で練習してると本番で良くない楽器に当たっても
    普段身につけた「音」を出すことができる奇跡。



     音楽家にとって楽器は武器であって恋人でもある。剣士にとっての剣。
    書道家にとっての筆。たかが道具じゃない。お互いを支え合って鍛えあって
    磨き合う大切な愛すべきパートナー。そう、やっぱり恋人そのものだね。
    






多分、世界中で一番有名なチェリスト パブロ カザルス
残念ですがこの時代の人の演奏は録音がひどすぎて
良さがよくわかりませんね。





   






2015年12月9日水曜日

チェロの話





去年の秋口から息子のチェロ探しの話題を何度か出していましたが
成果については書いていなかったなーとふと思いつきました。
別に聞きたい人も(読みたい人も?)いないだろうと放っていたんですな。
でも年末にあたり、綾ちゃん年頭のビックイベント?だったわけだから
(そしてそれに続く財政難の始まり)今年の出来事総決算で
綾ちゃんにとっては大切な話題なので今日から数日はあくまで
自分の自己満足的日記ぽく書きたいと思います。



弦楽器というのはとにかくお金がかかる、というのが通説ですが
振り返ってみるとそれほどでもないかな?
日本だとかなりものすごくって、ドイツにいたからこそ
こんな贅沢なお稽古事を息子にさせてあげられるのかな?とも
思うけれどね。いづれにせよ教育費は大きいですけどね。
(これも日本の比ではないらしい。)



昔と違って今は楽器のレンタルが盛んだからたいてい何でも購入せずに
済んじゃう。弦楽器の場合は子供の頃から分数楽器と言われているミニチュアを
身体の成長に合わせて買い換えなければならない。
ドイツだとムジークシューレと言われる音楽学校に入ると
ほとんどの場合、内輪の格安料金でレンタルできる。
楽器屋さんでレンタルしてもせいぜい月に30ユーロ以内で収まる。



だから大人用が必要な時期が来たってずっとレンタルだって構わない。
楽器保険だって安いものだしその方が気楽だ。
駐在のご家庭など皆さんピアノはレンタルで済ましてらっしゃる。
質だって決して悪くないし、何よりも素晴らしいのは
楽器そのものよりもヨーロッパの空気の程よい乾燥度だ。
クラシック音楽が生まれ育つのはこういう気候なんだと思い知って
しまう。弦がポンと音を出すときの気持ちいい弾み方は日本とは
比較にならない。



それでも、それでも!自分の楽器を持たねばならない時がある!





文章となんの関係もありません。
ドクターのお絵描きです。中国の有名な人の肖像画かと
思いきや、全然関係ない人ですって。
本の挿絵の人物を真似て描いてみただけだって。


2015年12月8日火曜日

プライオリティー




        あのー!確か乗車券違い等で検札にひっかった時には
       (皆が皆現金を所持しているわけではないので)用紙をもらって
       後で罰金を払い込むことが出来るシステムのはずですよ。



        『何をおっしゃるのヨシオカさん。私はそこで現金を
        持っていたのよ。持っていたのに払えないなんて言えるわけ
        ないじゃない。』





        そーかー?いや、だから〜、ご自分でもおっしゃっている
       でしょう。それは治療代だって。検札に支払うのは良くってうちでは
       払えなくって勘弁してくれってのはどういう理屈だ?、、、まあ、
       実際のところうちは別にいいんだけどね。あとからだって。



        何となくわからんでもないのは、つまりこういうことだな。
       自分を侮辱する人々(ホントは本人が悪いんだけどね。自覚しているか
       は不明)と金銭貸借的関係を持ちたくない、一刻も早く「キレイ」に
       なりたい気持ちに優先順位がついたってことなのかな?



        おばあちゃんは綾ちゃんが考えていたよりもずっとしっかりしてらして
       翌日MVGの窓口に一人で乗り込んでいって「無実」を訴えに行った。
       綾ちゃんはその話を聞いて、またおばあちゃんが興奮状態に陥って
       体調を壊してしまったらと(だってこんな一方的な主張が通るわけないと
       思うから)反対したんだけど行ってしまった。



        後から聞いたけど、言いたいこと言えてすっきりしたってさ。
       もちろんお金は返ってこなかったけど。




        二児の母親でもある綾ちゃん、よく子供の心配をしすぎて夫から
       もっと自立させてあげられるようにさせてあげなきゃあ、って
       言われることあるんだけど、患者さんに対しても心配しすぎちゃうことが
       多いんだよね。


        なんだか変な感じだけどでもやっぱりほっとしました。





もう、綾ちゃん、URUさんにぞっこん惚れてまいましたー!
ここ数日ずーとURUさんばっかり溺れたように聴いてます。
今日は尾崎豊の名曲を。Oh My Little Girl





  




2015年12月7日月曜日

太陽が笑っているよ



(魔法使いおばあちゃんのキセル事件の続きは明日書きます。)







今日、パソコンで作業していたらミュンヘン近郊の町に住む
友人(ドイツ人)からメールが届いた。





アヤコ、僕の住む町では青い空から太陽が笑っているよ。
Liebe Ayako, in xxxx lacht die Sonne vom blauen Himmel.



それだけ。






この彼は綾ちゃんの親友の一人。おそらく綾ちゃんの知人の中で
一番頭脳明晰だ。

そしてものすごく勘がいい。


涙が出そうになった。
ちょっぴり綾ちゃんが疲れているの、どんなテレパシーで
わかっちゃうんだろう?





そういえば最近空を見上げてなかったなーと思って散歩に出た。



ドイツではもうすっかり日が短くなってしまっているけれど
外に出ると思いもかけず暖かくて肌に当たる空気が優しかった。



ちょっと最近忙しすぎたかなー?
思いもかけず癒されて心温まる1日になりました。


ありがとう、S。


2015年12月5日土曜日

潔白





      『見てちょうだい!これ!わ、私はね、タダ乗りなんてするわけないの。
      お金に汚いのが一番嫌な人なんだから。
      だけどあいつら、全然私の話なんて聞いてくれやしないの。いい、
      今週私は毎日鍼の集中治療に通う予定にしていたでしょう?
      乗車券だってその方がお得だから。息子が月曜日に一週間定期券を
      買ってくれたの。ね、わ、わ、私は潔白なのに!






       いや、潔白ではないでしょう。おばあちゃんが見せてくれた乗車券には
      16、50ユーロと書かれている。おばあちゃん、確かフライジングに
      お住まいでしたよね。フライジングといえば、この夏綾ちゃんが一人で
      ドイツ最古のビール醸造所に行ってきた、あのちょっぴりステキな街だ。
      ありゃあ、郊外電車で終点の駅じゃないか。その額じゃあ、1日の往復分
      くらいにしかなってないよ。




       『息子が買ってくれたものだもの。間違いだとすれば息子が悪いのよ。
       私は何も知らないわ。だけどあのMVGの人たちったら何も聞いて
       くれないの。ただただ罰金を払えの一点張りで。私はね、これは私が
       これから治療に使うお金だから絶対払いたくなかったの。』





        あのー、確かこういう時って、現金を持っている人だけではないから
       支払い用の紙をもらうことができるはずだと思うんだけど、、、
       何でおばあちゃん、払っちゃったんだろう?

       





何だか不思議と人恋しい季節
素敵な歌声を見つけました。
URUさんの歌う真夏の果実。
今日の綾ちゃんの気分にぴったり。



                               

2015年12月4日金曜日

黒い乗客




ミュンヘン子なら誰でも知ってる公共の乗り物のルール。



いわゆる改札がない国だから(ヨーロッパの多くの国はこうなんですよね)
時々改札が入ってキセルしてると罰金を取られる。
シュヴァルツファーラー(Schwarzfahrer=黒い乗客)っていうんだけど
とにかく忘れたとか間違えたとか言い訳は一切聞かないというのがルール。
捕まっちゃう方が悪いのはわかるけどお互い嫌な思いしないためにも
改札がある方が親切な気がするんだけどなあ、綾ちゃんは。


現在はミュンヘン市内なら60ユーロ持ってかれます。
ちなみに綾ちゃんの住んでる町には40ユーロと書いてある。
まあ、改札も滅多に来ないけどね。



つまり、おばあちゃんはこれに捕まって罰金を即金で払わされちゃったって
いうんだ。






マリエン広場を通りかかった。クリスマス市、いいなあ。
ついグリューワイン(ホットワイン)でも一杯飲んでいこうかと誘惑に負けそうになる。
ちなみに綾ちゃんはグリューワインよりフォイアーツアンゲンボールという
オレンジ&ラムのホットワインが大好きです。



2015年12月3日木曜日

やつらに盗られた

                


          老齢の女性がめそめそしながら病院にやって来て、綾ちゃんの姿を目に
    するなりうわー、と抱きついておいおい泣き始めた。
    ど、どうしたの?魔法使いのおばあさん。




                   彼女はドイツ語ではない別の言葉で「魔法使い」を意味するスペルの
    名字の方だ。(偶然この単語を知っていた。)見た目は普通のおばあさんだけど
    綾ちゃんは心のニックネームで「魔法使いのおばあさん」と呼んでいる。
    見た目は全然怖くない、普通に優しいおばあさんです。




                   彼女はわんわん泣いてしかも綾ちゃんを離してくれない。まあ、落ち着いて。
    どうしたの?お茶でも飲んで落ち着きましょう。まずは座って。




         『お、お金を盗られたの。なけなしのお金。きょ、今日、
         鍼を打ってもらうために大事に大事に持ってきた、あの、お金。
         息子が私の治療のためにくれた大切なものだったのにいー!!』





     えー?それは一大事!おいおい泣いて中々話が進まない。綾ちゃんは
    ずーっとおばあちゃんを抱きしめながら背中をさすっていた。
    このおばあちゃん、いろんな病気を抱えてらして爆弾だらけのお身体だ。
    とにかく落ち着かなくっちゃ。身体に毒だよ。
    、、、もしかしたら警察とかに付き添ってあげなきゃならないかも。
    息子さんに連絡してお迎えに来てもらったほうがいいかな?ちょっと遠く
    だけれど。
    息子さんはこちらで工学博士号を取得したばかりの若きエリートだから
    頼りにしていい。でもおばあちゃんの方はドイツ語もたどたどしい
    クロアチア移民で性格的にも極めて不安定で悲観傾向が強い方なんだ。
    放っておけないよ。





     ようやく少し落ち着いてきたのでお茶を淹れてあげる。ねえ、おばあちゃん、
    話せますか?何が起こったのか?





     『お金を、お金を、あいつらに盗られたの。あの、MVG(エム ファウ
     ゲー)のやつらに。もう、最悪だわあ。』




     そう言ってまた泣き崩れた。





             ・  ・  ・  ・




     あ、あのー。それってまさか、、、アレ、じゃないでしょうね?





           

              このロゴが何を意味するのか解れば
             もうあなたは立派なミュンヘン人です。





                

2015年12月2日水曜日

あきらめと出逢い

                       


      怒濤の闘病生活が終わりを告げた頃に現在の家に引っ越した。
     ミュンヘン市内の団地から庭付きのお家へ。ピアノを弾く長男のために
     グランドピアノを購入したからだ。



                       綾ちゃんがすっかり健康を取り戻したのと入れ違いに二男が体調を崩し、
     エピソードは以前書いたっけね。





                       こうして改めて描き出すと一つ一つは不幸な事件に思えることが
     やっぱり繋がっていて全体として大きな教えになっているということが
     わかるなあ。




                       結局無駄に(!?)医学の知識を詰め込んだだけで役に立つ成果を
     何一つあげられず、時々人に頼まれて主に医療関連の通訳を(無料です!
     プロのようには上手に出来ないので)したり、昔取った杵柄(きねづか)で
     家庭教師をやったり(こっちは有料)と大人しく?生きていました。


                     綾ちゃんがテストベタだったりイマイチキャリアウーマン的な成功を
    納めていない大きな理由の一つに、世間的な意味での名誉欲が無いという
    ことが挙げられるんだけどこういうのんびりした人もいていいよね。


     綾ちゃんはドイツで資格を取れなかったのが痛恨の一事であることは
    事実なんだけど、実際にドクターの仕事ぶりを眺めているとやっぱり
    綾ちゃんには独立して自分の診療所を構えるのは無理だったのかなあと
    思ったりする。本当に大変そうだもの。


     なんとなく、綾ちゃんが勢い良く突進していたことを諦めてしまった時、
    今度は引き寄せの法則が働いてドクターに出会えたのかなって思ってるんだ。



            
             

           カウフホフ デパートのケーキ。楽しそう。

2015年12月1日火曜日

まさかの盲腸炎





自己採点によればあと3ポイント足りなかった資格試験。惜しい!
実習を一緒にやった養成学校の仲間たちは(メンバーの中では綾ちゃんが
最初にチャレンジした)綾ちゃんが学校で優等生だったのを知っていただけに
不合格の知らせに大いに不満を述べてくれて綾ちゃんには慰めになったけど
事実は事実。



ていうか綾ちゃん、実は大のあがり症で大の試験ベタ。
履歴書のキャリアだけ見るとものすごいエリートに見られるけれど
実は綾ちゃん、これまでの人生でありとあらゆる試験に落ちまくっている。
なんでこんなのってくらい楽勝のはずのものでもダメ。
メンタルも弱いんだろうけど、なんかもう運命だな、ここまで来ると。
それ以外の運は良いから(晴れ女とかね)バランスの法則かもしれない。



でもまあ、ここまでやって家族にも迷惑をかけてここで引き下がるわけにはいかない。
一発合格なんて試験ベタの綾ちゃん、ハナから考えちゃあいないさ、と
次のチャンスめがけてねじり鉢巻きしていた矢先、まさかの盲腸炎で救急車に乗った。
正確に言うと明け方突然の腹痛で救急病院に駆け込むとひどい医者で
遅刻してきて、ろくにヒトを見もしないで救急車を医者が呼んだんだ。




腸の癒着がひどく結構大変な手術だったそうだ。本人はようわからんが。


退院後、今度は持病の方が悪化。
その後さらに2度の手術を経験する。


全てが済んだ時にはもう一度これまでの勉強をおさらいする気力を
失ってしまっていた。




カールス門近くの聖ミヒャエルス教会
綾ちゃんお気に入りの教会です。