老齢の女性がめそめそしながら病院にやって来て、綾ちゃんの姿を目に
するなりうわー、と抱きついておいおい泣き始めた。
ど、どうしたの?魔法使いのおばあさん。
彼女はドイツ語ではない別の言葉で「魔法使い」を意味するスペルの
名字の方だ。(偶然この単語を知っていた。)見た目は普通のおばあさんだけど
綾ちゃんは心のニックネームで「魔法使いのおばあさん」と呼んでいる。
見た目は全然怖くない、普通に優しいおばあさんです。
彼女はわんわん泣いてしかも綾ちゃんを離してくれない。まあ、落ち着いて。
どうしたの?お茶でも飲んで落ち着きましょう。まずは座って。
『お、お金を盗られたの。なけなしのお金。きょ、今日、
鍼を打ってもらうために大事に大事に持ってきた、あの、お金。
息子が私の治療のためにくれた大切なものだったのにいー!!』
えー?それは一大事!おいおい泣いて中々話が進まない。綾ちゃんは
ずーっとおばあちゃんを抱きしめながら背中をさすっていた。
このおばあちゃん、いろんな病気を抱えてらして爆弾だらけのお身体だ。
とにかく落ち着かなくっちゃ。身体に毒だよ。
、、、もしかしたら警察とかに付き添ってあげなきゃならないかも。
息子さんに連絡してお迎えに来てもらったほうがいいかな?ちょっと遠く
だけれど。
息子さんはこちらで工学博士号を取得したばかりの若きエリートだから
頼りにしていい。でもおばあちゃんの方はドイツ語もたどたどしい
クロアチア移民で性格的にも極めて不安定で悲観傾向が強い方なんだ。
放っておけないよ。
ようやく少し落ち着いてきたのでお茶を淹れてあげる。ねえ、おばあちゃん、
話せますか?何が起こったのか?
『お金を、お金を、あいつらに盗られたの。あの、MVG(エム ファウ
ゲー)のやつらに。もう、最悪だわあ。』
そう言ってまた泣き崩れた。
・ ・ ・ ・
あ、あのー。それってまさか、、、アレ、じゃないでしょうね?
このロゴが何を意味するのか解れば
もうあなたは立派なミュンヘン人です。
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