2013年8月19日月曜日

ベルヒ先生〜再会〜




          彼はもうミュンヒェンにはいないのだと思っていた。






 合唱団のHPを見てもトレーナーの紹介ページに彼の名前は見当たらなかった。
書類整理をしていた時に彼のカルテを見る機会があり、やはり職場の問題で
ストレスを感じていたという記載を目にした。きっとあれから程なく辞表を
出して合唱団をお辞めになったんだ。今どこで何をしているのだろう、
彼がここで働いている私を見たらきっと驚くだろうに。





 私がここで勤め出してから1年と半年近く、ベルヒ先生がうちのドクターを
心から信頼していることは良く知っていたから(あれだけ病欠をとっていた)
彼が全然ここに来ないのはおかしい。






 そんな折、ひょっこりと現れた彼は私のよく識る彼ではなく、やつれ
疲れ果てた風貌の男性だった。ずいぶん年老いて見える。私を見ても気づかない。





   『ベルヒ先生、私です。私。吉岡です。あなたの生徒の母だった。
   私、先生にこちらを紹介していただいたご縁で去年からここで
   カリンさんの後任としてお勤めさせていただいているんです。』





 もう、喜んでくださったのなんのって、本当に心から驚きの声を上げてくださった。』








         ジャクリーヌ デュプレ (チェロ)
         M ブルッフ作 「コル ニドライ」
         今日、心から感動した一曲です。





       

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