2014年4月1日火曜日

男と男の物語 十一

      


           綾ちゃんの仕事は総務。社員の公的書類作りも重要なお仕事の一つでした。



    当時うちの会社は日本人が大半で社員の労働ヴィザなど必要書類を作成するのは
綾ちゃんのお仕事。必要な資料も綾ちゃんが保管・管理してました。プライバシー性の
高いものだけ上司が持っていたけれど。



 だから綾ちゃんは思いもかけず同僚のプライバシーを覗いてしまうことがある。
例えばTさんの労働許可証(私もTさんもドイツに来たばかりでこれらの許可証は順次
限定的にしかおりない。)の個人データ欄に「geschieden(離婚)」の文字を見つけたり。
しかも離婚したのはつい最近のことだった。ドイツに来てからじゃないの!?


   彼は社員データ上ではまだ「既婚者」のままとなっており(つまり、この欄を
訂正するのは綾ちゃんのお仕事だったのだが綾ちゃん自身も新入社員であったため
そこまで手が回っていなかったのだ)、そこには彼の「配偶者名」が記されていた。
んん??何て読むんだ?この名前!?




                 ガイジンの名前だ。おそらくイタリアとかスペイン人の。



          すると、Tさんのボーイフレンドの件は全て綾ちゃんの勘違い??だったのか?
            結婚相手なら女性に決まってるもんね。




       国際結婚が上手くいかなくて離婚した夫婦を綾ちゃんはこののちごまんと
目にすることになるのだが、Tさんもその中の一人だったのだろうか。
結婚というのは言葉も文化的背景が同じ人同士でさえ難しいのだから国籍の異なる者
同士、多くの困難が待ち受けているに違いない。




     綾ちゃんはTさんに対して同情の気持ちと(なんたって彼は綾ちゃんと同い年だ)
それからどうしても拭いきれない「疑惑」を相変わらず抱きながら日々を送っていた。


     どれ程の事実を目の前に突き付けられようが依然として綾ちゃんは疑っていた。
   それほどまでにあの日の、あの日曜日の出来事は衝撃的だったのだ。


ドイツのスーパーマーケットに売っている
ツナ缶はGEISHAさんだそうです。
マグロって日本のイメージなんだね。



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