2014年4月6日日曜日

男と男の物語 十六

        



           おそらく、そもそも彼がヨーロッパにやって来たのもそのためだろう、
   ということだ。


  
          そう、これも綾ちゃんがドイツに来てから学んだことの一つだ。
   海外には自国における「社会的弱者」が集まる。例えば綾ちゃんは
   こちらに来てからたくさんの日本に帰化した韓国人と知り合いになった。
   彼らの多くは日本では日本人の名前を名乗り、日本人として世間的に
   振る舞ってはいるが己のアイデンティティーに苦悩してきた人々だ。
   綾ちゃんの故郷は福岡なので韓国とは目と鼻の先でクラスメートの中にも
   そのような人がたくさんいたらしいと後から聞いたが、具体的に誰のことだとは
   今もって全然知らない。

    彼らは海外に出て初めて自由に息をつき本当の名を名乗り
   「あの頃は辛かったの。」と語っていた。


           なるほど。ホモセクシュアルもそうだったか。というよりもっと大変かも。
    結局日本を離れても日本人であり日本人の外見からは逃れ得ない。
    日本の企業で働くしかないし、そしたら海外の狭い日本人社会の目を
    気にしながら生きていかざるを得ない。



           Tさんは海外暮らしの中でも恋人の存在を徹底的に隠し(ばればれだったが)
    常に噂のネタにされるという日々を送っていた。ロンドン時代も全く一緒で
    当人一人が必死で否定しても周囲の好奇の目が尽きることはなかった。
         ロンドン時代の「恋人(男)」と別れて新しい「彼氏」が出来た時、Tさんに
    二つの転機が訪れた。すなわち転職と結婚である。




           我が家のお庭に二匹のリスが遊びに来ました。











        じゃれあってる様子がわかるかな?
     

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