2014年4月2日水曜日

男と男の物語 十二





         Tさんの仕事ぶりはというと、これがまた芳しくなかった。
   ロンドンから来たばかりとは言え同業者同士、世界は狭く社内でも顧客
   (取引会社)間でも彼の名は知られていた。が、一様に



                 「約束を守れない。」
                  「言うことがバラバラ。」
                  「何を言っているのかわからない。」



など散々なものだった。どうも又例によって(?)これらの評判を知らぬは上司ばかりなりの世界だったようだ。




     ある日の昼休みのこと。綾ちゃんは同業者の方とランチで偶然一緒になり
なんともなしに世間話をしていた。するとその方は最近、仕事でTさんとの間で
トラブルがあったとかでだんだんにTさんの愚痴話に話題が傾いていった。


 彼の方はかなり嫌な思いをしたらしくTさんを罵る語気が次第にエスカレートして
行く。全くニンゲンとしてどうかしてるんじゃないかって。だから言い寄る相手も
いないんだって。



 綾ちゃんとしてはTさんの仕事の実態は噂で聞いているだけだったし一応同僚だし、
人間性まで悪く言うのはちょっと、、、という思いから、つい(でも言葉に気をつけ
ながら)



         『ニンゲンとしてTさんがおかしいかはわからないですけどプライベートは
  それなのに充実しているようでしたよ。恋人のような方(なんて表現したらいいんだ!)
  もおられるみたいだし。』


とTさんを庇ってみた。、、、ら、


                          『男だろ?』
                  

                    は?




                  『ヤツの恋人って男だろ?みんな知ってるよ。有名な話だ。』




                                はああああ?????




      


ミュンヒェンは春真っ盛り



0 件のコメント:

コメントを投稿