2018年9月3日月曜日

歯医者とりぼんとぴいひゃらら



             あれはいつのことだったんだろう?

    その日綾ちゃんは歯医者にいた。受付を済ませて待合室に座って
   雑誌でも読もうかと備え付けの小さな本棚を見ると最新刊の「りぼん」、おお。


    綾ちゃんは「りぼん」の愛読者ではなく連載漫画は前後が分からないので
   読み切りのページから拾い読みしようとパラパラとページをめくってみた。


           と、そのとき、、、

    綾ちゃんのハートをわしづかみにした絵柄が目に入った。なんだあ、こりゃあ。



そのとき読んだお話は第4話だったようだ。


新しい、と思った。
「りぼん」の絵柄じゃないが、とも思った。


現在では普通になっているこういった絵柄も題材もエッセー風の語り口も
全て彼女の切り開いた世界観だと思う。
誰もが一度は体験した小さな思い出の数々とともに読むものを魅き入れる郷愁の思い、
けれど子供時代への懐古だけでない客観的なオトナツッコミで距離を測る。
全て体験したことのない衝撃の漫画だった。


こんなにすごい漫画家が出てきたのか、と夢中で読んだ。
繰り返し繰り返し読んで、バックナンバーの「りぼん」にも
手を出して第1話から何度も読みふけった。



ハッと我に帰ると待合室には誰もおらずびっくりして受付に行くと


『あらやだ、いたんですか?もう1時間以上前に何度もお名前読んだのに
気がつかなかったんですか?読書に夢中だったのね。』

と奥さんに(後から先生にも)笑われてしまった。


歯医者からの帰り道、まだ待合室で読んだ「ちびまる子ちゃん」が頭から離れず


『今、私と同じ衝撃を受けている漫画ファンが一体どのくらいいるんだろう?
近い将来、さくらももこと言う作家の時代が到来するに違いない。』


などとぐるぐるぐるぐる同じことを考え続けていたのを思い出す。
ウイキ先生によればこれは昭和61年、1986年のことだそうだ。
もちろんこの推測はすぐに現実のものとなった。


綾ちゃんと世代もほとんど変わらない方の、あまりにも早すぎる死。


今年はたくさんの方を見送るなあ。



ひらがなで「さくらももこ」という優しく美しいペンネームに
彼女の美意識の全てが集約されていたと思う。


まるちゃん、永遠なれ!


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