2020年4月18日土曜日

花の香りばたてまつる




     暖冬といふ夜の静寂(しじま)を深くして
          沈丁花(じんちょうげ)の香りと知るまでの闇
                     
                      第73回太宰府梅まつり短歌大会第1席
         村山安義


 91歳の綾ちゃんパパは今年のお正月
 たった一人で太宰府まで足を運んで
 歌を詠んできた。腕に覚えのある人
 だから自信もあったのだろう。
 堂々の一席を獲得して帰ってきた。          
              香り高い沈丁花の歌だった。


「芍薬(しゃくやく)の花の、今年も庭に
咲いたったい。それがまた今年もそりゃあ見事たい。」

         「この花の咲いたらもう、去年のあの日のことば
         思い出してねえ。あげん綺麗に咲いて。」



         
      美しい花の季節に逝くことができて、それはそれで幸せな人生と言える。

      綾ちゃんママの最期の日のことは、彼女を識る人たちの心の中で
      伝説になって思い継がれるだろう。
      綾ちゃんもきっと何度でも語るだろう、
      母は見事な芍薬の花見をした後でぽっくりと彼岸(あちら)へ
      旅立ってしまったのだと。



            あれから一年、ちょうど一年経った。
            今年は一周忌に顔すら見せられんでごめんなさい。


            おかあしゃま、花ば、花のかほりばたてまつる。




               この歌が大好きだった母へ


          

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