2015年8月31日月曜日

呼ばれている、という確信





     ハンナさん(仮名)は水彩画の先生だ。実はうちのドクターが
    今、通っている絵画教室の講師の先生だったりする。




     彼女とドクターが知り合った頃、彼女は健康そのものでいらした。
    が、半年ほど前に彼女の最愛のお母様が他界。悲嘆にくれる彼女を
    次に襲ったのが乳がんだった。すぐにリンパ節切除術を行い(乳房は
    保ったままでよかった)現在は放射線治療中の身の上。




     彼女のたっての希望で綾ちゃんは胸部リンパドレナージュ(リンパ
    マッサージ)を行う。
    綾ちゃんは自然療法専門学校時代にちょっとだけ集中コースを受けたことが
    あるくらいで普段は全然やらない。中医学だからね。患者さんも普段は
    こんな洋風の治療法を日本人の綾ちゃんからは期待してないし。



     突然のリクエスト。料金を伴う治療としての施術なので綾ちゃん、責任大。
    家で大急ぎで教材引っ張り出して復習した。今は動画もいっぱい
    あるからね。ネットはほんにありがたい。



     とりあえずリンパ節を失って行き場のないリンパ液を正しい場所に導く
    綾ちゃんのマッサージがとても気持ちいいとハンナさんは満足してくれた。
    手術後から胸が腫れて痛くて仕方なかったらしい。
    自宅ででできる簡単なパックの仕方などを教えるととても感激してくれて
    (実際これで腫れは綺麗におさまった。)それ以来綾ちゃんにものすごく
    心を開いてくれる。




     そして彼女は癌のきっかけが彼女の母親の死であったことにとてつもない
    衝撃を受け、自分が「呼ばれている」のだと言う確信を持ち始めた。




     その暗い発想に打ちひしがれそうになる自分と日々戦っている。




                           
          憐れみたまえ、わが神よ。(マタイ受難曲より)
        バッハの最高峰、マタイ受難曲の中でいちばん好きなアリアです。






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